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◇
夏樹は動揺が隠せないまま社員食堂に行き、A定食を注文する。
窓際のテーブル席には、定位置のように桑原が座っていた。夏樹が近付くと、行儀悪く、食べている箸をひょいと上げて挨拶をする。
「おう、お疲れ。……どした?」
トレーを置きつつきょろきょろと周りを気にする夏樹に、桑原が不思議そうな顔をする。
「桑原……俺、怖い」
「は?」
席に着いた夏樹は、さっき見たメールの内容と写真のことを話した。さすがの桑原も眉間に皺を寄せ、箸を置いて腕を組んだ。隠し撮りとは、穏やかではない。
「場所はたぶん、ここだと思う。そこのカーテン写ってたから。北野さんはこっち来てないと思うから、誰かに頼んで撮ってもらったとか……なぁ、近くで写真撮ってる奴なんて、いたっけ」
「うーん……最近なんだろうけど……分からないな」
桑原も周りをぐるりと見渡した。どのテーブルも和やかに食事をしている。この食堂は複数の会社の社員が出入りするので、知らない顔が大半だ。
「それにさ、メールの内容って一応褒めてんだけど……身長、1センチ修正されてたりすんの、何か怖い。彼女いないのは話したけどさ、猫好きって何で知ってんの?」
「確かに不気味ではあるよな。何かのターゲットにされてるんだろうけど、それがいい方向なのか……」
「え、待って。もしかして、悪い方向もあんの? ターゲットって、何?」
既に泣きそうになっている夏樹を見て、桑原が腕組みを解いて苦笑する。
「落ち着けって。褒められてんだから、基本悪い方には転ばないと思うけどな……あ、それで例の三國は分かったぞ。北條ホールディングスの専務取締役の1人だった。三國雅晴」
「そうなんだ」
メールアドレスは、名前を再度確認して桑原に伝えてあった。アドレスのMIKUNIの前には、MASAHARUと入っていた。今日のメールも、同一人物宛だった。
「北條の専務に俺の写真送ってんの? 何で?」
「うーん……」
A定食の豚のしょうが焼きを前に、深々と考え込む2人だった。
夏樹は動揺が隠せないまま社員食堂に行き、A定食を注文する。
窓際のテーブル席には、定位置のように桑原が座っていた。夏樹が近付くと、行儀悪く、食べている箸をひょいと上げて挨拶をする。
「おう、お疲れ。……どした?」
トレーを置きつつきょろきょろと周りを気にする夏樹に、桑原が不思議そうな顔をする。
「桑原……俺、怖い」
「は?」
席に着いた夏樹は、さっき見たメールの内容と写真のことを話した。さすがの桑原も眉間に皺を寄せ、箸を置いて腕を組んだ。隠し撮りとは、穏やかではない。
「場所はたぶん、ここだと思う。そこのカーテン写ってたから。北野さんはこっち来てないと思うから、誰かに頼んで撮ってもらったとか……なぁ、近くで写真撮ってる奴なんて、いたっけ」
「うーん……最近なんだろうけど……分からないな」
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「それにさ、メールの内容って一応褒めてんだけど……身長、1センチ修正されてたりすんの、何か怖い。彼女いないのは話したけどさ、猫好きって何で知ってんの?」
「確かに不気味ではあるよな。何かのターゲットにされてるんだろうけど、それがいい方向なのか……」
「え、待って。もしかして、悪い方向もあんの? ターゲットって、何?」
既に泣きそうになっている夏樹を見て、桑原が腕組みを解いて苦笑する。
「落ち着けって。褒められてんだから、基本悪い方には転ばないと思うけどな……あ、それで例の三國は分かったぞ。北條ホールディングスの専務取締役の1人だった。三國雅晴」
「そうなんだ」
メールアドレスは、名前を再度確認して桑原に伝えてあった。アドレスのMIKUNIの前には、MASAHARUと入っていた。今日のメールも、同一人物宛だった。
「北條の専務に俺の写真送ってんの? 何で?」
「うーん……」
A定食の豚のしょうが焼きを前に、深々と考え込む2人だった。
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