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第二章
救出 微R18
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浅葱がそれを夢に見たのは、既に数えきれぬ程空良に抱かれてからであった。
何もかも諦めきってただ空良の言うままに言葉を発して。けれど心の中にはいつだってあの自由奔放な男がいた。
だからだろうか。その日、夢の中に彼は現れた。
『アサギ』
ふわり、と頭を撫でられる柔らかな感触。
「けー……?」
霧がかかったような視界の悪いその中でケイのくすんだ金髪が見える。
あぁ、ケイだ、と浅葱は微笑んで抱き付こうとしたのだけれど。
(体が動かない……)
どうして。そこにいるのに。ケイがいるのに。
「けー……!」
伸ばそうとした手すらピクリとも動かなくてボロボロと涙が溢れてくる。
『アサギ』
「やだ!けー!連れていって!俺も連れていってよ!」
霧に包まれるように姿が霞んでいくケイに必死で動こうとするけれど少しも動かない体。
どうして。もうここは嫌だ。ケイのところに帰りたい。それが例え死後の世界だったとしてもケイの側ならそれでいいのに。
『諦めるのか?』
最後に苦笑した気配と共に声が響いた。
『ここで、諦めて終わりか?』
(諦めて……)
諦めるのか。シロウサギが持っていたあの懐中電灯の真相も確かめないまま。ケイの死を確認しないまま。
(諦めるのか?)
そんなのは嫌だ……!
そう叫んだところで浅葱はハッと目を覚ます。ここ最近馴染みになった無機質な鉄格子。一ヶ所だけ先の見えない、その向こう。アリスの領域では力は使えない。けれど何としてもここから逃げ出そう、と杭を打ち込まれたままの足を庇い這いながら考える。
(諦めたらダメだ……。だってけーは死んでないから!)
そうだ。あの男が死ぬわけがないのだ。それがただの願望だったのだとしても。しかし明確な証拠を空良は出してこなかった。今の空良ならばケイの死体を見せるくらいするはず。けれどそれはしなかった。
何故?ケイが死んでないからなのでは?その希望にすがって、浅葱は残った気力を奮い起こす。今日はお役目の日、と言っていたから今なら空良はいない。帽子屋も今日は来ない。
連れてこられたばかりの頃何度も何度も出口がないかを確かめた。柵の一本一本を押したり引いたりして動かないかを確認した。その時は一本たりとも微動だにしなかったのだ。出入り口も存在しなかった。だが最近、浅葱の足に杭を打って安心したのか鉄格子に出入り口が出来た。そして今日、その入り口を何とか抉じ開ける事に成功したのである。
(開いた……っ!)
恐る恐る外へ這い出てみるが何かが起きる気配はない。後ろを振り返り、空良も帽子屋もいないことを確認するとそのまま床を這う。早く、早く、と気持ちばかり焦って何度もバランスを崩したけれどそれでも前へと進む。
(けーは生きてる、から……!俺が、)
ここで諦める訳にはいかない、と。せめてケイの生死を確認するまでは諦める訳にはいかない。
長く暗い廊下を這って、もしかして出口などないのではと若干不安になった頃ようやく見えた外の光。僅かな隙間から射し込む陽光は暖かく力を振り絞る。
(帰るんだ……。けーのとこに、帰るんだ!)
