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第一章 勇者の聖剣が呪われてた
第三王女現る
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アズラルトの問いに、ふ、と微笑んだ彼女はーー
「姉上なんて堅苦しい!!お姉ちゃん、って呼んでっていつも言ってるでしょ~~~!!久しぶり、アティーーーー!!!」
ぎゅむ、とその豊満なお胸様にアズラルトの顔がめり込む。
あぁ!羨ましい!!思わず本音が口から出そうになるのを何とか耐え、ミズイロは思った。お胸様に惑わされたとは言え、美形怖い病が発症しなかったのはこの瓜二つな顔の所為か、と。
第三王女アナスタシアン。現国王の6番目の娘である。
現国王の子供は全部で7人。末っ子のアズラルトとは4つ年が離れており、カルヴァンラークのマジョルタ公爵家に嫁いで早7年。6つになった一人息子は全寮制の魔法学院に入学したと聞く。
公爵夫人として家にいるはずの彼女が何故ここに。アズラルトの疑問は最もである。彼は今乳の谷間で窒息しそうになっているけれど。
「ぶはぁ……ッ!!!殺す気か!!!」
「うふふ、お姉ちゃんに会えて死にそうなくらい嬉しいの?」
「そんなわけあるか!!」
「照れるな照れるな~」
(王子様が遊ばれている……)
姉、恐るべし。ミズイロは一人っ子だから知らなかったけれど、姉という生き物はこんなに強いのか。
なんてぽやぽや眺めていたら、その興味津々で輝く碧眼がミズイロを捉えた。
何故かギクリ、としてしまう。
「なるほどなるほどぉ~」
ふんふん、ふむふむ。ミズイロの周りをぐるぐる回り上から下までしげしげと眺め、眼鏡を押し上げ顔をまじまじ見つめる。ミズイロは抜き身の聖剣を握っているがお構いなしだ。
最後にふむ、と大きく頷いたアナスタシアンは何故かアズラルトにグッとサムズアップした。
「は?何……」
「いい!いいわ、アティ!流石面食いね!!」
「……はぁ?」
何を言い出した、この姉は。アズラルトの頭に疑問符が大量に浮かんだ。
「王都では、第4王子が薬師の青年と愛の逃避行したってもっぱらの噂よ?」
「「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!?」
今度の声はミズイロとハモる。あらやだ、息もぴったりじゃない、とハートマーク付きで言われアズラルトは頭を抱えた。
この姉は頭がおかしいと思う言動が多いけれど嘘はつかない。と、いう事は今王都では……。
「こ、困りますぅ……ッ!!僕は可愛いお嫁さんをもらうんだから変な噂立てないでくださいぃ!」
滂沱の涙を流しながらアズラルトに詰め寄るミズイロをベシッと地面に倒す。
聖剣は未だ握られたままだが敵がいなければミズイロの身体能力が上がる事はないらしい。
「こっちのセリフだ!!」
何が悲しくてこんなもっさりチビ眼鏡と駆け落ちをしないといけないんだ。そもそも駆け落ちなんてしなくても、周りの承認ぐらい自力で得て見せるわ!
言い争いを繰り広げる二人をふむふむ、と眺めていたアナスタシアンは背後からミズイロを胸に抱き込んだ。豊満なお胸様が背中に当たり、魂が頭からふわ、と出てきているミズイロは置いておいて。
「でもアティ、貴方の好みドストライクじゃないの」
「はぁ!!?」
「小さくて、童顔で、髪がふわふわしてて、頼りなくて、守ってあげたくなるーーあと貧乳」
「貧乳も何もそいつ男ですけど!?」
あと何故好みの女性像を知っている。
姉、恐るべし。
「知ってるわ。だって薬師の“青年”と駆け落ちしたって聞いたもの」
「いやいやいや……疑問を持て!」
「愛に性別は関係ないのよ」
背中のお胸様の圧力で昇天しかけていたミズイロは魂を呼び戻し、おずおずとアナスタシアンを見上げる。身長が160しかないミズイロより彼女の方がヒール分も合わせて背が高い。ちょっと悲しい。
「あの……王女様……」
「……いい……、いいわ、年下男子の上目遣い……!!!」
私の未来の義弟が可愛いわ……!!!と鼻血を吹かんばかりの王女にミズイロは疑問をぶつけてみる。
「……僕は王様に言われて旅に出たはずなんですが……、どうしてそんな噂が流れてるんでしょう?」
王命で(強制的に)旅に出たわけだが、その王都では謎の噂が流れているという。意図して流したとしか思えないそれは一体誰が流したものなのか。
いつも鈍いミズイロにしては随分と冷静である。もしかして聖剣効果だろうか。
やたら冷静になりやがって弱虫泣き虫のくせに生意気だぞ、なんて某ガキ大将のような事を思いつつ姉の顔を見る。
「噂の出所は占いオババね!」
「あのくそ婆……!!!」
次に会ったら問答無用で斬りかかってやる!しかし次に続いたのは至極当然の理由だった。
「魔王が復活したなんて民に知られて御覧なさい?みんなパニックよ」
前回の魔王の復活はおよそ300年前。その時の王都は国中からの避難者で溢れかえり民はみな度重なる災害に疲弊して人心は荒み盗難や強奪が横行する酷い有様だったという。
その時代の勇者一行が魔王を倒し一時の平和を得たが、後の為に勇者が書き記した書物には魔王はまた復活する、と書いてあった。
その事はいつかくる災厄の為の教訓として幼子に読み聞かせる物語でも扱われているくらいである。だが実際にその時が来たといきなり公表したらどうなるか。食料を蓄える為店から食料が消え、根も葉もない噂が先行し日用品を買い占める者が現れ、疫病に備えて薬もなくなり本当に必要とする人々に届かなくなってしまうだろう。それが人の世の常である。
