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「楓さんのこと、悪くなんて思ってないから。……ちょっと、ふざけただけなんだろうし」
ふざけたというレベルではなかったのだが、楓の北野に対する想いを考えると、少し気の毒な気持ちも湧いてくる。
「すまないな」
情けなさそうに笑う北野に、夏樹は首を振って微笑んだのだった。
それからは、他愛のない話に花が咲いた。
楓が出演したテレビを見ていなかった北野だが、普段からあまりテレビを見る習慣がないらしい。それは昔からだそうで、先日楓が会社に来た時の騒ぎを見てその知名度に改めて驚いたそうだ。
大学生の頃などはノリで騒がれていただけと思っていたそうで、実際こんなに有名だとは思わなかったと言う北野に、いとこなのに何故知らないんだと逆に驚く夏樹だった。
美味しい料理に、美味しいお酒。
窓から見えるキラキラと瞬く夜景が色濃くなる頃には、夏樹は気持ち良く酔いが回っていた。昼を食べていなくて、空腹に飲んだことも悪い。
「──それでだな、杉本。お前には話しておきたいことがあるんだが」
「……うん」
ひとしきり話をしたあと、北野がおもむろに箸を置いた。
「今日来てもらったのは、楓のことだけじゃないんだ。話っていうのはな……杉本?」
「………はぃ?」
「まさか、酔ってるのか?」
「………まさか」
「酔ってるだろう」
目の縁を赤く染めてにっこり笑う夏樹に、北野が小さく息を吐いた。
「話したいことがあったんだが……まぁいい。次の機会に、話すよ」
「……うん。ふふ」
北野が手を伸ばして、夏樹の持っている酒をそっと取り上げ、ひと息で飲み干す。
「はは、男前」
「っ、」
へらりと笑って首を傾げる夏樹に、北野が目を細める。
「……お前なあ」
「あつ」
店員が置いた湯呑みを両手で持って口をつけた夏樹が、ふぅと息を吹きかける。
「それ飲んだら、行くか」
「うん」
夏樹は、嬉しそうに夜景を見下ろす。そしてゆっくりと、北野を見た。
「北野さん。今日は、楽しかった」
ふざけたというレベルではなかったのだが、楓の北野に対する想いを考えると、少し気の毒な気持ちも湧いてくる。
「すまないな」
情けなさそうに笑う北野に、夏樹は首を振って微笑んだのだった。
それからは、他愛のない話に花が咲いた。
楓が出演したテレビを見ていなかった北野だが、普段からあまりテレビを見る習慣がないらしい。それは昔からだそうで、先日楓が会社に来た時の騒ぎを見てその知名度に改めて驚いたそうだ。
大学生の頃などはノリで騒がれていただけと思っていたそうで、実際こんなに有名だとは思わなかったと言う北野に、いとこなのに何故知らないんだと逆に驚く夏樹だった。
美味しい料理に、美味しいお酒。
窓から見えるキラキラと瞬く夜景が色濃くなる頃には、夏樹は気持ち良く酔いが回っていた。昼を食べていなくて、空腹に飲んだことも悪い。
「──それでだな、杉本。お前には話しておきたいことがあるんだが」
「……うん」
ひとしきり話をしたあと、北野がおもむろに箸を置いた。
「今日来てもらったのは、楓のことだけじゃないんだ。話っていうのはな……杉本?」
「………はぃ?」
「まさか、酔ってるのか?」
「………まさか」
「酔ってるだろう」
目の縁を赤く染めてにっこり笑う夏樹に、北野が小さく息を吐いた。
「話したいことがあったんだが……まぁいい。次の機会に、話すよ」
「……うん。ふふ」
北野が手を伸ばして、夏樹の持っている酒をそっと取り上げ、ひと息で飲み干す。
「はは、男前」
「っ、」
へらりと笑って首を傾げる夏樹に、北野が目を細める。
「……お前なあ」
「あつ」
店員が置いた湯呑みを両手で持って口をつけた夏樹が、ふぅと息を吹きかける。
「それ飲んだら、行くか」
「うん」
夏樹は、嬉しそうに夜景を見下ろす。そしてゆっくりと、北野を見た。
「北野さん。今日は、楽しかった」
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