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「奈津っ!」
紛うことなく聞き慣れた声に、奈津の意識は絶望に落とされていった。涙で歪んだ視界に、息を弾ませている成瀬の姿が、おぼろげに浮かんだ。
「───」
2人を一瞥した成瀬は大股で近づいて来ると、高嶺をぐいと乱暴に引き離した。
「──何をしているんです?」
抑揚のない冷めた声色に、奈津の心は一瞬で冷えた。
自分が今どんな醜悪な姿を晒しているのか……成瀬の目にそれが映っているのかと思うと、消えてしまいたくなる。
「……真一。どうして、君が来るの? 君は呼んでいないんだけど」
成瀬は無言で、くたりと力の抜けた人形のようになっている奈津を抱き起こすと、手早く衣服を直し始めた。……その手が、微かに震えている。
高嶺はゆったりとソファに歩を移すと、どさりと腰を沈めた。ふぅ、と深いため息をつく。
「……もしかして、忍? 忍が君に教えたの? 信じられないな」
こんな状況になっても反り返ったままの奈津の昂りを、成瀬が無造作に下着に押し込んだ。
「っ、っ、……」
奈津は声を噛んで、刺激に耐えた。自分は成瀬に何をさせているのか。……もう、放っておいて欲しい……涙がぽろぽろと頬を伝った。
高嶺は特に慌てる様子もなく、顎に手を当てて、ただ不思議がっている。
服越しに伝わる成瀬の手の震えは、止まることがなかった。
「貴方は彼のことを、もっと考えるべきだ」
高嶺が、微かに目を見開く。
「──驚いた。忍が私に逆らうなんて、初めてだよ。……そうか、忍が」
「二度と、こいつに、手を出さないと誓ってください。二度と、こんなことをしたら……俺は貴方を許さない」
「私は君に忍を分けてあげたのに、君は私には、くれないんだね」
「………」
奈津には、交わされている会話の意味を考える余裕はなかった。ただ、成瀬の顔が見られないまま俯いて、尚も込み上げる欲情を抑え込むのに必死だった。
「……連れて帰ります」
ジャケットを肩に被せ、ネクタイをポケットに捩じ込むと、成瀬はふらつく奈津の肩を抱き支えて、足早に出て行こうとした。
「ああ、忍に入るように言ってくれる? ドアの向こうにいるんだろう?」
成瀬は、黙ってドアを開けた。
紛うことなく聞き慣れた声に、奈津の意識は絶望に落とされていった。涙で歪んだ視界に、息を弾ませている成瀬の姿が、おぼろげに浮かんだ。
「───」
2人を一瞥した成瀬は大股で近づいて来ると、高嶺をぐいと乱暴に引き離した。
「──何をしているんです?」
抑揚のない冷めた声色に、奈津の心は一瞬で冷えた。
自分が今どんな醜悪な姿を晒しているのか……成瀬の目にそれが映っているのかと思うと、消えてしまいたくなる。
「……真一。どうして、君が来るの? 君は呼んでいないんだけど」
成瀬は無言で、くたりと力の抜けた人形のようになっている奈津を抱き起こすと、手早く衣服を直し始めた。……その手が、微かに震えている。
高嶺はゆったりとソファに歩を移すと、どさりと腰を沈めた。ふぅ、と深いため息をつく。
「……もしかして、忍? 忍が君に教えたの? 信じられないな」
こんな状況になっても反り返ったままの奈津の昂りを、成瀬が無造作に下着に押し込んだ。
「っ、っ、……」
奈津は声を噛んで、刺激に耐えた。自分は成瀬に何をさせているのか。……もう、放っておいて欲しい……涙がぽろぽろと頬を伝った。
高嶺は特に慌てる様子もなく、顎に手を当てて、ただ不思議がっている。
服越しに伝わる成瀬の手の震えは、止まることがなかった。
「貴方は彼のことを、もっと考えるべきだ」
高嶺が、微かに目を見開く。
「──驚いた。忍が私に逆らうなんて、初めてだよ。……そうか、忍が」
「二度と、こいつに、手を出さないと誓ってください。二度と、こんなことをしたら……俺は貴方を許さない」
「私は君に忍を分けてあげたのに、君は私には、くれないんだね」
「………」
奈津には、交わされている会話の意味を考える余裕はなかった。ただ、成瀬の顔が見られないまま俯いて、尚も込み上げる欲情を抑え込むのに必死だった。
「……連れて帰ります」
ジャケットを肩に被せ、ネクタイをポケットに捩じ込むと、成瀬はふらつく奈津の肩を抱き支えて、足早に出て行こうとした。
「ああ、忍に入るように言ってくれる? ドアの向こうにいるんだろう?」
成瀬は、黙ってドアを開けた。
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