「姉上なんて堅苦しい!!お姉ちゃん、って呼んでっていつも言ってるでしょ~~~!!久しぶり、アティーーーー!!!」
ぎゅむ、とその豊満なお胸様にアズラルトの顔がめり込む。
あぁ!羨ましい!!思わず本音が口から出そうになるのを何とか耐え、ミズイロは思った。お胸様に惑わされたとは言え、美形怖い病が発症しなかったのはこの瓜二つな顔の所為か、と。
第三王女アナスタシアン。現国王の6番目の娘である。
現国王の子供は全部で7人。末っ子のアズラルトとは4つ年が離れており、カルヴァンラークのマジョルタ公爵家に嫁いで早7年。6つになった一人息子は全寮制の魔法学院に入学したと聞く。
公爵夫人として家にいるはずの彼女が何故ここに。アズラルトの疑問は最もである。彼は今乳の谷間で窒息しそうになっているけれど。
「ぶはぁ……ッ!!!殺す気か!!!」
「うふふ、お姉ちゃんに会えて死にそうなくらい嬉しいの?」
「そんなわけあるか!!」
「照れるな照れるな~」
(王子様が遊ばれている……)
姉、恐るべし。ミズイロは一人っ子だから知らなかったけれど、姉という生き物はこんなに強いのか。
なんてぽやぽや眺めていたら、その興味津々で輝く碧眼がミズイロを捉えた。
何故かギクリ、としてしまう。
「なるほどなるほどぉ~」
ふんふん、ふむふむ。ミズイロの周りをぐるぐる回り上から下までしげしげと眺め、眼鏡を押し上げ顔をまじまじ見つめる。ミズイロは抜き身の聖剣を握っているがお構いなしだ。
最後にふむ、と大きく頷いたアナスタシアンは何故かアズラルトにグッとサムズアップした。
「は?何……」
「いい!いいわ、アティ!流石面食いね!!」
「……はぁ?」
何を言い出した、この姉は。アズラルトの頭に疑問符が大量に浮かんだ。
「王都では、第4王子が薬師の青年と愛の逃避行したってもっぱらの噂よ?」
「「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!?」
今度の声はミズイロとハモる。あらやだ、息もぴったりじゃない、とハートマーク付きで言われアズラルトは頭を抱えた。
この姉は頭がおかしいと思う言動が多いけれど嘘はつかない。と、いう事は今王都では……。
「こ、困りますぅ……ッ!!僕は可愛いお嫁さんをもらうんだから変な噂立てないでくださいぃ!」
滂沱の涙を流しながらアズラルトに詰め寄るミズイロをベシッと地面に倒す。
聖剣は未だ握られたままだが敵がいなければミズイロの身体能力が上がる事はないらしい。
「こっちのセリフだ!!」
何が悲しくてこんなもっさりチビ眼鏡と駆け落ちをしないといけないんだ。そもそも駆け落ちなんてしなくても、周りの承認ぐらい自力で得て見せるわ!
言い争いを繰り広げる二人をふむふむ、と眺めていたアナスタシアンは背後からミズイロを胸に抱き込んだ。豊満なお胸様が背中に当たり、魂が頭からふわ、と出てきているミズイロは置いておいて。
「でもアティ、貴方の好みドストライクじゃないの」
「はぁ!!?」
「小さくて、童顔で、髪がふわふわしてて、頼りなくて、守ってあげたくなるーーあと貧乳」
「貧乳も何もそいつ男ですけど!?」
あと何故好みの女性像を知っている。
姉、恐るべし。
「知ってるわ。だって薬師の“青年”と駆け落ちしたって聞いたもの」
「いやいやいや……疑問を持て!」
「愛に性別は関係ないのよ」
背中のお胸様の圧力で昇天しかけていたミズイロは魂を呼び戻し、おずおずとアナスタシアンを見上げる。身長が160しかないミズイロより彼女の方がヒール分も合わせて背が高い。ちょっと悲しい。
「あの……王女様……」
「……いい……、いいわ、年下男子の上目遣い……!!!」
私の未来の義弟が可愛いわ……!!!と鼻血を吹かんばかりの王女にミズイロは疑問をぶつけてみる。
「……僕は王様に言われて旅に出たはずなんですが……、どうしてそんな噂が流れてるんでしょう?」
王命で(強制的に)旅に出たわけだが、その王都では謎の噂が流れているという。意図して流したとしか思えないそれは一体誰が流したものなのか。
いつも鈍いミズイロにしては随分と冷静である。もしかして聖剣効果だろうか。
やたら冷静になりやがって弱虫泣き虫のくせに生意気だぞ、なんて某ガキ大将のような事を思いつつ姉の顔を見る。
「噂の出所は占いオババね!」
「あのくそ婆……!!!」
次に会ったら問答無用で斬りかかってやる!しかし次に続いたのは至極当然の理由だった。
「魔王が復活したなんて民に知られて御覧なさい?みんなパニックよ」
前回の魔王の復活はおよそ300年前。その時の王都は国中からの避難者で溢れかえり民はみな度重なる災害に疲弊して人心は荒み盗難や強奪が横行する酷い有様だったという。
その時代の勇者一行が魔王を倒し一時の平和を得たが、後の為に勇者が書き記した書物には魔王はまた復活する、と書いてあった。
その事はいつかくる災厄の為の教訓として幼子に読み聞かせる物語でも扱われているくらいである。だが実際にその時が来たといきなり公表したらどうなるか。食料を蓄える為店から食料が消え、根も葉もない噂が先行し日用品を買い占める者が現れ、疫病に備えて薬もなくなり本当に必要とする人々に届かなくなってしまうだろう。それが人の世の常である。
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