海鳥が声高に鳴いた。辺りは一面緑の絨毯で、所々に咲いたピンク色の小さな花が風に揺れている。空は青く高く、雲はない。
綺麗なところ、と素直に思った。けれど、寂しい所だ。そこには浅葱のいた高い塔の形をした建物1つしかなく、他に人の気配は感じられない。浅葱を閉じ込める為に作っていた“鳥籠”なのだから当然と言えば当然か。
ずり、と腕の力で前へと進む。石造りの廊下ならばまだしも草花の生い茂る土の上だ。なかなか思うように滑らず悪戦苦闘しながら海の見える方へと向かう。
海にはケイがいる気がした。だから海を目指した。
(会いたい……、会いたい……、けー)
「浅葱」
ひやりと冷たい声が背後から――した。幻聴ではない、肉声。さく、と地面を踏みしめて歩み寄ってくる音。
「あ、ぁ……っ」
体をねじ曲げて見た背後に逆光で顔の見えない長身の影。
「ひ……っ」
懸命に腕を動かし距離を取る。無駄だとわかっているけれど、それでも懸命に進む。止まったら終わりだと思った。止まったら、捕まったら、――終わりだ。
もう二度と外へは出してもらえない。どころかこの腕も動かないように杭で打ち付けられるのかも知れない。だから懸命に進むけれど。
「……やっぱり逃げるんだね」
さくさくと軽快に地面を踏みしめて近寄ってくる気配。
「浅葱がどうするのかと思ってわざと隙を作ったら……」
最初から仕組まれていたのだ。隙を作って浅葱がどう動くのかを観察していた。初めから、全部。
「どうして逃げるの?どうして俺の言うこと聞けないの?やっといい子になったと思ったのにどうして?」
「ぐ……っ」
ドン、と背中に踵が落ちてきた。2度、3度…、4度目は体の横で強く踏み鳴らされる。
「あぁ、もう……イライラするなぁ……。ねぇ、何がダメなの?こんなに尽くしてあげてるのに何が不満なの?答えてよ、浅葱」
爪先が体の下に入りぐ、と反転させられて見えた明るい陽光の下、空良の瞳だけが昏く冷たい。空良は瞳と同じ冷たい空気を纏ったまましゃがみこみ震える浅葱の顎を掴んだ。
「答えて浅葱」
「ひ、や……っ、やだ……、や……っ!!」
抵抗しようとした手はいとも簡単に捩じ伏せられて地面に縫い付けられる。骨が軋む程の強い力だ。空良の体が腿の上に乗り上げてきて間近に顔を覗き込んだ昏い昏い瞳の奥に、怒りの色を見つけて怯んでしまう。空良によってもたらされた痛みと恐怖は心にしっかりと刻み込まれてしまった。だからその瞳に捕らわれて、浅葱の中に微かに芽生えていた希望はたちまち掻き消された。
「ゃ、だ……っやだぁ……っ」
「やだ、じゃないでしょ。どうして逃げるか聞いてるの。答えて」
それでも答えない、否答えられないのだが空良には同じこと。苛立ちが膨らんで怒りが体を侵食する。
パン、と浅葱の頬を打つ乾いた音にうっすら微笑んだ。叩いた拍子に口の中を切ったのか一筋の血が流れて落ちる。浅葱はただ恐怖に震え青ざめたままで空良を見上げるだけ。許しを乞うことはしない。何も言わずに見上げるばかりだ。
どこまでも真っ直ぐで、穢れのない瞳。純粋で真っ白な幼馴染み。瞬時に駆け抜けたどす黒い感情に突き動かされるように着物の合わせ目に手をかけ左右に引いて肌を露にさせた。
この異世界へ来て何年もの間閉じ込められていたからか白い肌。この白を真っ黒に穢してやりたい。めちゃくちゃにして、壊してやりたい。
「躾が足りなかったみたいだね」
「ぃ、った……っ」
足に打ち込んだ杭の外側を飾る石と同じものをはめ込んだ乳首のピアスから伸びる鎖を、千切れない程度に思いきり引っ張る。
杭を打ち込んだだけでは足りないのか。それでは浅葱の心を折れないのか。薬を使って何度抱いても心までは落ちないのか。侵食するどす黒いそれが体を突き動かす。捻り上げていた手首を離し鎖を引いていた手を離す。両手が向かうのは、恐怖に唾を飲み込んで上下したその細首。絞める事はせず、そのままゆるゆると撫でながら抵抗を忘れた浅葱にのし掛かる。
「次はどうしようか。この足、もう切っちゃおうか?それともこの腕かな?他の人を映す目もいらないよね?ああ、それかホントの女の子になっちゃう?」
ここ、切っちゃってさ。とくすくす笑いながら局部を撫でさする空良に、浅葱が弱々しく首を振っているけれどどうやらその発言を自分で気に入ってしまったようだ。何度も撫で、柔く握って刺激したかと思えばそのまま這い上がった手の平が浅葱の下腹に触れる。
「そうだ。それよりここに赤ちゃん出来るようにしてあげようかな。そしたらもう俺から逃げようなんて気にならないよね?」
そんなこと出来るわけがない、と言いかけた浅葱の唇を抉じ開けて指が2本入り込んで好き勝手嬲る。喉奥をついたかと思えば優しく上顎を撫で、舌を挟んで無理矢理口淫させられた時のように激しく擦って飲み込めない唾液が溢れるのを啜った。
