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(この書類、早く渡してしまいたいんだけど……成瀬さん、どこ行ったんだろう。忙しいんだろうな)
気付くと、成瀬たちはいつの間にかロビーからいなくなっていた。少し、のんびりとし過ぎてしまったようだ。音響台周辺を片付けた奈津は、本城から預かった茶封筒を持ってバックヤードへと入って行った。
サロン事務所を覗いてみたが、やはり成瀬の姿はない。机の上に置いておきたい気持ちを堪えて捜しに行こうとした時、里崎がサロン事務所に入って来た。
「あ、里崎さん、お疲れ様です。今日はありがとうございました」
「ああ、お疲れ様」
里崎は事務所内の自分の席に歩み寄り、バインダーの棚をあさり始めた。奈津は遠慮がちに話し掛ける。
「あの、成瀬さんは、今どちらにいらっしゃいますか?」
「成瀬さん? たぶん衣装室で着替えてると思うよ。何か用事?」
「はい、ちょっと書類を……じゃあ、ここで待ってたら戻られますね」
「あー、このあと急な接客が入ったって言ってたから……どうかなぁ」
里崎はお目当てのバインダーを見つけ出し、パラパラと中をめくる。
「そうなんですか……あ、でも打ち上げに来られますよね」
飲みの席で見積もりを渡すのもどうかと思うが、直接渡せと言われているのだから仕方がない。飲む前に渡してしまえばいいのではないだろうか。いやだめか。
「あー、ホテルからのお客さんで支配人絡みだからな……今日の打ち上げは、多分来られないよ。つかまえたいなら、今衣装室に行った方がいいと思うよ」
里崎はパタリとバインダーを閉じて、奈津を見てにこりと笑った。
「そうですか……ありがとうございます」
里崎は片手を上げて、さっさとサロン事務所をあとにする。
(衣装室か……着替えてるところになんて、あんまり行きたくないんだけど)
奈津は仕方なく、衣装室へ向かうことにした。
(ていうか、今日の打ち上げ、成瀬さん来ないのか……)
妙にがっかりしている自分に気付き、慌てて心の中で否定する。
(って、何がっかりしてんだ自分っ。成瀬さんがいてもいなくても関係ないだろ! もう意識しないって決めたじゃないか)
心の中でぶんぶんと頭を振り、奈津は衣装室へと向かった。
気付くと、成瀬たちはいつの間にかロビーからいなくなっていた。少し、のんびりとし過ぎてしまったようだ。音響台周辺を片付けた奈津は、本城から預かった茶封筒を持ってバックヤードへと入って行った。
サロン事務所を覗いてみたが、やはり成瀬の姿はない。机の上に置いておきたい気持ちを堪えて捜しに行こうとした時、里崎がサロン事務所に入って来た。
「あ、里崎さん、お疲れ様です。今日はありがとうございました」
「ああ、お疲れ様」
里崎は事務所内の自分の席に歩み寄り、バインダーの棚をあさり始めた。奈津は遠慮がちに話し掛ける。
「あの、成瀬さんは、今どちらにいらっしゃいますか?」
「成瀬さん? たぶん衣装室で着替えてると思うよ。何か用事?」
「はい、ちょっと書類を……じゃあ、ここで待ってたら戻られますね」
「あー、このあと急な接客が入ったって言ってたから……どうかなぁ」
里崎はお目当てのバインダーを見つけ出し、パラパラと中をめくる。
「そうなんですか……あ、でも打ち上げに来られますよね」
飲みの席で見積もりを渡すのもどうかと思うが、直接渡せと言われているのだから仕方がない。飲む前に渡してしまえばいいのではないだろうか。いやだめか。
「あー、ホテルからのお客さんで支配人絡みだからな……今日の打ち上げは、多分来られないよ。つかまえたいなら、今衣装室に行った方がいいと思うよ」
里崎はパタリとバインダーを閉じて、奈津を見てにこりと笑った。
「そうですか……ありがとうございます」
里崎は片手を上げて、さっさとサロン事務所をあとにする。
(衣装室か……着替えてるところになんて、あんまり行きたくないんだけど)
奈津は仕方なく、衣装室へ向かうことにした。
(ていうか、今日の打ち上げ、成瀬さん来ないのか……)
妙にがっかりしている自分に気付き、慌てて心の中で否定する。
(って、何がっかりしてんだ自分っ。成瀬さんがいてもいなくても関係ないだろ! もう意識しないって決めたじゃないか)
心の中でぶんぶんと頭を振り、奈津は衣装室へと向かった。
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