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「……ごめ、」
抱きしめる北野の腕の中で、夏樹は久しぶりに泣いた。
ずっと心の奥底にしまい込んで忘れたつもりの思い出は、取り出した途端に、じくりと心を痛くした。もう平気の筈だからと笑い話にするつもりだった夏樹は、当てが外れた情けなさで一杯だ。
「……ちょっと……酔っ払ってんのかな。はは……ごめん」
背中をぽんぽんとあやすように叩かれて、夏樹は熱い顔を北野の胸に埋める。こんなことなら、言い訳にできるくらい飲んでおけば良かった。残念ながら、今日はほとんど飲んでいない。
背中を優しく叩いていた北野の手は、するすると撫でる仕草に変わっていた。その手はやがて、肩を撫で、愛おしそうに髪を撫でる。
「お前は、頑張ってきたんだな」
「………」
掠れるような北野の甘い声に、涙がほろ、と頬を伝った。
泣かないままに無意識に頑張っていた子供の頃を、夏樹は辛いと思ったことはない。それでも、気軽に口に出せないくらいには胸に押し込めていたのだろう。
そんな子供の頃の経験は、本人も気付かないままに心に傷を残してしまう。
ふぅ、と深く息を吐くと、夏樹は北野の胸から顔を離した。
「……ごめん。もう大丈夫」
見上げる夏樹の濡れた目元を、北野の温かい指がそっと拭う。自分を見つめる優しそうな目と赤い唇が、ほんのりと滲んで見えた。
撫でるように髪を梳かれて、おでこに唇が乗せられる。じわりと伝わる熱を受けて、また泣きそうになった。
「………」
北野の手が夏樹の顎を捉え、今度は唇に、触れるだけのキスをされた。
「──お前が好きだ」
「………」
ぼそりと囁き、再び唇に触れてすぐ離れてゆく熱に、夏樹は思わず手を伸ばす。
「……俺も。俺も……す、」
途端、噛み付くようなキスに言葉が飲み込まれた。抱きしめる北野の腕に力がこもると、甘苦しい感覚がどくりと、緩い痛みを伴って体中に広がった。
頭を掻き抱かれて、夏樹は北野の腕にしがみつく。お互いを求めるような熱を伴う口づけに気が遠くなりかけた頃、北野はそっと唇を離した。
「っ、……」
目を開けた夏樹は、息を呑む。
さっきまで優しかった北野の瞳が、深く濃く、明らかな欲情を湛えて揺れていた。
抱きしめる北野の腕の中で、夏樹は久しぶりに泣いた。
ずっと心の奥底にしまい込んで忘れたつもりの思い出は、取り出した途端に、じくりと心を痛くした。もう平気の筈だからと笑い話にするつもりだった夏樹は、当てが外れた情けなさで一杯だ。
「……ちょっと……酔っ払ってんのかな。はは……ごめん」
背中をぽんぽんとあやすように叩かれて、夏樹は熱い顔を北野の胸に埋める。こんなことなら、言い訳にできるくらい飲んでおけば良かった。残念ながら、今日はほとんど飲んでいない。
背中を優しく叩いていた北野の手は、するすると撫でる仕草に変わっていた。その手はやがて、肩を撫で、愛おしそうに髪を撫でる。
「お前は、頑張ってきたんだな」
「………」
掠れるような北野の甘い声に、涙がほろ、と頬を伝った。
泣かないままに無意識に頑張っていた子供の頃を、夏樹は辛いと思ったことはない。それでも、気軽に口に出せないくらいには胸に押し込めていたのだろう。
そんな子供の頃の経験は、本人も気付かないままに心に傷を残してしまう。
ふぅ、と深く息を吐くと、夏樹は北野の胸から顔を離した。
「……ごめん。もう大丈夫」
見上げる夏樹の濡れた目元を、北野の温かい指がそっと拭う。自分を見つめる優しそうな目と赤い唇が、ほんのりと滲んで見えた。
撫でるように髪を梳かれて、おでこに唇が乗せられる。じわりと伝わる熱を受けて、また泣きそうになった。
「………」
北野の手が夏樹の顎を捉え、今度は唇に、触れるだけのキスをされた。
「──お前が好きだ」
「………」
ぼそりと囁き、再び唇に触れてすぐ離れてゆく熱に、夏樹は思わず手を伸ばす。
「……俺も。俺も……す、」
途端、噛み付くようなキスに言葉が飲み込まれた。抱きしめる北野の腕に力がこもると、甘苦しい感覚がどくりと、緩い痛みを伴って体中に広がった。
頭を掻き抱かれて、夏樹は北野の腕にしがみつく。お互いを求めるような熱を伴う口づけに気が遠くなりかけた頃、北野はそっと唇を離した。
「っ、……」
目を開けた夏樹は、息を呑む。
さっきまで優しかった北野の瞳が、深く濃く、明らかな欲情を湛えて揺れていた。
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