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「はっ……はぁ……」
北野がごそりと動く気配に、夏樹は再び腕で顔を覆う。
「……ひどい」
「何だ、気持ち良かっただろう? ほら、足」
「え?」
くくっと笑った北野にぐいと足を広げられ、慌てて起き上がろうとすると、片手で肩を押さえられた。
「まだ寝とけ。ほら、腰上げて」
「え、あっ」
するりとお尻の下にクッションを差し込まれ、下半身を北野の前に晒してしまう。
「あ、ちょっと、……んっ」
したことのない体勢に夏樹が慌てていると、あらぬところを何かがとろりと流れた。
(っ、これ、俺のっ)
流れる液体の正体に気付いた夏樹は、かっと赤くなった。
「や、何すっ、」
「悪いな、次からちゃんとしたものを用意するから」
「──え?」
お腹に溜めたらしい夏樹の精液を、指で掬って下半身に塗りつけている。
「いっぱい出て良かった」
「………」
その目的に気が付き、夏樹は軽く血の気が引いた。このために、あんな早急に出させたのか? というか、
(──待って。え、嘘だよね? ……しようとしてる? いきなり、今日?)
男性同士の営みがどういうものかくらい、知識はある。自分の身に降りかかるとは思ってもみなかったが。
「……あの」
「大丈夫だ。痛くない」
一度射精をして頭の冷えた夏樹に、その言葉は響かない。
「あの……ごめん。ちょっとまだ、そこまでは、その」
夏樹の冷静な言葉に、北野はぴたりと手を止めて顔を上げた。
「……嫌、か」
「あ……」
眉を下げて寂しそうな顔をする北野に、夏樹の心はちくりと痛む。
「……そうか。そうだな……お前が嫌なら、仕方がないな」
「あの……」
北野は、横に寄せていたシーツを手繰り寄せ、夏樹にぱさりとかけた。
「いいよ。無理はさせられない。約束だからな」
「あの」
俯いた北野の表情は見えない。
「……夏樹と1つになりたかったんだが……俺の一方通行だったな、すまない」
「え、そんなことは……」
寂しそうにふっと息を吐く気配に、夏樹の心はあっさりと揺れる。一方通行ということは……ない、と思う。
「あの、あの……ちょっと、だけなら」
「ん?」
「あの、俺も北野さんと、その……あっ、ゆり、」
北野が、ぱさりとシーツを剥いだ。
「──そうか。嬉しいよ、夏樹」
「っ、」
顔を上げた北野の口端はくっきりと弧を描き、ギラつく瞳はさっきよりも濃く見えた。
北野がごそりと動く気配に、夏樹は再び腕で顔を覆う。
「……ひどい」
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するりとお尻の下にクッションを差し込まれ、下半身を北野の前に晒してしまう。
「あ、ちょっと、……んっ」
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(っ、これ、俺のっ)
流れる液体の正体に気付いた夏樹は、かっと赤くなった。
「や、何すっ、」
「悪いな、次からちゃんとしたものを用意するから」
「──え?」
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(──待って。え、嘘だよね? ……しようとしてる? いきなり、今日?)
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「……あの」
「大丈夫だ。痛くない」
一度射精をして頭の冷えた夏樹に、その言葉は響かない。
「あの……ごめん。ちょっとまだ、そこまでは、その」
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「……嫌、か」
「あ……」
眉を下げて寂しそうな顔をする北野に、夏樹の心はちくりと痛む。
「……そうか。そうだな……お前が嫌なら、仕方がないな」
「あの……」
北野は、横に寄せていたシーツを手繰り寄せ、夏樹にぱさりとかけた。
「いいよ。無理はさせられない。約束だからな」
「あの」
俯いた北野の表情は見えない。
「……夏樹と1つになりたかったんだが……俺の一方通行だったな、すまない」
「え、そんなことは……」
寂しそうにふっと息を吐く気配に、夏樹の心はあっさりと揺れる。一方通行ということは……ない、と思う。
「あの、あの……ちょっと、だけなら」
「ん?」
「あの、俺も北野さんと、その……あっ、ゆり、」
北野が、ぱさりとシーツを剥いだ。
「──そうか。嬉しいよ、夏樹」
「っ、」
顔を上げた北野の口端はくっきりと弧を描き、ギラつく瞳はさっきよりも濃く見えた。
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