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桑原は飲んでいた味噌汁から、意外そうに目を上げた。
「え、結構話してるじゃん。じゃあ、どんな話? 何の調査してるって?」
「いや、それ以上は……」
「何だよ、肝心なとこ聞けてねーの。ま、簡単に言う訳ないか。でもさ、お前にとって悪くない話って……やっぱ北條の幹部候補じゃねーの?」
「だから、それはねーって」
桑原が、にやにやと笑った。
「ま、どっちにしろ調査中なら、お前も心してその北野って奴と付き合った方がいいな。どう転ぶか分かんねーぞ」
「そんな風に構えるつもりねーけど。北野さん、普通にいい人だし」
「甘いって! 俺は怪しいと思うぞ、その北野って奴。個人情報抜かれてるんだからな、お前」
「……それはそうだけど」
少し歩み寄れたことで横に置いてしまっていたが、確かにメールは気がかりだった。
──『杉本君について』
これについては、何も解決していない。
「引き続き、メールはチェックしといた方がいいぞ」
「うん……でもさ、北野さんは、悪い人じゃないと思う」
「はいはい。今度、俺にも紹介してよ、その北野さん。ランチに連れてきたら?」
「あー、ランチは上のラウンジでとってるって言ってた」
「えっ、そうなの? さすが本社組は違うねー。あそこのランチって、3、4千円するぞ」
「うわ、高っ」
ちなみに社員食堂は、ビル内のオフィス勤務者には社員割引が適用されるので、どのメニューも安価だ。A定食に至っては、メインのおかずに副菜、味噌汁に漬物までついてワンコイン、500円である。税込みだ。
「住む世界が違うねー。杉本もそうなっちゃうのかな。俺、さみしー」
「んな訳ねーだろ」
「え、可哀想な俺におかずをくれるのか? ありがとう」
「あっ、俺の好物っ……」
桑原が、夏樹の皿からナスの天ぷらをひょいと攫って口に入れる。
「ひでぇ」
「ははっ、旨い旨い」
代わりに夏樹が桑原の皿から容赦なくエビの天ぷらを奪う。割に合わねぇと嘆く桑原と笑い合いながら、ランチタイムは過ぎていった。
「え、結構話してるじゃん。じゃあ、どんな話? 何の調査してるって?」
「いや、それ以上は……」
「何だよ、肝心なとこ聞けてねーの。ま、簡単に言う訳ないか。でもさ、お前にとって悪くない話って……やっぱ北條の幹部候補じゃねーの?」
「だから、それはねーって」
桑原が、にやにやと笑った。
「ま、どっちにしろ調査中なら、お前も心してその北野って奴と付き合った方がいいな。どう転ぶか分かんねーぞ」
「そんな風に構えるつもりねーけど。北野さん、普通にいい人だし」
「甘いって! 俺は怪しいと思うぞ、その北野って奴。個人情報抜かれてるんだからな、お前」
「……それはそうだけど」
少し歩み寄れたことで横に置いてしまっていたが、確かにメールは気がかりだった。
──『杉本君について』
これについては、何も解決していない。
「引き続き、メールはチェックしといた方がいいぞ」
「うん……でもさ、北野さんは、悪い人じゃないと思う」
「はいはい。今度、俺にも紹介してよ、その北野さん。ランチに連れてきたら?」
「あー、ランチは上のラウンジでとってるって言ってた」
「えっ、そうなの? さすが本社組は違うねー。あそこのランチって、3、4千円するぞ」
「うわ、高っ」
ちなみに社員食堂は、ビル内のオフィス勤務者には社員割引が適用されるので、どのメニューも安価だ。A定食に至っては、メインのおかずに副菜、味噌汁に漬物までついてワンコイン、500円である。税込みだ。
「住む世界が違うねー。杉本もそうなっちゃうのかな。俺、さみしー」
「んな訳ねーだろ」
「え、可哀想な俺におかずをくれるのか? ありがとう」
「あっ、俺の好物っ……」
桑原が、夏樹の皿からナスの天ぷらをひょいと攫って口に入れる。
「ひでぇ」
「ははっ、旨い旨い」
代わりに夏樹が桑原の皿から容赦なくエビの天ぷらを奪う。割に合わねぇと嘆く桑原と笑い合いながら、ランチタイムは過ぎていった。
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