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「相川さんは、いつからピアノをされているんですか? リクエストをその場で楽譜も見ないで弾けちゃうなんて、すごい!」
「いえ、さっきの曲はたまたま知っていたので……僕は、母が自宅でピアノ教室をしていたので、物心つく前からピアノはずっと身近にあったんです」
「そうなんだぁ。私なんて、すぐに挫折しちゃったからなー。男の人でピアノが弾けるって、格好いいですよね! あ、指見せてもらってもいいですか? 指!」
「え? ああ……普通、ですけど……」
奈津がテーブルの上に置いた手のひらを覗き込んだ彼女は、隣に自分の手を広げて、比べて見ている。
「やっぱり、指長いですねーっ、ていうか、きれいな指!」
「いえ、本当に普通なんで……特に、長くもないですし……」
彼女の目が、やけにキラキラしているのは何故だろう。でも、奈津はそれより、さっきから黙ったままの彼氏の方が気になった。
……何か、機嫌が悪くないだろうか。話し掛けた方が、いいのか……?
「あ、あの……」
何か言わなければと、彼氏に声を掛けようとしたその時、
「お話し中に、ごめんなさいね! ご挨拶が遅れまして。櫻井音楽事務所代表の、櫻井美奈子です。このたびは、おめでとうございます!」
奈津たち3人が音楽室に入っている間に出社したらしい代表の櫻井が、明るい声で入って来た。2人にそれぞれ名刺を渡し、奈津の隣に腰を下ろす。
彼女の興味は、櫻井へと移った。
「わぁ、女性の社長さんなんですね! 社長さんも、ピアノとか、されるんですか?」
「ええ。キーボード全般を扱えます。昔は披露宴といえば、キーボードやシンセサイザーの生演奏が主流でしたからね。ピアノは、今も少しだけ」
「ああ、シンセサイザーも素敵ですよね! 前に、楽器屋さんでデモンストレーションを見たことがあります。鍵盤が幾つかあって、色んな音が出てすごいって、彼と話してたんです。ねっ、一緒に見たんだよね」
「うん、あれはすごかった。足も使ってたよな?」
「そうそう!」
自然に会話に入ってきた彼氏の様子に、奈津は少しほっとした。機嫌が悪いなんて、自分の思い過ごしだったようだ。
そのあとも和やかな会話を続けながら、彼女は櫻井が勧めたお菓子にも手を伸ばした。
そして、披露宴当日のリクエスト曲を念入りに確認して、2人は楽しそうに仲良く帰って行った。
「いえ、さっきの曲はたまたま知っていたので……僕は、母が自宅でピアノ教室をしていたので、物心つく前からピアノはずっと身近にあったんです」
「そうなんだぁ。私なんて、すぐに挫折しちゃったからなー。男の人でピアノが弾けるって、格好いいですよね! あ、指見せてもらってもいいですか? 指!」
「え? ああ……普通、ですけど……」
奈津がテーブルの上に置いた手のひらを覗き込んだ彼女は、隣に自分の手を広げて、比べて見ている。
「やっぱり、指長いですねーっ、ていうか、きれいな指!」
「いえ、本当に普通なんで……特に、長くもないですし……」
彼女の目が、やけにキラキラしているのは何故だろう。でも、奈津はそれより、さっきから黙ったままの彼氏の方が気になった。
……何か、機嫌が悪くないだろうか。話し掛けた方が、いいのか……?
「あ、あの……」
何か言わなければと、彼氏に声を掛けようとしたその時、
「お話し中に、ごめんなさいね! ご挨拶が遅れまして。櫻井音楽事務所代表の、櫻井美奈子です。このたびは、おめでとうございます!」
奈津たち3人が音楽室に入っている間に出社したらしい代表の櫻井が、明るい声で入って来た。2人にそれぞれ名刺を渡し、奈津の隣に腰を下ろす。
彼女の興味は、櫻井へと移った。
「わぁ、女性の社長さんなんですね! 社長さんも、ピアノとか、されるんですか?」
「ええ。キーボード全般を扱えます。昔は披露宴といえば、キーボードやシンセサイザーの生演奏が主流でしたからね。ピアノは、今も少しだけ」
「ああ、シンセサイザーも素敵ですよね! 前に、楽器屋さんでデモンストレーションを見たことがあります。鍵盤が幾つかあって、色んな音が出てすごいって、彼と話してたんです。ねっ、一緒に見たんだよね」
「うん、あれはすごかった。足も使ってたよな?」
「そうそう!」
自然に会話に入ってきた彼氏の様子に、奈津は少しほっとした。機嫌が悪いなんて、自分の思い過ごしだったようだ。
そのあとも和やかな会話を続けながら、彼女は櫻井が勧めたお菓子にも手を伸ばした。
そして、披露宴当日のリクエスト曲を念入りに確認して、2人は楽しそうに仲良く帰って行った。
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