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「お前、ほんとに相変わらずだな。……ははっ」
夏樹が妙なところに感心していると、ふいに北野が笑い出し、楓の頭をくしゃりと撫でた。
(え……)
ドキリとして、北野の顔に釘付けになる。笑った顔を、初めて見た。
眼鏡を外していたので、目元の表情もはっきりと見える。二重の切長の目が細められ、目尻に微かな皺が寄っていた。口角が持ち上がり、並びのいい白い歯がくっきり見える。バランスのいい顔だと思っていたが、笑うとそれが更に際立つ。初めて見た北野の笑顔は──想像以上に、きれいだった。
(……こんな風に笑うんだ)
楽しそうに笑う北野に、楓もにこにこと嬉しそうにしている。2人でしばらく談笑したあと、北野は席を立った。
「ほら、行くぞ。お前がいたら目立ってしょうがない」
北野は言いながら、デスクの上をさっと片付ける。見ると、遠巻きながらかなりの人数が集まってきていた。
行こうとする北野の腕を、楓が掴む。
「あっ、待って。ちゃうねん──なぁ、杉本夏樹って、どの子? 俺、その子に会いに来てん」
「えっ」
後半はひそっと囁いた楓だが、真横にいた夏樹には、はっきり聞こえてしまった。驚いた声に、楓が振り返る。
「ん? もしかして、きみ? きみが、杉本夏樹クン?」
「え……そう、ですけど……あの」
「えー、きみがそうなん? うそぉ、ほんまぁ? 何てゆうか……フツー」
「っ、あの」
「あっ、別に悪い意味ちゃうで! ちょおっと思てたんと違ごたから……ふーん」
じろじろと見られて、途端に居心地が悪くなる。
北野が、楓を促した。
「ほら、もういいだろう。行くぞ」
「待って、もうちょいええやろ? だってほら、未来の──」
「楓、」
「あーはいはい。じゃあまたねー、夏樹クン」
楓は、ひらひらと気安く手を振りながら、北野と共にその場をあとにした。黄色い悲鳴と共にざわめきが離れていく。
ようやくオフィスがいつもの雰囲気を取り戻した頃、夏樹の心には、楓のこともさることながら、北野の笑顔がしこりのように残った。
夏樹が妙なところに感心していると、ふいに北野が笑い出し、楓の頭をくしゃりと撫でた。
(え……)
ドキリとして、北野の顔に釘付けになる。笑った顔を、初めて見た。
眼鏡を外していたので、目元の表情もはっきりと見える。二重の切長の目が細められ、目尻に微かな皺が寄っていた。口角が持ち上がり、並びのいい白い歯がくっきり見える。バランスのいい顔だと思っていたが、笑うとそれが更に際立つ。初めて見た北野の笑顔は──想像以上に、きれいだった。
(……こんな風に笑うんだ)
楽しそうに笑う北野に、楓もにこにこと嬉しそうにしている。2人でしばらく談笑したあと、北野は席を立った。
「ほら、行くぞ。お前がいたら目立ってしょうがない」
北野は言いながら、デスクの上をさっと片付ける。見ると、遠巻きながらかなりの人数が集まってきていた。
行こうとする北野の腕を、楓が掴む。
「あっ、待って。ちゃうねん──なぁ、杉本夏樹って、どの子? 俺、その子に会いに来てん」
「えっ」
後半はひそっと囁いた楓だが、真横にいた夏樹には、はっきり聞こえてしまった。驚いた声に、楓が振り返る。
「ん? もしかして、きみ? きみが、杉本夏樹クン?」
「え……そう、ですけど……あの」
「えー、きみがそうなん? うそぉ、ほんまぁ? 何てゆうか……フツー」
「っ、あの」
「あっ、別に悪い意味ちゃうで! ちょおっと思てたんと違ごたから……ふーん」
じろじろと見られて、途端に居心地が悪くなる。
北野が、楓を促した。
「ほら、もういいだろう。行くぞ」
「待って、もうちょいええやろ? だってほら、未来の──」
「楓、」
「あーはいはい。じゃあまたねー、夏樹クン」
楓は、ひらひらと気安く手を振りながら、北野と共にその場をあとにした。黄色い悲鳴と共にざわめきが離れていく。
ようやくオフィスがいつもの雰囲気を取り戻した頃、夏樹の心には、楓のこともさることながら、北野の笑顔がしこりのように残った。
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