ブライダル・ラプソディー

葉月凛

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 早急に入り込んだ舌先は、奈津の舌を簡単に絡め取ってしまった。

 きつく吸い上げられ、息苦しさに成瀬の肩を掴み引き剥がそうとするが、上手くいかない。先程とは全く違う勢いに、奈津は息もつけなかった。

「んんっ、うぅ」

 成瀬の手は奈津の上着のボタンを外して内側に入り、シャツの薄い生地越しに脇腹を撫でてきた。

「っ!」

 その手の感触が生々しく、神経を過敏にする。
 唇を絶え間なく喰まれながら、意識が成瀬の手に集中する。両手で抱え込むように、それは脇腹から胸を撫で上げ首筋にまとわり、下へと移動していった。

「んんっ、んっ」

 肩を掴む手に力が入る。
 体を這い回る手の何とも言えない感触に、思い掛けず腰の奥が甘くずくりと疼いてしまう。……二度、三度。

「んっ……んん」

 次第にふわふわとしていく意識の中、気が付くとカチャ、と金属の音がする。ベルトが外され、ボタンが開けられ、やがてファスナーが下りる感覚に、ようやく自分のスラックスのフロント部分が寛げられていることが分かった。

(え!)

 とっさにぐっと力をこめて成瀬の頭を引き離し、瞬時に我に返る。

「やめてください! 何するんですかっ」
「………」

 成瀬は唇を歪めたまま、奈津の手を掴んでゆっくりと横へ押しやった。

「成瀬、さっ」

 奈津の言葉を遮るように、熱い唇が覆う。

「んっ……う……」

 尚も押しのけようとする奈津の両手をひと纏めに頭の上で壁に押し付け左手に持つと、右手で手際良くシャツを引き抜き、下着の入口をなぞらえた。

(あっ!)

 奈津は、力を振り絞って体を捩った。頭上で両手を掴んでいる成瀬の手に、力がこもる。

 ──いけない。これ以上はさすがにだめだと、奈津の本能が訴える。

 何より……何より、あらぬところが少し兆してしまっていることを成瀬に知られるのは、死ぬ程恥ずかしい。
 奈津は、正気を保とうと必死になった。

「……成瀬さん、酔ってるんでしょう」

 奈津の冷静を装った声に、下着を辿っていた手がぴたりと止まった。

「酔ってないよ」

 成瀬が、真っ直ぐに奈津を見据える。

「放してください。僕は、男ですよ」
「……分かってる」

 切長の目元が、少し苦しそうに歪んだ。

「奈津──好きだ」
「……え?」

 一瞬怯んだ隙をついて、成瀬の右手はするりとスラックスの中に差し込まれ、奈津自身を下着の上から包み込んだ。

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