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楓が、にっこり笑って首を傾げる。
「小川さん、今日何の撮影なん? 撮影現場、見学してもええ?」
「いいけど……デートなんじゃないの?」
「そんなん冗談に決まってるやん。俺、小川さんの仕事場見てみたいわぁ」
小川にすり寄った楓が、北野を振り返った。
「って、ことやから。ゆりちゃん、ごめんなぁ? ここから別行動や」
「……しょうがないな」
一瞬眉をひそめた北野は、軽くため息をつく。そんな北野の様子に、小川の口角は緩やかに上がった。
「百合親君、何だか申し訳ないね。そっちの君も、また機会があったらよろしくね」
小川はどこか勝ち誇ったように言うと、楓を腕にくっつけて、上機嫌で去って行った。
夏樹は、不安げに北野を見る。
「ね、ねぇ。今の人、何? 楓さん、ほっといて大丈夫なの?」
「ああ……」
2人の後ろ姿を苦しげに見送る北野は、角を曲がる小川がちらりとこちらを振り返るのを見届けてから、にっと笑った。
「今の人は、プロデューサーの小川さんだ。楓とは何度も仕事してるよ、俺も面識がある」
「プロデューサー」
「楓に気があるんだよ、追いかけ回してる」
「え、そんな人について行って大丈夫なの?」
「平気だよ。さっきも楓に、合わせろって合図されたからな。駅のデジタルサイネージは、でかいからなぁ」
どうやら北野の腕を解く際に、服を引っ張って何やら合図を送ったらしい。これまでにも、似たようなことはあったようだ。
「デジタル……?」
「駅によくある、液晶のポスターだよ」
それならもちろん見たことがある。昨日京都駅に着いた時も、トップ女優がドライヤー片手に髪を靡かせ微笑んでいた。
「小川さんもゲーム感覚で楽しんでるんだよ。まぁ、楓に対しては本気みたいだけどな。お陰で、俺は目の敵だ」
くくっと笑う北野は、少し悪い顔になった。
「楓はああ見えて、したたかだからな。今度の仕事も取ってくるよ」
「っ、」
……芸能人って、ほんと怖い。
「ほら、楓のことはもういいから、映画村を回ろうか? 来たかったんだろう?」
「──うん!」
優しい顔で微笑む北野に夏樹も笑顔で頷くと、2人して江戸の町に足を踏み出したのだった。
「小川さん、今日何の撮影なん? 撮影現場、見学してもええ?」
「いいけど……デートなんじゃないの?」
「そんなん冗談に決まってるやん。俺、小川さんの仕事場見てみたいわぁ」
小川にすり寄った楓が、北野を振り返った。
「って、ことやから。ゆりちゃん、ごめんなぁ? ここから別行動や」
「……しょうがないな」
一瞬眉をひそめた北野は、軽くため息をつく。そんな北野の様子に、小川の口角は緩やかに上がった。
「百合親君、何だか申し訳ないね。そっちの君も、また機会があったらよろしくね」
小川はどこか勝ち誇ったように言うと、楓を腕にくっつけて、上機嫌で去って行った。
夏樹は、不安げに北野を見る。
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「ああ……」
2人の後ろ姿を苦しげに見送る北野は、角を曲がる小川がちらりとこちらを振り返るのを見届けてから、にっと笑った。
「今の人は、プロデューサーの小川さんだ。楓とは何度も仕事してるよ、俺も面識がある」
「プロデューサー」
「楓に気があるんだよ、追いかけ回してる」
「え、そんな人について行って大丈夫なの?」
「平気だよ。さっきも楓に、合わせろって合図されたからな。駅のデジタルサイネージは、でかいからなぁ」
どうやら北野の腕を解く際に、服を引っ張って何やら合図を送ったらしい。これまでにも、似たようなことはあったようだ。
「デジタル……?」
「駅によくある、液晶のポスターだよ」
それならもちろん見たことがある。昨日京都駅に着いた時も、トップ女優がドライヤー片手に髪を靡かせ微笑んでいた。
「小川さんもゲーム感覚で楽しんでるんだよ。まぁ、楓に対しては本気みたいだけどな。お陰で、俺は目の敵だ」
くくっと笑う北野は、少し悪い顔になった。
「楓はああ見えて、したたかだからな。今度の仕事も取ってくるよ」
「っ、」
……芸能人って、ほんと怖い。
「ほら、楓のことはもういいから、映画村を回ろうか? 来たかったんだろう?」
「──うん!」
優しい顔で微笑む北野に夏樹も笑顔で頷くと、2人して江戸の町に足を踏み出したのだった。
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