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それから、果敢にも女性陣の中に入っていく後輩社員らを夏樹が見送った頃を見計らって、阪木が優しく声をかけてきた。
「それで、杉本は? 何か最近あるんじゃないの?」
「え? あー……えーと」
ひと息ついてチューハイをごくりと飲み、夏樹はそれとなく北野の様子を窺う。後輩たちも入り、どうやら新たな盛り上がりを見せていた。北野は、たまに愛想笑いをする程度で、あまり笑っていないが。
「あの……うちの会社、買収されるって本当ですか?」
少し顔を寄せて、小声で囁く。
このくらいは、噂を聞いたという範囲で言ってもいいだろう、そう判断して思い切って聞いてみた。
「あー、やっぱり噂になってる? だよなぁ。うーん、杉本ならいいかぁ……うん、そうなんだよね。一応、まだ内緒ね」
阪木は人差し指を口元に当てて、目を細めた。
「どこに買収されるか、聞いた?」
「……北條、ですか?」
「うん、そうらしい。ま、あそこに狙われたら仕方ないよね。たぶん、近いうちに公表されると思うから」
夏樹は、もう一度北野の様子をちらりと見る。こちらを気にしていないことを確認して、そっと問いかけた。
「あの、それで……大幅にリストラ、とか」
「え、まさか! それは聞いてないよ? 何、そんな噂も出てるの?」
「あ、いや、もしかしてって思って……」
「なーにー、お前そんなこと心配して、ここんとこおかしかったの? 心配性だねー」
阪木がカラカラと笑って、夏樹の肩を叩いた。
「そんなことにはならないから、安心してくれ。何だよ、そんなことかぁ」
阪木は、彼なりに夏樹を心配してくれていたようだ。
リストラのことは、査定を含めて何も知らなそうな様子に、これ以上の詮索はやめておこうと思った。
「──でさ、これちょっと見てくれる? 昨日撮った娘の寝顔なんだけどね」
「あ。ちょっとトイレ」
「えぇっ、見てから行けよぉ」
阪木のポケットからスマートフォンが出された瞬間、席を立つ夏樹に非難の声が上がるが、お構いなしにトイレに行く夏樹だった。
「それで、杉本は? 何か最近あるんじゃないの?」
「え? あー……えーと」
ひと息ついてチューハイをごくりと飲み、夏樹はそれとなく北野の様子を窺う。後輩たちも入り、どうやら新たな盛り上がりを見せていた。北野は、たまに愛想笑いをする程度で、あまり笑っていないが。
「あの……うちの会社、買収されるって本当ですか?」
少し顔を寄せて、小声で囁く。
このくらいは、噂を聞いたという範囲で言ってもいいだろう、そう判断して思い切って聞いてみた。
「あー、やっぱり噂になってる? だよなぁ。うーん、杉本ならいいかぁ……うん、そうなんだよね。一応、まだ内緒ね」
阪木は人差し指を口元に当てて、目を細めた。
「どこに買収されるか、聞いた?」
「……北條、ですか?」
「うん、そうらしい。ま、あそこに狙われたら仕方ないよね。たぶん、近いうちに公表されると思うから」
夏樹は、もう一度北野の様子をちらりと見る。こちらを気にしていないことを確認して、そっと問いかけた。
「あの、それで……大幅にリストラ、とか」
「え、まさか! それは聞いてないよ? 何、そんな噂も出てるの?」
「あ、いや、もしかしてって思って……」
「なーにー、お前そんなこと心配して、ここんとこおかしかったの? 心配性だねー」
阪木がカラカラと笑って、夏樹の肩を叩いた。
「そんなことにはならないから、安心してくれ。何だよ、そんなことかぁ」
阪木は、彼なりに夏樹を心配してくれていたようだ。
リストラのことは、査定を含めて何も知らなそうな様子に、これ以上の詮索はやめておこうと思った。
「──でさ、これちょっと見てくれる? 昨日撮った娘の寝顔なんだけどね」
「あ。ちょっとトイレ」
「えぇっ、見てから行けよぉ」
阪木のポケットからスマートフォンが出された瞬間、席を立つ夏樹に非難の声が上がるが、お構いなしにトイレに行く夏樹だった。
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