「出来るわけがない、って思ってる?……今の俺は何でも出来るんだよ」
「ひ、ぁ……っ!!」
慣らしもしない後孔へ空良の猛りきった剛直が捩じ込まれた。滑りの良くないそこへ無理矢理侵入し擦り上げる。片手は変わらず浅葱の下腹を優しく撫で、時折強く指で押して、くすくすと笑う。
「あー……でも子供いたら浅葱、ますます俺に構ってくれなくなるかな?あは、そうなったら俺、子供殺しちゃいそう」
「あ、い、……っ、いた……っ、痛い、いたい……!!」
グチュグチュと聞こえ始めた音は中から溢れた血と空良の先走りが混じって泡立っている音。怒りからなのか、それとも自分の言葉に興奮しているのか、いつもよりもその剛直が硬く太い。
いたい、いたい、と浅葱が泣くのでさえ嬉しげに微笑んで尚も強く腰を打ち付けてくる。
海鳥がまた声高に鳴いた。外は暖かな風が吹いて、空はどこまでも青く高く澄んでいるのに。
もう逃げられないのか。もう二度と外へは出られないのか。ケイには、もう会えないのか。
(――けー、会いたかった、な……)
空良が息をつめる声と共に体内に熱い飛沫が注がれた。
サァ、と風が吹いてふと我に返る。浅葱を抱き起こし、抱き締める暖かな腕がある。体内に納められていた筈の空良の熱がなくて注がれた体液がどろりと溢れて落ちた。離れた場所に腕を押さえて憎々しげに睨み付ける空良がいる。
「けー……?」
逆光の影が微笑んだ雰囲気を察した所で、ふ、とまた意識は途切れた。
腕の中の重みが増して浅葱が意識を失った事を知りその体を横抱きに抱き上げた。
(船長じゃなくて、ごめんな……)
カルは疲労の色濃い浅葱の頬に自分の頬を押しあて心の中で謝る。それから服装を整えた空良と対峙しているアーセルム達へと目を向けた。何故彼らがここにいるのか。それは数ヵ月前のあの日に遡る。
◇◇
空は青く、海は穏やかで航海にはうってつけの天気。けれどケイとリツ、要の二人を欠いた漆黒の聖女は現在近場の港に停泊中だ。二人の代わりになれる人材はいないけれど、それでも普段から二人の近くにいた操舵手ジルタや航海士レンドルーは他の乗組員から言葉にはならずとも期待をかけられていた。
自分達で話し合いこれからを決めることは出来るが、まとめる人間は必要だ。しかしレンドルーは自分は人の上に立てる人材ではない、と辞退。代わりにジルタを補佐できる人材としてアーセルムを推した。
普段飄々としている彼が本当は頭の切れる男である事は皆が承知している。そしてジルタもまたこの船の中では若いが大局を見誤る事はない。基本戦うことしか頭にない根っからの兵士である年長者達を納得させまとめられるのはこの二人である、というのは仲間全ての意見だ。
結果、押し切られる形で彼らはケイ達の代理となった。
「絶対みんなめんどいだけだろぉ」
考えるより動くのが得意なのはアーセルムとて同じである。
「だよねだよねー、年長者と上司って大概理不尽じゃなーい?ぷんぷん、だよ!僕もこんなとこ人質に出されちゃってさ~。大佐も酷いよね、ヒトデナシだよ~。僕ってば囚われのお姫様~。籠の小鳥ちゃん~。王子様はまだかなぁ、しくしく」
「…………なぁジルタ、こいつうるせぇからどっか捨ててきていい?」
「……気持ちはわかるけどやめえ」
リツの対の人質として送られた珠稀ではあるが、この煩さに嫌気が差した奏斗の厄介払いではないかと疑ってしまうのも無理からぬ騒がしさ。既に船長代理二人は疲労困憊気味だ。ここへ来てからというものずっとこの調子で喋り続けられ、最早遠くで声を聞くだけでもげっそりしてしまいそうになる。他の乗組員も早々と“船長代理”に相手を任せ各自持ち場に戻ってしまった。珠稀の所為で若輩と自覚のある二人が年長者達に船長代理を押し付けられたのではないか、と邪推すらしてしまう。相手がやたら高圧的な態度ではなかっただけマシだと思うべきか。
「何だい何だい、最近の若者は!年寄り粗末にするとバチ当たるんだからな~!」
「どう見てもあんたの方が年下なんですけどー」
「僕今年で38なんだけどー」
両手を振り回して抗議してくる男へアーセルムが言った言葉に、アーセルムの口調を真似て間延びした衝撃的な一言が返る。
「「38!!?」」
普段冷静なジルタと飄々とした態度を崩さないアーセルムの驚愕の声はピタリと揃った。一度顔を見合わせ、それからまじまじと相手を観察する。何度見ても10代、良くて20代だ。浅葱も童顔だったけれどこの男はその上をいく驚異的な童顔。いや、童顔以前に言動も40前にしては幼すぎる。
「いやいやいや……嘘でしょー。ありえないからー」
「珠稀、嘘つかない。ホイ、証拠」
手渡されたのはワンダーでも同じように軍人の証として渡される身分証明カード。そこには確かに現在37、直に38になる年である事を示す数字が書かれている。
「うーわー。信じらんねー」
