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夏樹が、驚きに目をぱちぱちさせる。
「え、桑原が? 俺を?」
「うん」
「え、桑原って……」
「うん。だって俺、そうだし。でも杉本はノーマルだって分かってたから諦めてたっつうか」
「………」
「ああ、心配すんな。俺、今はパートナーいるから」
「パートナー?」
「悟」
夏樹が首を傾げると同時に、近くで声が聞こえた。
「ここにいたんだ、悟。──こんにちは。僕もお邪魔していいかな?」
夏樹が振り返ると、前に昼休憩時、エレベーターの前で桑原と一緒にいるところを見かけた先輩社員が立っていた。
「あ、先輩」
途端に、桑原が笑顔になる。
(桑原って、さとるって名前だっけ。え、この人、もしかして……)
改めて、普段呼んだことのない同期の下の名前を認識する。桑原は、隣に座った先輩に軽く頭を寄せて笑った。
「そ。この人」
「なあに? 何の話?」
「なーいしょ」
「えぇ?」
くすくすと笑う2人が、とても楽しそうに見える。先輩が、目を細めて夏樹を見た。
「君、杉本君だよね? 今朝の朝礼で名前の出てた」
「あ、はい」
今朝、業務前に全体朝礼があり、正式に北條グループの傘下に入ることが発表された。サクラオフィスの事業はそのまま継続され、この支社には新しい支社長がやって来た。
『北條百合親です。よろしく』
眼鏡を外して髪をすっきりと後ろに流し、ダークブルーのスーツにネクタイを締め皆の前に立った人物に、驚きを隠せない人は多かった。
彼は、普段の社の雰囲気を知るために北野と名乗って業務に就いていたことを説明し、サクラオフィスは素晴らしい会社だと褒めた。
桑原が懸念していたリストラは、誰1人行われなかった。北條の悪いイメージを承知した上で、退職希望者にはそれなりの退職金を用意すること、今後はクリアな事業展開に邁進することなどを述べた。
そして最後に、新しく秘書室を開設し、北條から異動してくる秘書に加えて杉本夏樹を秘書室付きにする、と発表した。
「え、桑原が? 俺を?」
「うん」
「え、桑原って……」
「うん。だって俺、そうだし。でも杉本はノーマルだって分かってたから諦めてたっつうか」
「………」
「ああ、心配すんな。俺、今はパートナーいるから」
「パートナー?」
「悟」
夏樹が首を傾げると同時に、近くで声が聞こえた。
「ここにいたんだ、悟。──こんにちは。僕もお邪魔していいかな?」
夏樹が振り返ると、前に昼休憩時、エレベーターの前で桑原と一緒にいるところを見かけた先輩社員が立っていた。
「あ、先輩」
途端に、桑原が笑顔になる。
(桑原って、さとるって名前だっけ。え、この人、もしかして……)
改めて、普段呼んだことのない同期の下の名前を認識する。桑原は、隣に座った先輩に軽く頭を寄せて笑った。
「そ。この人」
「なあに? 何の話?」
「なーいしょ」
「えぇ?」
くすくすと笑う2人が、とても楽しそうに見える。先輩が、目を細めて夏樹を見た。
「君、杉本君だよね? 今朝の朝礼で名前の出てた」
「あ、はい」
今朝、業務前に全体朝礼があり、正式に北條グループの傘下に入ることが発表された。サクラオフィスの事業はそのまま継続され、この支社には新しい支社長がやって来た。
『北條百合親です。よろしく』
眼鏡を外して髪をすっきりと後ろに流し、ダークブルーのスーツにネクタイを締め皆の前に立った人物に、驚きを隠せない人は多かった。
彼は、普段の社の雰囲気を知るために北野と名乗って業務に就いていたことを説明し、サクラオフィスは素晴らしい会社だと褒めた。
桑原が懸念していたリストラは、誰1人行われなかった。北條の悪いイメージを承知した上で、退職希望者にはそれなりの退職金を用意すること、今後はクリアな事業展開に邁進することなどを述べた。
そして最後に、新しく秘書室を開設し、北條から異動してくる秘書に加えて杉本夏樹を秘書室付きにする、と発表した。
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