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夏樹は、神妙に頭を下げる北野と楓を交互に見た。
(え、何で? てか、俺が先に断ってるよね? 何で俺、可哀想な雰囲気になってんの?)
どうも腑に落ちない気持ちで、夏樹は反論を試みる。
「え、待って待って。違うから。違うよね?」
「すまなかった」
「堪忍したって」
「……えぇ」
尚も頭を下げる2人に、夏樹はどっと脱力する。もう、どっちでもいい。
「……てか、気にしてないから。大丈夫です。ほんとに」
「そうか」
北野がほっとした様子で眉を下げ、楓も『妹の失態を詫びる兄』の顔で頷いた。
よくよく話を聞くと、美弥子が夏樹に熱を上げていたのは事実なのだが、ほんの1週間前に人数合わせで出席した合コンで出会った男性と図らずも意気投合してしまったらしい。
しかし、その頃には水面下で夏樹との見合い話は進められていて、とても言い出せなかった美弥子は、見合い当日になって彼と逃亡した。
障害があればある程、愛は燃えるという。
無理矢理させられそうな見合いから彼女を救い出すのなら劇的だが、そもそもこの見合いは彼女が望んだものだということを、その彼は知っているのだろうか。
「おとん、ここ1週間は海外視察に出てたから美弥子と話してなかってん。ゆりちゃんのメールも見てへんみたいやったで」
「何だ、そうなのか」
リビングに座り直した3人は、北野が淹れてくれたお茶でようやくひと息つく。楓が、『ゆりちゃんの淹れてくれたお茶美味しい』と笑顔になった。
「美弥子とはしばらく会ってないが、そんなに惚れっぽかったとは意外だな」
「うーん。あいつずっと女子校やったやろ? 最近目覚めたっぽい」
「人騒がせな奴だな」
「ほんまやで。しばらく外出禁止やろな、おとんブチ切れとったから」
きっと世間知らずなお嬢さんが、のぼせ上がっちゃったんだろうな。そう考えると、少し気の毒な気もする夏樹だった。
(え、何で? てか、俺が先に断ってるよね? 何で俺、可哀想な雰囲気になってんの?)
どうも腑に落ちない気持ちで、夏樹は反論を試みる。
「え、待って待って。違うから。違うよね?」
「すまなかった」
「堪忍したって」
「……えぇ」
尚も頭を下げる2人に、夏樹はどっと脱力する。もう、どっちでもいい。
「……てか、気にしてないから。大丈夫です。ほんとに」
「そうか」
北野がほっとした様子で眉を下げ、楓も『妹の失態を詫びる兄』の顔で頷いた。
よくよく話を聞くと、美弥子が夏樹に熱を上げていたのは事実なのだが、ほんの1週間前に人数合わせで出席した合コンで出会った男性と図らずも意気投合してしまったらしい。
しかし、その頃には水面下で夏樹との見合い話は進められていて、とても言い出せなかった美弥子は、見合い当日になって彼と逃亡した。
障害があればある程、愛は燃えるという。
無理矢理させられそうな見合いから彼女を救い出すのなら劇的だが、そもそもこの見合いは彼女が望んだものだということを、その彼は知っているのだろうか。
「おとん、ここ1週間は海外視察に出てたから美弥子と話してなかってん。ゆりちゃんのメールも見てへんみたいやったで」
「何だ、そうなのか」
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「美弥子とはしばらく会ってないが、そんなに惚れっぽかったとは意外だな」
「うーん。あいつずっと女子校やったやろ? 最近目覚めたっぽい」
「人騒がせな奴だな」
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