「でもホントでしょー?兄貴と呼んでくれたまえチミ達」
えへん、と胸を張る珠稀を珍獣を眺める面持ちで見つめること数秒。こんなことをしている場合ではないと気を取り直す。ケイもリツもいない今自分達がしっかりしなくては、というのは乗組員全員一致の思いのはず。年長者達の期待に応えなくてはならない。というよりこの男の生態の謎に迫るのが怖くなってやめた、とも言う。
脱線しかけた話を咳払いの1つで元に戻した。
「本体と別動隊に別れよう」
「別動隊は小数、アサギの捜索と救出。本体は船長を捜しに行くって事だろー?」
提案したのはジルタだが、アーセルムも同じ提案をしかかっていたのだから否定する理由はなく頷く。しかし問題はそこから先であった。
年が近く軍歴も同じ。素早い動きで相手を撹乱する剣士のジルタと火属性の中では上位に位置するサラマンダーを従えた魔術師アーセルム。戦い方や性格面に違いはあるものの基本的に二人とも頭の回転は早く気は合う方だ。気が合うからこそ時にはぶつかり合う事も勿論ある。
「ああ。別動隊の指揮はお前に任せる。何人か連れてき。それとタマキも」
「え、イラネー。人質なんだから本体といるべきだってー」
「アサギを連れ戻すのが目的言うてたやん。別動隊に入れえ」
「いらねーしー。俺らだけで充分だしー」
「反論却下。はよ行き、邪魔や」
「うっそ、信じらんねー!船長代理横暴!おーぼー!もういーし!カル連れてっちゃうからー!」
「は?何でカルやねん。置いてけや」
「アサギと仲良いだろー。反論却下ー。レプリカンも借りてくからー」
斯くしてアーセルム率いる別動隊の面々は渋々珠稀を引き連れ地上へと降り立ったのである。
◇◇
「あぁ、もう……ホントに鬱陶しいなぁ……」
サラマンダーのラネルが放った炎によって焼け爛れた腕を押さえて、瞳と同じく憎々しげな口調で空良がぼそりと呟いた。浅葱は年若い男の腕の中で意識を失っているようで、男が動くたび手足が力なく揺れる。やっと手に入れたのに奪われるなんてごめんだ。
「カル!行け!!」
アーセルムが叫び、カルが走り出す。
ここから浅葱を抱いて逃げるのはカルの役目だと最初から決まっていた。一番足が早いというのも理由にあったけれど、この世界の頂点とも呼べるアリス相手にカルでは些か力不足だ。それはもちろんアーセルムを含めた他の面々にも言える。だからせめて一番最年少の彼が犠牲になることのないように、逃がす。浅葱が腕にいる以上虚無は使えない筈だ。瞬殺の危険さえなければ勝算はある。
そして逃げ切るまで空良を足止めする彼らも僅かながら虚無に対抗する術を用意した。
「あー!!もう!!ホントうっざい!!邪魔!!邪魔、邪魔、邪魔っ!!!!消えろ!!!」
「フランシス!」
空良の前にふわりと降り立ったのは灰色のワンピースを纏い、同じく灰色の髪を靡かせた女。その目は燃えるように赤い。アーセルムと同じ砲撃手、レプリカンを主とするアンデット属バンシーのフランシスが発した泣き声は、今にも言霊を発しようとしていた空良の声を掻き消し吹き荒れた強烈な風に立つことさえままならなくさせている。
「今だ!走れ!!」
いくらフランシスがレプリカンと契約しているとは言え全ての精霊を扱えるのが世界の柱。アリスとドロシーは例え契約をしなくとも――もちろん肉体へのダメージという代償はあるが――精霊達を従えることが出来る。だから本当にその抵抗は僅かばかりのものだ。空良がフランシスを捩じ伏せるのが早いか自分達がここを離脱するのが早いか、それは最早賭けである。振り返る愚行は犯さない。振り返る暇があるならばとにかく先へ進めと先頭を走るカルへ何度か叱責を飛ばしひた駆けた。
何もかも諦めきってただ空良の言うままに言葉を発して。けれど心の中にはいつだってあの自由奔放な男がいた。
だからだろうか。その日、夢の中に彼は現れた。
『アサギ』
ふわり、と頭を撫でられる柔らかな感触。
「けー……?」
霧がかかったような視界の悪いその中でケイのくすんだ金髪が見える。
あぁ、ケイだ、と浅葱は微笑んで抱き付こうとしたのだけれど。
(体が動かない……)
どうして。そこにいるのに。ケイがいるのに。
「けー……!」
伸ばそうとした手すらピクリとも動かなくてボロボロと涙が溢れてくる。
『アサギ』
「やだ!けー!連れていって!俺も連れていってよ!」
霧に包まれるように姿が霞んでいくケイに必死で動こうとするけれど少しも動かない体。
どうして。もうここは嫌だ。ケイのところに帰りたい。それが例え死後の世界だったとしてもケイの側ならそれでいいのに。
『諦めるのか?』
最後に苦笑した気配と共に声が響いた。
『ここで、諦めて終わりか?』
(諦めて……)
諦めるのか。シロウサギが持っていたあの懐中電灯の真相も確かめないまま。ケイの死を確認しないまま。
(諦めるのか?)
