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◆
「おはようございまーす」
週明けの月曜日、夏樹はいつものように出勤した。
「おはよう」
隣の席で先に出勤していた北野が、しっかりとこちらを見て挨拶を返す。これまでと違う反応に、夏樹は嬉しくて、ぱっと笑顔になった。
「北野さん、この前の飲み会、楽しかったよね! また行きましょうよ」
荷物を置きながらにこにこと話しかける夏樹に、パーティションの向こう側から阪木の苦笑いが聞こえてきた。
「杉本ぉ。お前、北野君に謝っておいた方がいいぞ。飲み会の後半ずっと絡んでたの、覚えてる?」
「えっ、そんなに絡んでました? 俺」
全く覚えていない様子の夏樹に、阪木が呆れた声を出す。
「お前、北野君のほっぺたつねって『もっと笑えー』って絡みまくってたの、ほんとに覚えてないの?」
「嘘っ!?」
ばっと振り向く夏樹に、北野が自身の頬を撫でていた。
「帰ったら、頬が赤くなってたな」
「えぇっ、マジでぇ? ……うぅ、すみません」
やたらと楽しかったのは覚えているが、実は最後の方の記憶が曖昧だった。そんな状態でも帰宅できたのだから、帰巣本能とは素晴らしい。翌朝、ちゃんと自分のベッドで目が覚めたから、大丈夫だろうと思っていた。
ただ、朝になってポケットに入れていた筈のスマートフォンがどうしても見当たらなくて、結構捜した。……何故か、冷蔵庫に入っていた。
「楽しい酒だったから構わないが……まぁ、飲み過ぎには注意することだな」
「………」
穏やかな表情で微笑む北野に、夏樹は一瞬見とれてしまった。隣の席から、こんなに優しい表情で話しかけられるなんて、これまでなかった。
「? 杉本?」
「あ、うん……気を付けます」
柔らかい表情の北野に、夏樹の心はふわふわと嬉しくなる。
「よーし、じゃあ朝のミーティングするぞー、集まれー」
「はーい」
阪木の呼びかけにチームのメンバーが集まる。上昇していく気分に、夏樹の足取りは軽かった。
「おはようございまーす」
週明けの月曜日、夏樹はいつものように出勤した。
「おはよう」
隣の席で先に出勤していた北野が、しっかりとこちらを見て挨拶を返す。これまでと違う反応に、夏樹は嬉しくて、ぱっと笑顔になった。
「北野さん、この前の飲み会、楽しかったよね! また行きましょうよ」
荷物を置きながらにこにこと話しかける夏樹に、パーティションの向こう側から阪木の苦笑いが聞こえてきた。
「杉本ぉ。お前、北野君に謝っておいた方がいいぞ。飲み会の後半ずっと絡んでたの、覚えてる?」
「えっ、そんなに絡んでました? 俺」
全く覚えていない様子の夏樹に、阪木が呆れた声を出す。
「お前、北野君のほっぺたつねって『もっと笑えー』って絡みまくってたの、ほんとに覚えてないの?」
「嘘っ!?」
ばっと振り向く夏樹に、北野が自身の頬を撫でていた。
「帰ったら、頬が赤くなってたな」
「えぇっ、マジでぇ? ……うぅ、すみません」
やたらと楽しかったのは覚えているが、実は最後の方の記憶が曖昧だった。そんな状態でも帰宅できたのだから、帰巣本能とは素晴らしい。翌朝、ちゃんと自分のベッドで目が覚めたから、大丈夫だろうと思っていた。
ただ、朝になってポケットに入れていた筈のスマートフォンがどうしても見当たらなくて、結構捜した。……何故か、冷蔵庫に入っていた。
「楽しい酒だったから構わないが……まぁ、飲み過ぎには注意することだな」
「………」
穏やかな表情で微笑む北野に、夏樹は一瞬見とれてしまった。隣の席から、こんなに優しい表情で話しかけられるなんて、これまでなかった。
「? 杉本?」
「あ、うん……気を付けます」
柔らかい表情の北野に、夏樹の心はふわふわと嬉しくなる。
「よーし、じゃあ朝のミーティングするぞー、集まれー」
「はーい」
阪木の呼びかけにチームのメンバーが集まる。上昇していく気分に、夏樹の足取りは軽かった。
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