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「──なぁ、何やってんの?」
いきなり聞こえた不機嫌そうな声に夏樹が驚いて顔を上げると、そこには黒っぽい服装をした三國楓が、ドアのへりに手をかけ険しい顔をして立っていた。
夏樹と目が合うと、茶色い髪をさらりと掻き上げ、じろりと睨む。
「だから、いきなり来るなよな、楓」
北野が呆れたような声を出すが、その目は優しそうに笑っていた。
「だって席に行ったら、こっちやって言われたんやもん」
北野が顔を上げた途端に雰囲気を和らげた楓は、すたすたと近寄って来た。そして、北野の肩に腕を回しながら、パソコンを覗くように顔を近付ける。
「まだ終われへんの? もうお昼休みやろ?」
「え? もうそんな時間か」
北野が自身の腕時計に目を落とし、夏樹もパソコンに表示されている時間にようやく気が付いた。
「あ、もうお昼過ぎてる。すみません、気付かなかった」
プログラムを終了して片付けに入る夏樹を、楓が冷めた目で見る。
「ふーん。時間も忘れるくらい、2人で仲良くお仕事してたん」
「え?」
思わず顔を上げる夏樹に、北野が苦笑した。
「何言ってんだ。それで、お前は何しに来たんだ?」
北野の問いかけに、楓はパッと笑顔になる。
「あっ、そうやねん! ランチ! ランチに誘いに来てん」
楓が、嬉しそうに北野の腕を引いた。
「ランチ?」
「うん。俺、今日帰らなあかんようなったから、その前にゆりちゃんとご飯食べよ思て」
「今日帰るのか?」
「そうやねんー、明日朝からあっちで撮影や。もっとゆっくりしたかったのに」
楓が口を尖らせる。
「ははっ、頑張って稼げ。そうか、それなら近場でいいか? ここの上のラウンジで良かったら奢ってやるよ」
「ほんま!? ぜんぜんええよぉ。ほら、早よ行こ」
「はいはい」
パソコンの電源を落とした北野が、席を立つ。立ち上がった北野の隣で、楓は、にぃっと口端を上げて夏樹を見た。
「──せや。夏樹クンも一緒にどお? 俺、夏樹クンともお話したいわぁ」
「えっ」
立ち上がりかけた夏樹は、一瞬固まった。
いきなり聞こえた不機嫌そうな声に夏樹が驚いて顔を上げると、そこには黒っぽい服装をした三國楓が、ドアのへりに手をかけ険しい顔をして立っていた。
夏樹と目が合うと、茶色い髪をさらりと掻き上げ、じろりと睨む。
「だから、いきなり来るなよな、楓」
北野が呆れたような声を出すが、その目は優しそうに笑っていた。
「だって席に行ったら、こっちやって言われたんやもん」
北野が顔を上げた途端に雰囲気を和らげた楓は、すたすたと近寄って来た。そして、北野の肩に腕を回しながら、パソコンを覗くように顔を近付ける。
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「え?」
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「何言ってんだ。それで、お前は何しに来たんだ?」
北野の問いかけに、楓はパッと笑顔になる。
「あっ、そうやねん! ランチ! ランチに誘いに来てん」
楓が、嬉しそうに北野の腕を引いた。
「ランチ?」
「うん。俺、今日帰らなあかんようなったから、その前にゆりちゃんとご飯食べよ思て」
「今日帰るのか?」
「そうやねんー、明日朝からあっちで撮影や。もっとゆっくりしたかったのに」
楓が口を尖らせる。
「ははっ、頑張って稼げ。そうか、それなら近場でいいか? ここの上のラウンジで良かったら奢ってやるよ」
「ほんま!? ぜんぜんええよぉ。ほら、早よ行こ」
「はいはい」
パソコンの電源を落とした北野が、席を立つ。立ち上がった北野の隣で、楓は、にぃっと口端を上げて夏樹を見た。
「──せや。夏樹クンも一緒にどお? 俺、夏樹クンともお話したいわぁ」
「えっ」
立ち上がりかけた夏樹は、一瞬固まった。
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