そんなのは嫌だ……!
そう叫んだところで浅葱はハッと目を覚ます。ここ最近馴染みになった無機質な鉄格子。一ヶ所だけ先の見えない、その向こう。アリスの領域では力は使えない。けれど何としてもここから逃げ出そう、と杭を打ち込まれたままの足を庇い這いながら考える。
(諦めたらダメだ……。だってけーは死んでないから!)
そうだ。あの男が死ぬわけがないのだ。それがただの願望だったのだとしても。しかし明確な証拠を空良は出してこなかった。今の空良ならばケイの死体を見せるくらいするはず。けれどそれはしなかった。
何故?ケイが死んでないからなのでは?その希望にすがって、浅葱は残った気力を奮い起こす。今日はお役目の日、と言っていたから今なら空良はいない。帽子屋も今日は来ない。
連れてこられたばかりの頃何度も何度も出口がないかを確かめた。柵の一本一本を押したり引いたりして動かないかを確認した。その時は一本たりとも微動だにしなかったのだ。出入り口も存在しなかった。だが最近、浅葱の足に杭を打って安心したのか鉄格子に出入り口が出来た。そして今日、その入り口を何とか抉じ開ける事に成功したのである。
(開いた……っ!)
恐る恐る外へ這い出てみるが何かが起きる気配はない。後ろを振り返り、空良も帽子屋もいないことを確認するとそのまま床を這う。早く、早く、と気持ちばかり焦って何度もバランスを崩したけれどそれでも前へと進む。
(けーは生きてる、から……!俺が、)
ここで諦める訳にはいかない、と。せめてケイの生死を確認するまでは諦める訳にはいかない。
長く暗い廊下を這って、もしかして出口などないのではと若干不安になった頃ようやく見えた外の光。僅かな隙間から射し込む陽光は暖かく力を振り絞る。
(帰るんだ……。けーのとこに、帰るんだ!)
