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「優しい新婦さんですね。いい人だ」
「そうだな。大野も感激して、泣いてたよ」
「え? 新婦の前で、泣いたんですか?」
「ああ。──お前と似てるかもな」
「なっ、似てませんよっ」
奈津はかっとして、成瀬を小突いた。
確かにこの仕事に就いた当初は、キャンドルサービスや花束贈呈など事あるごとに感動して泣いてしまい、それは成瀬にも知られてしまっている。
奈津は、涙もろかった。これでも随分、ましになったのだ。
「似てませんからね!」
似ていると言われて憤慨するのも大野に対して失礼な気がするが、ここは言っておきたい。
「はいはい。すみませんでしたね」
成瀬はくすくす笑いながら、尚も腕を小突く奈津を肩ごと抱き寄せ、頭にちゅっと唇を押し当てた。抱き寄せたままくすくすと笑う成瀬に、心臓がドキドキと早鐘を打ち始める。
「……やめてください、誰かに見られたら……」
「誰もいないよ。別に見られてもいい」
「だめですって」
2人の関係をオープンにして構わないと言った成瀬を止めたのは、奈津だった。
後ろめたいことをしているとは思わないが、やはり周囲の目というものがある。好意的に見てくれる人もいるだろうけど、否定的に捉える人だっているだろう。
成瀬はここの責任者だ。多くのスタッフを束ねていかなければならないし、信頼を失う訳にはいかない。自分と違って、色んなしがらみもあるだろう。
「ほら、離れてください……あ」
身じろいだ奈津の視界に、遠くからこちらを注視している人物の姿が映った。
「何? どうした?」
「今、通用口にいた男の人が、こっち見てたんですけど……」
奈津は一瞬、目が合った気がした。
黒いロングコートを着た、すらりと背の高い男性で、遠目でその表情までは分からない筈なのだが……何故か、怒っているような気がしたのだ。
成瀬が振り返った時には、その男性はもう通用口から中へと消えたあとだった。
「業者の搬入か何かだろ。それより、イタリアンでいいか? 行ってみたい店があるんだ」
「あ、はい。……楽しみ」
搬入業者には見えなかったが……考えても仕方がないかと思い直し、成瀬と過ごすひとときを楽しむことにしたのだった。
「そうだな。大野も感激して、泣いてたよ」
「え? 新婦の前で、泣いたんですか?」
「ああ。──お前と似てるかもな」
「なっ、似てませんよっ」
奈津はかっとして、成瀬を小突いた。
確かにこの仕事に就いた当初は、キャンドルサービスや花束贈呈など事あるごとに感動して泣いてしまい、それは成瀬にも知られてしまっている。
奈津は、涙もろかった。これでも随分、ましになったのだ。
「似てませんからね!」
似ていると言われて憤慨するのも大野に対して失礼な気がするが、ここは言っておきたい。
「はいはい。すみませんでしたね」
成瀬はくすくす笑いながら、尚も腕を小突く奈津を肩ごと抱き寄せ、頭にちゅっと唇を押し当てた。抱き寄せたままくすくすと笑う成瀬に、心臓がドキドキと早鐘を打ち始める。
「……やめてください、誰かに見られたら……」
「誰もいないよ。別に見られてもいい」
「だめですって」
2人の関係をオープンにして構わないと言った成瀬を止めたのは、奈津だった。
後ろめたいことをしているとは思わないが、やはり周囲の目というものがある。好意的に見てくれる人もいるだろうけど、否定的に捉える人だっているだろう。
成瀬はここの責任者だ。多くのスタッフを束ねていかなければならないし、信頼を失う訳にはいかない。自分と違って、色んなしがらみもあるだろう。
「ほら、離れてください……あ」
身じろいだ奈津の視界に、遠くからこちらを注視している人物の姿が映った。
「何? どうした?」
「今、通用口にいた男の人が、こっち見てたんですけど……」
奈津は一瞬、目が合った気がした。
黒いロングコートを着た、すらりと背の高い男性で、遠目でその表情までは分からない筈なのだが……何故か、怒っているような気がしたのだ。
成瀬が振り返った時には、その男性はもう通用口から中へと消えたあとだった。
「業者の搬入か何かだろ。それより、イタリアンでいいか? 行ってみたい店があるんだ」
「あ、はい。……楽しみ」
搬入業者には見えなかったが……考えても仕方がないかと思い直し、成瀬と過ごすひとときを楽しむことにしたのだった。
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