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北野に何か探られていることは知っていたが、そんな理由だとは予想外だった。川原にしても北條にしても、あちこちで自分のことを調べられていたことに、今更ながら驚いてしまう。
だが、夏樹だって北野のことを桑原に調べてもらっていたのだから、おあいこなのかもしれない。
「それでだな、杉本のことを勧めておけば──」
「……美弥子さん、だっけ。もしかして、俺に押し付けようとしてたの?」
北野が送っていたメールを思い出す。初めの2通は、やたらと自分のことを褒めてあった。できれば結婚したくないと言うなら、そういうことではないのか。
じとりと視線を投げると、北野はひくりと喉を震わせた。
「人聞きの悪い。美弥子は、いい奴だぞ。それに杉本は逆玉に乗りたいんだろう? 美弥子は会長のお気に入りだぞ」
「っ!」
夏樹は、思わずカッとなった。
「誰に聞いたのそれ! 昔ちょっと言っただけの冗談だし! そっちこそ人聞き悪いよっ」
「そうなのか? 俺は別に悪いと思わないけどな、逆玉の輿。野心があるなら、利用できるものはすればいい」
「……結婚って、そういうものじゃ、ないと思う。……たぶん」
家同士の繋がりで婚約するような家柄だと、考え方も違うのだろうか。夏樹が何となく言い淀んだところで、再び声がかかり、部屋の襖が開いた。先程お茶を淹れてくれた男性だ。
「失礼します。お料理、お持ちしました。お話もあるやろから、いっぺんにお出しするようにてマスターが」
男性のあとに女性スタッフも一緒に入り、手際良く配膳がされる。やはり流れるように料理の説明をした男性は、にこりとお辞儀をして下がっていった。
北野が徳利を持ち上げ、夏樹に向ける。夏樹は、無言で首を振った。
「いけるくちだろう。ここの酒も、美味いぞ」
「……俺、酒癖悪いんで」
「っ、」
北野が目を見開いて、しまった、という顔をする。
「いや、違うんだ! そうじゃない、そんなこと思っていない。さっきの話だが、杉本はだめなことに気付いたから、逆に諦めてもらおうと……」
「? だめなことって?」
「そりゃ……だめだろう。杉本は、俺と同じだろう?」
「同じ?」
夏樹は不思議そうに、北野を見る。
北野がため息をついて、徳利を置いた。
「俺は、女は無理だ。杉本も、そうだろう」
「えっ」
夏樹は、これでもかと目を見開く。
──今、なんつった?
だが、夏樹だって北野のことを桑原に調べてもらっていたのだから、おあいこなのかもしれない。
「それでだな、杉本のことを勧めておけば──」
「……美弥子さん、だっけ。もしかして、俺に押し付けようとしてたの?」
北野が送っていたメールを思い出す。初めの2通は、やたらと自分のことを褒めてあった。できれば結婚したくないと言うなら、そういうことではないのか。
じとりと視線を投げると、北野はひくりと喉を震わせた。
「人聞きの悪い。美弥子は、いい奴だぞ。それに杉本は逆玉に乗りたいんだろう? 美弥子は会長のお気に入りだぞ」
「っ!」
夏樹は、思わずカッとなった。
「誰に聞いたのそれ! 昔ちょっと言っただけの冗談だし! そっちこそ人聞き悪いよっ」
「そうなのか? 俺は別に悪いと思わないけどな、逆玉の輿。野心があるなら、利用できるものはすればいい」
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「失礼します。お料理、お持ちしました。お話もあるやろから、いっぺんにお出しするようにてマスターが」
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北野が徳利を持ち上げ、夏樹に向ける。夏樹は、無言で首を振った。
「いけるくちだろう。ここの酒も、美味いぞ」
「……俺、酒癖悪いんで」
「っ、」
北野が目を見開いて、しまった、という顔をする。
「いや、違うんだ! そうじゃない、そんなこと思っていない。さっきの話だが、杉本はだめなことに気付いたから、逆に諦めてもらおうと……」
「? だめなことって?」
「そりゃ……だめだろう。杉本は、俺と同じだろう?」
「同じ?」
夏樹は不思議そうに、北野を見る。
北野がため息をついて、徳利を置いた。
「俺は、女は無理だ。杉本も、そうだろう」
「えっ」
夏樹は、これでもかと目を見開く。
──今、なんつった?
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