海鳥が声高に鳴いた。辺りは一面緑の絨毯で、所々に咲いたピンク色の小さな花が風に揺れている。空は青く高く、雲はない。
綺麗なところ、と素直に思った。けれど、寂しい所だ。そこには浅葱のいた高い塔の形をした建物1つしかなく、他に人の気配は感じられない。浅葱を閉じ込める為に作っていた“鳥籠”なのだから当然と言えば当然か。
ずり、と腕の力で前へと進む。石造りの廊下ならばまだしも草花の生い茂る土の上だ。なかなか思うように滑らず悪戦苦闘しながら海の見える方へと向かう。
海にはケイがいる気がした。だから海を目指した。
(会いたい……、会いたい……、けー)
「浅葱」
ひやりと冷たい声が背後から――した。幻聴ではない、肉声。さく、と地面を踏みしめて歩み寄ってくる音。
「あ、ぁ……っ」
体をねじ曲げて見た背後に逆光で顔の見えない長身の影。
「ひ……っ」
懸命に腕を動かし距離を取る。無駄だとわかっているけれど、それでも懸命に進む。止まったら終わりだと思った。止まったら、捕まったら、――終わりだ。
もう二度と外へは出してもらえない。どころかこの腕も動かないように杭で打ち付けられるのかも知れない。だから懸命に進むけれど。
「……やっぱり逃げるんだね」
さくさくと軽快に地面を踏みしめて近寄ってくる気配。
「浅葱がどうするのかと思ってわざと隙を作ったら……」
最初から仕組まれていたのだ。隙を作って浅葱がどう動くのかを観察していた。初めから、全部。
「どうして逃げるの?どうして俺の言うこと聞けないの?やっといい子になったと思ったのにどうして?」
「ぐ……っ」
ドン、と背中に踵が落ちてきた。2度、3度…、4度目は体の横で強く踏み鳴らされる。
「あぁ、もう……イライラするなぁ……。ねぇ、何がダメなの?こんなに尽くしてあげてるのに何が不満なの?答えてよ、浅葱」
爪先が体の下に入りぐ、と反転させられて見えた明るい陽光の下、空良の瞳だけが昏く冷たい。空良は瞳と同じ冷たい空気を纏ったまましゃがみこみ震える浅葱の顎を掴んだ。
「答えて浅葱」
「ひ、や……っ、やだ……、や……っ!!」
抵抗しようとした手はいとも簡単に捩じ伏せられて地面に縫い付けられる。骨が軋む程の強い力だ。空良の体が腿の上に乗り上げてきて間近に顔を覗き込んだ昏い昏い瞳の奥に、怒りの色を見つけて怯んでしまう。空良によってもたらされた痛みと恐怖は心にしっかりと刻み込まれてしまった。だからその瞳に捕らわれて、浅葱の中に微かに芽生えていた希望はたちまち掻き消された。
「ゃ、だ……っやだぁ……っ」
「やだ、じゃないでしょ。どうして逃げるか聞いてるの。答えて」
それでも答えない、否答えられないのだが空良には同じこと。苛立ちが膨らんで怒りが体を侵食する。
パン、と浅葱の頬を打つ乾いた音にうっすら微笑んだ。叩いた拍子に口の中を切ったのか一筋の血が流れて落ちる。浅葱はただ恐怖に震え青ざめたままで空良を見上げるだけ。許しを乞うことはしない。何も言わずに見上げるばかりだ。
どこまでも真っ直ぐで、穢れのない瞳。純粋で真っ白な幼馴染み。瞬時に駆け抜けたどす黒い感情に突き動かされるように着物の合わせ目に手をかけ左右に引いて肌を露にさせた。
この異世界へ来て何年もの間閉じ込められていたからか白い肌。この白を真っ黒に穢してやりたい。めちゃくちゃにして、壊してやりたい。
「躾が足りなかったみたいだね」
「ぃ、った……っ」
足に打ち込んだ杭の外側を飾る石と同じものをはめ込んだ乳首のピアスから伸びる鎖を、千切れない程度に思いきり引っ張る。
杭を打ち込んだだけでは足りないのか。それでは浅葱の心を折れないのか。薬を使って何度抱いても心までは落ちないのか。侵食するどす黒いそれが体を突き動かす。捻り上げていた手首を離し鎖を引いていた手を離す。両手が向かうのは、恐怖に唾を飲み込んで上下したその細首。絞める事はせず、そのままゆるゆると撫でながら抵抗を忘れた浅葱にのし掛かる。
「次はどうしようか。この足、もう切っちゃおうか?それともこの腕かな?他の人を映す目もいらないよね?ああ、それかホントの女の子になっちゃう?」
ここ、切っちゃってさ。とくすくす笑いながら局部を撫でさする空良に、浅葱が弱々しく首を振っているけれどどうやらその発言を自分で気に入ってしまったようだ。何度も撫で、柔く握って刺激したかと思えばそのまま這い上がった手の平が浅葱の下腹に触れる。
「そうだ。それよりここに赤ちゃん出来るようにしてあげようかな。そしたらもう俺から逃げようなんて気にならないよね?」
