89 / 160
89
しおりを挟む
ブーケプルズも、悲惨だった。
新婦のブーケに当たりのリボンを結び、ダミーのリボンと混ぜて友人たちに一斉に引いてもらうこのプルズは、当たった人は次の花嫁になれるというジンクスも手伝って結構盛り上がる。
男性版としてブロッコリープルズなるものを企画している会場もあり、見事当たりを引いた男性ゲストにブロッコリーの特別メニューが振舞われているのを、奈津はこれまでに見たことがあった。
本日は、ブーケプルズのみの演出だった。
司会者の呼び掛けでメイン席前に主に独身女性を中心に集まってもらい、新婦がブーケと束ねて持ったリボンの端を、キャプテンの大野が取りやすいように広げて持つ。皆、きゃあきゃあと盛り上がりながらリボンの端を取ってゆき、全てが行き渡ったところで司会者が声を張った。
『それではいきますよー、せーのっ、どうぞー!』
『キャーッ! わぁっ、あっ……れ? え?』
司会者の掛け声で一斉に引かれたリボンは、全て新婦のブーケからするりと抜け落ちた。……当たりがない。
当たりが確定した時点で音楽のボリュームを上げようと待ち構えていた奈津は、完全にタイミングを失った。
『え? あれ?? えっと……』
大野が、おろおろしている。
当たりのリボンをあらかじめブーケに結び付けておくのは、キャプテンの仕事だった。結び目がゆるかったのか、そもそも結び忘れたのか……皆が見守る中、大野は数本あるリボンの中から、1本の先に文具用の小さなクリップがちょん、と付いているのを発見し、
『こっ、これが当たりです!』
と、言い切った。
そのリボンを持っていたゲストの女の子は、
『えっ、私!? えっと……いいのかなぁ……?』
と困惑し、乗っかるしかないと思った新婦は、
『うんっ、いいよ! おめでとう!』
と半ば強引にブーケを押し付け、ブーケプルズはぐだぐだになってしまった。
だが、今日一番のトラブルは、こんなものではなかった。
──ウェディングケーキだ。
といっても、ケーキ自体に問題があった訳ではない。
新婦のブーケに当たりのリボンを結び、ダミーのリボンと混ぜて友人たちに一斉に引いてもらうこのプルズは、当たった人は次の花嫁になれるというジンクスも手伝って結構盛り上がる。
男性版としてブロッコリープルズなるものを企画している会場もあり、見事当たりを引いた男性ゲストにブロッコリーの特別メニューが振舞われているのを、奈津はこれまでに見たことがあった。
本日は、ブーケプルズのみの演出だった。
司会者の呼び掛けでメイン席前に主に独身女性を中心に集まってもらい、新婦がブーケと束ねて持ったリボンの端を、キャプテンの大野が取りやすいように広げて持つ。皆、きゃあきゃあと盛り上がりながらリボンの端を取ってゆき、全てが行き渡ったところで司会者が声を張った。
『それではいきますよー、せーのっ、どうぞー!』
『キャーッ! わぁっ、あっ……れ? え?』
司会者の掛け声で一斉に引かれたリボンは、全て新婦のブーケからするりと抜け落ちた。……当たりがない。
当たりが確定した時点で音楽のボリュームを上げようと待ち構えていた奈津は、完全にタイミングを失った。
『え? あれ?? えっと……』
大野が、おろおろしている。
当たりのリボンをあらかじめブーケに結び付けておくのは、キャプテンの仕事だった。結び目がゆるかったのか、そもそも結び忘れたのか……皆が見守る中、大野は数本あるリボンの中から、1本の先に文具用の小さなクリップがちょん、と付いているのを発見し、
『こっ、これが当たりです!』
と、言い切った。
そのリボンを持っていたゲストの女の子は、
『えっ、私!? えっと……いいのかなぁ……?』
と困惑し、乗っかるしかないと思った新婦は、
『うんっ、いいよ! おめでとう!』
と半ば強引にブーケを押し付け、ブーケプルズはぐだぐだになってしまった。
だが、今日一番のトラブルは、こんなものではなかった。
──ウェディングケーキだ。
といっても、ケーキ自体に問題があった訳ではない。
0
お気に入りに追加
40
あなたにおすすめの小説




百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

寮生活のイジメ【社会人版】
ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説
【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】
全四話
毎週日曜日の正午に一話ずつ公開
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる