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北條ホールディングスには黒い噂が絶えない。世事には疎い夏樹だが、合法ぎりぎりのことをしているくらいは耳にすることがあった。もちろん、実際のところは分からないが。
手元のレンゲで炒飯を掻き寄せながら、少し考える。
「まぁ、確かにイメージはあんま良くないかなぁ……あっ、社名変わるのかな? 俺、サクラオフィスって名前、結構気に入ってんだけど」
「サクラオフィスはそれなりのブランドになってるから、社名は残すんじゃねーの……って、そんな呑気な話じゃなくて」
桑原は再度周りを見渡して、体を寄せる。
「──誰にも言うなよ。大幅にリストラされるって話だ」
「えっ、嘘」
初めて、夏樹のレンゲを持つ手が止まった。
「リストラ? マジで?」
「もう既に、リストラ対象者の査定が始まってるって噂だ」
「えぇー」
夏樹は嫌そうに眉間に皺を寄せると、小さく息を吐いた。
「それってさぁ、あれだろ? 定年間近の人間ばっか切るんだろ? ひでー話だな」
またもぐもぐと炒飯を食べ始めた夏樹に、桑原は呆れを通り越して憐れむような目を向けた。
「お前さぁ、うちの会社の平均年齢知ってる? 60オーバーなんて数える程しかいねーし、みんな重役だぜ? さすがにそこは切れねーだろ」
サクラオフィスは平均年齢が40代の、若者が中心の会社だ。夏樹も、それが魅力の1つで入社を希望したのだった。
「え、じゃあ、リストラ対象者って……」
「少なくとも、年齢は関係ねぇと俺は思う」
「………」
再びレンゲを置いた夏樹に、桑原が続ける。
「それでな、こっからが重要だ。どうも、本社から査定の人間が既にこっちに来てるらしいんだよ。それもお前んとこの製品サポートに。……北野悠里って奴、知ってる?」
「え」
「人事の人に聞いたんだけど、本社から異動してきた奴って、最近だとそいつ1人だけらしい。こんな中途半端な時期に異動なんておかしいし、十中八九、リストラ査定で来たんだろうって」
「……リストラ査定……」
夏樹は、あと半分残っている炒飯から完全に手を引いた。
手元のレンゲで炒飯を掻き寄せながら、少し考える。
「まぁ、確かにイメージはあんま良くないかなぁ……あっ、社名変わるのかな? 俺、サクラオフィスって名前、結構気に入ってんだけど」
「サクラオフィスはそれなりのブランドになってるから、社名は残すんじゃねーの……って、そんな呑気な話じゃなくて」
桑原は再度周りを見渡して、体を寄せる。
「──誰にも言うなよ。大幅にリストラされるって話だ」
「えっ、嘘」
初めて、夏樹のレンゲを持つ手が止まった。
「リストラ? マジで?」
「もう既に、リストラ対象者の査定が始まってるって噂だ」
「えぇー」
夏樹は嫌そうに眉間に皺を寄せると、小さく息を吐いた。
「それってさぁ、あれだろ? 定年間近の人間ばっか切るんだろ? ひでー話だな」
またもぐもぐと炒飯を食べ始めた夏樹に、桑原は呆れを通り越して憐れむような目を向けた。
「お前さぁ、うちの会社の平均年齢知ってる? 60オーバーなんて数える程しかいねーし、みんな重役だぜ? さすがにそこは切れねーだろ」
サクラオフィスは平均年齢が40代の、若者が中心の会社だ。夏樹も、それが魅力の1つで入社を希望したのだった。
「え、じゃあ、リストラ対象者って……」
「少なくとも、年齢は関係ねぇと俺は思う」
「………」
再びレンゲを置いた夏樹に、桑原が続ける。
「それでな、こっからが重要だ。どうも、本社から査定の人間が既にこっちに来てるらしいんだよ。それもお前んとこの製品サポートに。……北野悠里って奴、知ってる?」
「え」
「人事の人に聞いたんだけど、本社から異動してきた奴って、最近だとそいつ1人だけらしい。こんな中途半端な時期に異動なんておかしいし、十中八九、リストラ査定で来たんだろうって」
「……リストラ査定……」
夏樹は、あと半分残っている炒飯から完全に手を引いた。
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