そんなこと出来るわけがない、と言いかけた浅葱の唇を抉じ開けて指が2本入り込んで好き勝手嬲る。喉奥をついたかと思えば優しく上顎を撫で、舌を挟んで無理矢理口淫させられた時のように激しく擦って飲み込めない唾液が溢れるのを啜った。
「出来るわけがない、って思ってる?……今の俺は何でも出来るんだよ」
「ひ、ぁ……っ!!」
慣らしもしない後孔へ空良の猛りきった剛直が捩じ込まれた。滑りの良くないそこへ無理矢理侵入し擦り上げる。片手は変わらず浅葱の下腹を優しく撫で、時折強く指で押して、くすくすと笑う。
「あー……でも子供いたら浅葱、ますます俺に構ってくれなくなるかな?あは、そうなったら俺、子供殺しちゃいそう」
「あ、い、……っ、いた……っ、痛い、いたい……!!」
グチュグチュと聞こえ始めた音は中から溢れた血と空良の先走りが混じって泡立っている音。怒りからなのか、それとも自分の言葉に興奮しているのか、いつもよりもその剛直が硬く太い。
いたい、いたい、と浅葱が泣くのでさえ嬉しげに微笑んで尚も強く腰を打ち付けてくる。
海鳥がまた声高に鳴いた。外は暖かな風が吹いて、空はどこまでも青く高く澄んでいるのに。
もう逃げられないのか。もう二度と外へは出られないのか。ケイには、もう会えないのか。
(――けー、会いたかった、な……)
空良が息をつめる声と共に体内に熱い飛沫が注がれた。
サァ、と風が吹いてふと我に返る。浅葱を抱き起こし、抱き締める暖かな腕がある。体内に納められていた筈の空良の熱がなくて注がれた体液がどろりと溢れて落ちた。離れた場所に腕を押さえて憎々しげに睨み付ける空良がいる。
「けー……?」
逆光の影が微笑んだ雰囲気を察した所で、ふ、とまた意識は途切れた。
腕の中の重みが増して浅葱が意識を失った事を知りその体を横抱きに抱き上げた。
(船長じゃなくて、ごめんな……)
カルは疲労の色濃い浅葱の頬に自分の頬を押しあて心の中で謝る。それから服装を整えた空良と対峙しているアーセルム達へと目を向けた。何故彼らがここにいるのか。それは数ヵ月前のあの日に遡る。
◇◇
空は青く、海は穏やかで航海にはうってつけの天気。けれどケイとリツ、要の二人を欠いた漆黒の聖女は現在近場の港に停泊中だ。二人の代わりになれる人材はいないけれど、それでも普段から二人の近くにいた操舵手ジルタや航海士レンドルーは他の乗組員から言葉にはならずとも期待をかけられていた。
自分達で話し合いこれからを決めることは出来るが、まとめる人間は必要だ。しかしレンドルーは自分は人の上に立てる人材ではない、と辞退。代わりにジルタを補佐できる人材としてアーセルムを推した。
普段飄々としている彼が本当は頭の切れる男である事は皆が承知している。そしてジルタもまたこの船の中では若いが大局を見誤る事はない。基本戦うことしか頭にない根っからの兵士である年長者達を納得させまとめられるのはこの二人である、というのは仲間全ての意見だ。
結果、押し切られる形で彼らはケイ達の代理となった。
「絶対みんなめんどいだけだろぉ」
考えるより動くのが得意なのはアーセルムとて同じである。
「だよねだよねー、年長者と上司って大概理不尽じゃなーい?ぷんぷん、だよ!僕もこんなとこ人質に出されちゃってさ~。大佐も酷いよね、ヒトデナシだよ~。僕ってば囚われのお姫様~。籠の小鳥ちゃん~。王子様はまだかなぁ、しくしく」
「…………なぁジルタ、こいつうるせぇからどっか捨ててきていい?」
「……気持ちはわかるけどやめえ」
リツの対の人質として送られた珠稀ではあるが、この煩さに嫌気が差した奏斗の厄介払いではないかと疑ってしまうのも無理からぬ騒がしさ。既に船長代理二人は疲労困憊気味だ。ここへ来てからというものずっとこの調子で喋り続けられ、最早遠くで声を聞くだけでもげっそりしてしまいそうになる。他の乗組員も早々と“船長代理”に相手を任せ各自持ち場に戻ってしまった。珠稀の所為で若輩と自覚のある二人が年長者達に船長代理を押し付けられたのではないか、と邪推すらしてしまう。相手がやたら高圧的な態度ではなかっただけマシだと思うべきか。
「何だい何だい、最近の若者は!年寄り粗末にするとバチ当たるんだからな~!」
「どう見てもあんたの方が年下なんですけどー」
「僕今年で38なんだけどー」
両手を振り回して抗議してくる男へアーセルムが言った言葉に、アーセルムの口調を真似て間延びした衝撃的な一言が返る。
