ブライダル・ラプソディー

葉月凛

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 雅巳さんの動きと共鳴するように再開した律動に、私の躰は悦んだ。それはまるで、雅巳さんの腰が送り込む快感が、そのまま私に伝わっているようだった。

 ──ああ、私は今、雅巳さんに突かれている。雅巳さんの滾った楔が、私の隘路を抉り、最奥を突き上げ、甘美な快感を送り込んでいる。雅巳さんの雄に私の躰は悦び、震えた。

「あ、あ、あ、」

 躰の奥が、あまりの幸せに痙攣した。
 そこに、真一などいない。私の全ては、雅巳さんに支配されているのだから。

 私の涙がひと筋流れると、雅巳さんの腰が最後に蛍の尻を突き上げ、擦り付けるように揺れて止まった。その絶頂を味わうように、私の中も激しく収縮する。雅巳さんのスペルマを、私も享受する。

「うっ、くっ……」

 劉が苦しそうに呻く。私の中に、雅巳さんの熱い迸りが染み渡るように散った。

「っ、……あ、」

 ──今、唐突に分かった。
 私は、勘違いをしていた! 今日のこの仕置きは、私が雅巳さんに逆らったからなどではない。

 真一と再会したあの日。
 あの、子供のような相川という彼にブルームーンを作ったあの日。

 真一と再会した私の躰の内に無意識に灯った劣情の焔を、雅巳さんは見逃さなかったのだ。

 それを、雅巳さんは許さなかった。

 真一と似ている雄を持つ劉に、真一のやり方まで真似させて、私を責めたのだ。これ程の罰があるだろうか。

 私は、心の底から慚愧の念を抱いた。
 真一を見て欲情した、過去の自分の浅ましさに反吐が出る。だがそれと同時に──心の底から、喜びが湧き上がる。

 ああ、雅巳さんは嫉妬してくれたのだ。このような仕置きを、施す程に。

 嬉しい涙が、頬を伝った。

 劉が私に覆い被さり、荒い息を吐いた。その手が優しく私の髪を撫でる。

「──今、幸せか? 玉蘭」

 耳元で、劉が囁く。

「……うん。ぼくは今、一番、幸せだよ」

 あの頃の口調で答える私に、劉が一瞬目を瞠り、嬉しそうに笑った。

「そうか。それならいいんだ」

 見えない誰かが、抱き付く劉の肩を引き上げて私から離した。

 私は幸せだ。
 私は雅巳さんの、一番の宝物なのだから。

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