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立ち上がってみると、一瞬くらりとして思ったより酒が回っていたことに気が付いた。
(……やべ。ちょっと飲みすぎたかも)
酒の強い阪木につられて、ペースが上がっていたかもしれない。
(ま、明日は休みだし、いっか)
今日の会は飲み放題だ。ふわふわと気分のいい夏樹は、休み前を言い訳に次はハイボールにしよう、と思いながらトイレに向かう。
用を足して戻ってみると、女性陣が阪木の周辺に移動していた。
「可愛い!」
「阪木さん、ぜんぜん似てないー」
どうやら夏樹が回避した、娘の写真鑑賞会が始まったらしい。阪木が鼻の下を伸ばしながら、デレデレとスマートフォンを操作している。
元の席を女性陣に占領され、夏樹は北野の隣に腰を下ろした。
「北野さん、お疲れ様ー」
今まさに腰を浮かそうとしていた北野は、さり気なく座り直した。
「なーに? もしかして帰ろうとしてました?」
「……いや」
「そう? 何飲んでます? あ、俺もハイボール! すみませーん」
北野の飲んでいるハイボールを見た夏樹が、通りかかった店員に注文を通す。やってきたグラスをカチンと北野のグラスに当てて、早速ごくりと喉に通した。
「北野さん、モテモテでしたねー」
「……俺じゃなくて、楓がな」
北野が苦笑して、グラスに口をつけた。酒のせいか少し砕けた北野の雰囲気に、夏樹は気軽に話しかける。
「ねぇねぇ、北野さんって」
「楓のことならさっきさんざん話したから、知りたいことはあの子たちに聞いてくれ」
夏樹の言葉を遮った北野の視線が、うんざりしたように女性社員たちに向いた。
「あはは、だよねー」
阪木の周りでは今度は男性社員のペット自慢が始まったようで、トイプードルの写真に女性陣が食いついていた。
「でもさ、すごく仲良さそうでしたよね、三國楓……さんと」
つい呼び捨てにしそうになり、知り合いらしいことを思い出して敬称を付ける。
「ああ。まぁ、そうだな」
ふと緩んだ北野の目元に、昨日感じたもやもやとした不快感が、夏樹の心にじわりと蘇った。
「悪いが、サインは断ってる。きりがないからな」
口角を上げつつ釘を刺す北野に、夏樹の眉間に力が入る。
「サインはいらないし」
込み上げるもやもやを飲み下すように、夏樹はハイボールをごくごくとあおった。さっきまでの気分が一転、何故か、そこはかとなく腹が立つような気がする。
(……やべ。ちょっと飲みすぎたかも)
酒の強い阪木につられて、ペースが上がっていたかもしれない。
(ま、明日は休みだし、いっか)
今日の会は飲み放題だ。ふわふわと気分のいい夏樹は、休み前を言い訳に次はハイボールにしよう、と思いながらトイレに向かう。
用を足して戻ってみると、女性陣が阪木の周辺に移動していた。
「可愛い!」
「阪木さん、ぜんぜん似てないー」
どうやら夏樹が回避した、娘の写真鑑賞会が始まったらしい。阪木が鼻の下を伸ばしながら、デレデレとスマートフォンを操作している。
元の席を女性陣に占領され、夏樹は北野の隣に腰を下ろした。
「北野さん、お疲れ様ー」
今まさに腰を浮かそうとしていた北野は、さり気なく座り直した。
「なーに? もしかして帰ろうとしてました?」
「……いや」
「そう? 何飲んでます? あ、俺もハイボール! すみませーん」
北野の飲んでいるハイボールを見た夏樹が、通りかかった店員に注文を通す。やってきたグラスをカチンと北野のグラスに当てて、早速ごくりと喉に通した。
「北野さん、モテモテでしたねー」
「……俺じゃなくて、楓がな」
北野が苦笑して、グラスに口をつけた。酒のせいか少し砕けた北野の雰囲気に、夏樹は気軽に話しかける。
「ねぇねぇ、北野さんって」
「楓のことならさっきさんざん話したから、知りたいことはあの子たちに聞いてくれ」
夏樹の言葉を遮った北野の視線が、うんざりしたように女性社員たちに向いた。
「あはは、だよねー」
阪木の周りでは今度は男性社員のペット自慢が始まったようで、トイプードルの写真に女性陣が食いついていた。
「でもさ、すごく仲良さそうでしたよね、三國楓……さんと」
つい呼び捨てにしそうになり、知り合いらしいことを思い出して敬称を付ける。
「ああ。まぁ、そうだな」
ふと緩んだ北野の目元に、昨日感じたもやもやとした不快感が、夏樹の心にじわりと蘇った。
「悪いが、サインは断ってる。きりがないからな」
口角を上げつつ釘を刺す北野に、夏樹の眉間に力が入る。
「サインはいらないし」
込み上げるもやもやを飲み下すように、夏樹はハイボールをごくごくとあおった。さっきまでの気分が一転、何故か、そこはかとなく腹が立つような気がする。
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