「「38!!?」」
普段冷静なジルタと飄々とした態度を崩さないアーセルムの驚愕の声はピタリと揃った。一度顔を見合わせ、それからまじまじと相手を観察する。何度見ても10代、良くて20代だ。浅葱も童顔だったけれどこの男はその上をいく驚異的な童顔。いや、童顔以前に言動も40前にしては幼すぎる。
「いやいやいや……嘘でしょー。ありえないからー」
「珠稀、嘘つかない。ホイ、証拠」
手渡されたのはワンダーでも同じように軍人の証として渡される身分証明カード。そこには確かに現在37、直に38になる年である事を示す数字が書かれている。
「うーわー。信じらんねー」
「でもホントでしょー?兄貴と呼んでくれたまえチミ達」
えへん、と胸を張る珠稀を珍獣を眺める面持ちで見つめること数秒。こんなことをしている場合ではないと気を取り直す。ケイもリツもいない今自分達がしっかりしなくては、というのは乗組員全員一致の思いのはず。年長者達の期待に応えなくてはならない。というよりこの男の生態の謎に迫るのが怖くなってやめた、とも言う。
脱線しかけた話を咳払いの1つで元に戻した。
「本体と別動隊に別れよう」
「別動隊は小数、アサギの捜索と救出。本体は船長を捜しに行くって事だろー?」
提案したのはジルタだが、アーセルムも同じ提案をしかかっていたのだから否定する理由はなく頷く。しかし問題はそこから先であった。
年が近く軍歴も同じ。素早い動きで相手を撹乱する剣士のジルタと火属性の中では上位に位置するサラマンダーを従えた魔術師アーセルム。戦い方や性格面に違いはあるものの基本的に二人とも頭の回転は早く気は合う方だ。気が合うからこそ時にはぶつかり合う事も勿論ある。
「ああ。別動隊の指揮はお前に任せる。何人か連れてき。それとタマキも」
「え、イラネー。人質なんだから本体といるべきだってー」
「アサギを連れ戻すのが目的言うてたやん。別動隊に入れえ」
「いらねーしー。俺らだけで充分だしー」
「反論却下。はよ行き、邪魔や」
「うっそ、信じらんねー!船長代理横暴!おーぼー!もういーし!カル連れてっちゃうからー!」
「は?何でカルやねん。置いてけや」
「アサギと仲良いだろー。反論却下ー。レプリカンも借りてくからー」
斯くしてアーセルム率いる別動隊の面々は渋々珠稀を引き連れ地上へと降り立ったのである。
◇◇
「あぁ、もう……ホントに鬱陶しいなぁ……」
サラマンダーのラネルが放った炎によって焼け爛れた腕を押さえて、瞳と同じく憎々しげな口調で空良がぼそりと呟いた。浅葱は年若い男の腕の中で意識を失っているようで、男が動くたび手足が力なく揺れる。やっと手に入れたのに奪われるなんてごめんだ。
「カル!行け!!」
アーセルムが叫び、カルが走り出す。
ここから浅葱を抱いて逃げるのはカルの役目だと最初から決まっていた。一番足が早いというのも理由にあったけれど、この世界の頂点とも呼べるアリス相手にカルでは些か力不足だ。それはもちろんアーセルムを含めた他の面々にも言える。だからせめて一番最年少の彼が犠牲になることのないように、逃がす。浅葱が腕にいる以上虚無は使えない筈だ。瞬殺の危険さえなければ勝算はある。
そして逃げ切るまで空良を足止めする彼らも僅かながら虚無に対抗する術を用意した。
「あー!!もう!!ホントうっざい!!邪魔!!邪魔、邪魔、邪魔っ!!!!消えろ!!!」
「フランシス!」
空良の前にふわりと降り立ったのは灰色のワンピースを纏い、同じく灰色の髪を靡かせた女。その目は燃えるように赤い。アーセルムと同じ砲撃手、レプリカンを主とするアンデット属バンシーのフランシスが発した泣き声は、今にも言霊を発しようとしていた空良の声を掻き消し吹き荒れた強烈な風に立つことさえままならなくさせている。
「今だ!走れ!!」
いくらフランシスがレプリカンと契約しているとは言え全ての精霊を扱えるのが世界の柱。アリスとドロシーは例え契約をしなくとも――もちろん肉体へのダメージという代償はあるが――精霊達を従えることが出来る。だから本当にその抵抗は僅かばかりのものだ。空良がフランシスを捩じ伏せるのが早いか自分達がここを離脱するのが早いか、それは最早賭けである。振り返る愚行は犯さない。振り返る暇があるならばとにかく先へ進めと先頭を走るカルへ何度か叱責を飛ばしひた駆けた。
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