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楓が、何やら悪そうな顔で笑っている。きれいな顔でにやにやと見られて、夏樹は目が泳いだ。
「ええやろ? な、一緒に行こ」
「え、で、でも……」
思いがけない展開に夏樹がおろおろしていると、北野が軽くため息をついた。
「しょーがねーな。杉本、良かったら一緒にどうだ?」
「えっ? ……あ、……えと」
「はい決まり! ほら、行くでぇ」
他意などなさそうに気軽に誘ってくる北野に、夏樹がどうしたものかと言葉を濁していると、楓が半ば強引に決めてしまった。
楓を先頭に廊下に出ると、途端に黄色い声に包まれる。そういえば、こちらに来る前に席に行ったと言っていたので、その存在はバレてしまっているようだ。
「──ほら。お前が来ると、迷惑がかかるんだよ」
「えー、ええやん。もう今日帰るんやし」
北野と話しながらも楓は前回と同じように、にこにこと周りに手を振りながら応えている。その2人の後ろを、夏樹は居心地悪そうについて行った。
人だかりの中でエレベーターを待っていると、離れたところから開発チームの男性の声が聞こえてきた。
「あ! 北野さん! ちょっと!」
男性は北野に呼びかけながら、人を掻き分け近付いてくる。
「良かった、捕まえた! あのさ、今日で製品テスト終了だよね? ちょっと見て欲しいものがあるんだけど、来てくれないかな?」
お昼にごめんね、と手を合わせながら北野を見ている。
「今ですか?」
「ごめん、すぐ済むから!」
「……わかりました。楓、先に行っててくれるか?」
「ええよー。ごゆっくり」
「悪いな、杉本。あとで行くから」
「あ、いえ……」
北野が開発の男性に連れて行かれるのと同時に、エレベーターが到着する。開いた扉の中、既に乗っていた数人が、三國楓の姿にぎょっとして後退った。
「はいはい、ごめんねー」
楓が夏樹の腕を掴んで、ぐいと引っ張り中に入る。
一緒に乗り込もうとした女性社員の前でさっと体の向きを変えると、夏樹の体を盾にするように、ずいと扉近くに押し出した。
「はーい、ここまで! ご飯食べてくるから、また今度ねー」
「えー!」
黄色いブーイングに、何故か楓が夏樹の手首を掴んで、ゆらゆらと無理矢理手を振らされる。扉が閉まる寸前に見えたのは、女性社員たちが夏樹に向けた、殺気のこもった視線だった。
「ええやろ? な、一緒に行こ」
「え、で、でも……」
思いがけない展開に夏樹がおろおろしていると、北野が軽くため息をついた。
「しょーがねーな。杉本、良かったら一緒にどうだ?」
「えっ? ……あ、……えと」
「はい決まり! ほら、行くでぇ」
他意などなさそうに気軽に誘ってくる北野に、夏樹がどうしたものかと言葉を濁していると、楓が半ば強引に決めてしまった。
楓を先頭に廊下に出ると、途端に黄色い声に包まれる。そういえば、こちらに来る前に席に行ったと言っていたので、その存在はバレてしまっているようだ。
「──ほら。お前が来ると、迷惑がかかるんだよ」
「えー、ええやん。もう今日帰るんやし」
北野と話しながらも楓は前回と同じように、にこにこと周りに手を振りながら応えている。その2人の後ろを、夏樹は居心地悪そうについて行った。
人だかりの中でエレベーターを待っていると、離れたところから開発チームの男性の声が聞こえてきた。
「あ! 北野さん! ちょっと!」
男性は北野に呼びかけながら、人を掻き分け近付いてくる。
「良かった、捕まえた! あのさ、今日で製品テスト終了だよね? ちょっと見て欲しいものがあるんだけど、来てくれないかな?」
お昼にごめんね、と手を合わせながら北野を見ている。
「今ですか?」
「ごめん、すぐ済むから!」
「……わかりました。楓、先に行っててくれるか?」
「ええよー。ごゆっくり」
「悪いな、杉本。あとで行くから」
「あ、いえ……」
北野が開発の男性に連れて行かれるのと同時に、エレベーターが到着する。開いた扉の中、既に乗っていた数人が、三國楓の姿にぎょっとして後退った。
「はいはい、ごめんねー」
楓が夏樹の腕を掴んで、ぐいと引っ張り中に入る。
一緒に乗り込もうとした女性社員の前でさっと体の向きを変えると、夏樹の体を盾にするように、ずいと扉近くに押し出した。
「はーい、ここまで! ご飯食べてくるから、また今度ねー」
「えー!」
黄色いブーイングに、何故か楓が夏樹の手首を掴んで、ゆらゆらと無理矢理手を振らされる。扉が閉まる寸前に見えたのは、女性社員たちが夏樹に向けた、殺気のこもった視線だった。
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