ブライダル・ラプソディー

葉月凛

文字の大きさ
上 下
55 / 160

55

しおりを挟む
          ◆

 今日も、相川奈津は誰よりも早く、メルマリーの披露宴会場に入っていた。

 マイクのセッティングを終え、人がいないうちに照明の調光も合わせる。スポットライトのスライド具合を確認し、DVD上映の際の、スクリーンチェックも忘れない。

 時間に余裕を持っておかないと、何があるか分からない。余興のリハーサルなどは、当日急に入ることが多いのだ。

 過去に新郎友人のギター演奏があり、当日リハーサルに訪れた彼に開宴間際まで会場で練習されたことがあった。そのためDVDのチェックがぎりぎりになってしまい、いらいらとした成瀬に要領の悪さを罵られ……いや、注意されたことがある。

 本城にも、時間には余裕を持つよう、いつも言われているのだった。

 今日こそは1つのミスもなく完璧な音響をこなすため、奈津は準備に余念がない。……もちろん、いつもそのつもりなのだが。

 今回の新郎新婦は、映画好きだ。音楽は全て2人が選び、持ち込んでいる。予備の音源として、奈津も映画音楽を幾つか持参してきた。

 音楽というのは、かなり披露宴の雰囲気を左右するアイテムだ。ポップな曲だと明るく楽しい感じのパーティーになるし、クラシックだと落ち着いた厳かな雰囲気にもなる。マニアックな曲だと、それはそれで2人らしいとゲストは笑顔になる。音楽は2人の個性も表れる大切な要素だと、奈津は思っていた。

 使用する音源を順に進行と照らし合わせていると、不覚にも欠伸が出てしまい、目を擦る。

 今週、奈津はずっと寝不足だった。なかなか眠れなかったのだ。普段は寝付きのいい方なのだが、寝ようとするとつい成瀬のことが頭に浮かび、色んなあれこれを思い出してしまう。

 櫻井音楽事務所にもようやく出勤した奈津だが、なかなか顔色がすぐれなくて本城にも心配を掛けてしまい、本当に申し訳なかった。

 あれから、1週間──

 あのあと、奈津はさんざんだった。……主に、『体』が。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

カテーテルの使い方

真城詩
BL
短編読みきりです。

営業活動

むちむちボディ
BL
取引先の社長と秘密の関係になる話です。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

処理中です...