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第一章 異世界に来ちゃった
side ディカイアス・マクシノルト
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朴が帰ってこない、とローゼンがディカイアスの元を訪れたのは、すっかり日の暮れた時刻であった。
ディカイアスは仕事が終わり部屋に引き上げようとしている直前で、周りにいた騎士達も顔を見合わせたり何事か言い合ったりとざわついている。
「帰ってこない……?」
「パーピュアの話では日が暮れるよりも前に帰った、と」
朴は訓練終わり必ず大浴場に寄って帰る。ちなみに彼が入る時刻を早め、その時間に誰も大浴場に来ないのは騎士達の
「頼むから神子様を何とかしてください!」
「あんな無防備に色々さらけ出されたら目のやり場に困ります!」
「真っ赤な顔して、目をとろんとさせて、ふぅ、とかはぁ、とか悩ましげな吐息を吐くんですよ!何なんですか?俺達に何の修行をさせようってんです!?」
「いつ間違いが起きてもおかしくありません!頼むから何とかしてください!」
という半泣きの要望があった為だ。
パーピュア曰く朴は、みんな早く上がっちゃうけど食事優先なのかな?と首を傾げていたらしいが、イオでもメムでもみんな満遍なく前屈み気味で逃げるように出ていった事に気付いていないようだ。その内本当に間違いが起こりそうだ、と早めに手を打って今の状態になったわけだが……逆に言えばこの時間、朴の警護は手薄になる。
大浴場まではパーピュアが付き添うが、大浴場が騎士団寮の中にある為そこからは朴は一人で部屋まで戻ってくる。
狙うならこの時間だ――――そう、神子に仇なす者は思うはず。
「影は問題なくついている。報告を待て」
言いながらもジリ、と胸を過る不安は決して表には出さない。この一月、朴という青年を見ていたが名前の通り素直でコロコロ表情が変わり、見ていて飽きない。本人は容姿に無頓着だけれど王宮の風呂で磨き上げられ全身整えられたあの姿は流石神子、と絶賛したい程美しかった。最も朴自身は
「恥ずか死ぬ……!!もう行かない!」
と涙目になっていて、もう行かないのか、と些か残念に感じたものだ。ただ本来ならば至上の存在である神子は王宮で受け入れるのが普通だろうが、当の朴が断固拒否してしまい未だ騎士団暮らしなのはどうなのだろう。しかもローゼンがほぼ独占しているような物だし、何だか餌付けをするかのように毎日手料理を振る舞っているようだし。一度それはハッキリさせておかねばなるまい。
朴は本人が
「職業は農民」
と言っていても神子なのだから、いつまでも今のままではいられない。しかし今は何よりもまず朴の無事を確認する事が先だ。ディカイアスはたった今出てきたばかりの仕事場へ引き返すのであった。
ディカイアスは仕事が終わり部屋に引き上げようとしている直前で、周りにいた騎士達も顔を見合わせたり何事か言い合ったりとざわついている。
「帰ってこない……?」
「パーピュアの話では日が暮れるよりも前に帰った、と」
朴は訓練終わり必ず大浴場に寄って帰る。ちなみに彼が入る時刻を早め、その時間に誰も大浴場に来ないのは騎士達の
「頼むから神子様を何とかしてください!」
「あんな無防備に色々さらけ出されたら目のやり場に困ります!」
「真っ赤な顔して、目をとろんとさせて、ふぅ、とかはぁ、とか悩ましげな吐息を吐くんですよ!何なんですか?俺達に何の修行をさせようってんです!?」
「いつ間違いが起きてもおかしくありません!頼むから何とかしてください!」
という半泣きの要望があった為だ。
パーピュア曰く朴は、みんな早く上がっちゃうけど食事優先なのかな?と首を傾げていたらしいが、イオでもメムでもみんな満遍なく前屈み気味で逃げるように出ていった事に気付いていないようだ。その内本当に間違いが起こりそうだ、と早めに手を打って今の状態になったわけだが……逆に言えばこの時間、朴の警護は手薄になる。
大浴場まではパーピュアが付き添うが、大浴場が騎士団寮の中にある為そこからは朴は一人で部屋まで戻ってくる。
狙うならこの時間だ――――そう、神子に仇なす者は思うはず。
「影は問題なくついている。報告を待て」
言いながらもジリ、と胸を過る不安は決して表には出さない。この一月、朴という青年を見ていたが名前の通り素直でコロコロ表情が変わり、見ていて飽きない。本人は容姿に無頓着だけれど王宮の風呂で磨き上げられ全身整えられたあの姿は流石神子、と絶賛したい程美しかった。最も朴自身は
「恥ずか死ぬ……!!もう行かない!」
と涙目になっていて、もう行かないのか、と些か残念に感じたものだ。ただ本来ならば至上の存在である神子は王宮で受け入れるのが普通だろうが、当の朴が断固拒否してしまい未だ騎士団暮らしなのはどうなのだろう。しかもローゼンがほぼ独占しているような物だし、何だか餌付けをするかのように毎日手料理を振る舞っているようだし。一度それはハッキリさせておかねばなるまい。
朴は本人が
「職業は農民」
と言っていても神子なのだから、いつまでも今のままではいられない。しかし今は何よりもまず朴の無事を確認する事が先だ。ディカイアスはたった今出てきたばかりの仕事場へ引き返すのであった。
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