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メルマリーのサロン事務所には、既に何人かのスタッフが席に着いていた。司会者に、配膳スタッフのリーダー、装花の担当、美容室からも担当者が来ていた。先週も一緒だったビデオカメラマンの男性が、奈津を見てにこりと笑う。
成瀬は、まだ来ていないようだった。
奈津はほっとして肩の力を抜き、本城に促されて、隅の席に並んで着く。共に仕事をしているのに普段はあまり一堂に会さない面々が集まり、皆思い思いの雑談をしているようだった。
披露宴は、各専門のスタッフがそれぞれ集まって、一緒に作り上げてゆく。1つの目標に向かって皆で力を合わせるこの仕事が、奈津は好きだった。それが幸せのお手伝いとあっては、尚更だ。
同じ披露宴は2つとなく、毎回それなりの達成感を感じると共に、次もより良いものを目指し、意欲が湧いた。披露宴に入った日は、家に帰ってからも興奮が取れずに、なかなか寝付けない程だった。
それなのに──
先週、奈津は、メルマリーのチーフキャプテン成瀬真一と……キスをしてしまった。いや、キスどころか、成瀬の手と口で……達してしまったのだ。
しかも、初めのうちこそ抵抗していたが、途中からは明らかに受け入れていた。と、思う。
(いやっ、あれは生理的な現象で、仕方なかったんだっ……)
また思い出しそうになり、慌てて思考を霧散させる。
あのあと……一連の行為が終わったあと、成瀬は何か言い掛けたのだが、奈津は居たたまれなくなり、自分の荷物を引っ掴んで逃げるように帰ってしまった。何か、話をしておけば良かったのかもしれないと、あとになって思ったのだった。
(でも、話すって何を……)
あの時、奈津は完全に混乱していた。いや、今も混乱している。
あんなことをされながら、嫌悪感らしきものはなく、羞恥心しか湧かなかったことにも後々動揺した。結局は、抵抗しきれなかった自分がショックだったのかもしれない。
(僕は、男が、好きなのか……?)
奈津は、これまでの自分を振り返った。
メルマリーのサロン事務所には、既に何人かのスタッフが席に着いていた。司会者に、配膳スタッフのリーダー、装花の担当、美容室からも担当者が来ていた。先週も一緒だったビデオカメラマンの男性が、奈津を見てにこりと笑う。
成瀬は、まだ来ていないようだった。
奈津はほっとして肩の力を抜き、本城に促されて、隅の席に並んで着く。共に仕事をしているのに普段はあまり一堂に会さない面々が集まり、皆思い思いの雑談をしているようだった。
披露宴は、各専門のスタッフがそれぞれ集まって、一緒に作り上げてゆく。1つの目標に向かって皆で力を合わせるこの仕事が、奈津は好きだった。それが幸せのお手伝いとあっては、尚更だ。
同じ披露宴は2つとなく、毎回それなりの達成感を感じると共に、次もより良いものを目指し、意欲が湧いた。披露宴に入った日は、家に帰ってからも興奮が取れずに、なかなか寝付けない程だった。
それなのに──
先週、奈津は、メルマリーのチーフキャプテン成瀬真一と……キスをしてしまった。いや、キスどころか、成瀬の手と口で……達してしまったのだ。
しかも、初めのうちこそ抵抗していたが、途中からは明らかに受け入れていた。と、思う。
(いやっ、あれは生理的な現象で、仕方なかったんだっ……)
また思い出しそうになり、慌てて思考を霧散させる。
あのあと……一連の行為が終わったあと、成瀬は何か言い掛けたのだが、奈津は居たたまれなくなり、自分の荷物を引っ掴んで逃げるように帰ってしまった。何か、話をしておけば良かったのかもしれないと、あとになって思ったのだった。
(でも、話すって何を……)
あの時、奈津は完全に混乱していた。いや、今も混乱している。
あんなことをされながら、嫌悪感らしきものはなく、羞恥心しか湧かなかったことにも後々動揺した。結局は、抵抗しきれなかった自分がショックだったのかもしれない。
(僕は、男が、好きなのか……?)
奈津は、これまでの自分を振り返った。
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