ある日、私は事故で死んだ───はずなのに、目が覚めたら事故の日の朝なんですけど!?

ねーさん

文字の大きさ
上 下
21 / 80

20

しおりを挟む
20

のために東国に来るのを拒んだのか?ウォルター」
「従兄弟殿が我が国とこの国との友好よりも優先した女なのだからどんな絶世の美女かと想像していたのだがな」
 夜、アイリスはベッドの中でラウルの言った台詞を思い出した。
 ウォルター殿下は「東国へ行きたくなかったから伯爵家の令嬢を娶る事にした」って言われてたわよね?
 でもラウル殿下の言い方だと、お姉様と結婚したかったから東国へ行くのが嫌だったって事になる。
 つまりウォルター殿下は以前からお姉様を好きだったって事…?

 ツキンッ。
 小さくアイリスの胸が痛む。
 もしかしたら本音と建前で、東国へはそう説明していたってだけかも。
 けど…ウォルター殿下、お姉様の事をずっと好きだったのかも知れないんだ。

-----

 晩餐会での席次は夫婦や婚約者やパートナーでも隣の席にはならないし、男性同士、女性同士が隣の席になる事はない。
 それは知ってたけど…何で私の隣がステファン殿下なの!?
 晩餐会、始まって随分経つし、隣の席の人と何も喋らないままなのも変よね?
 反対隣の公爵様とはどうにか世間話くらいはできたんだし…
 アイリスは自分の隣の席に座る第二王子ステファンを視線だけで見る。
 濃い紫の短い髪、同じく濃い紫の瞳、意志の強そうな眉のステファンは、ウォルターとは違う雰囲気を纏っていた。

「…何だ?」
 アイリスの視線を感じたのか、ステファンが前を向いたまま、小声で言う。
 ひゃ!視線だけで見てたつもりだったけど気付かれたわ。
「いえ…」
 アイリスは小さく首を横に振って俯いた。
「ウォルターの婚約者殿は相変わらず歯切れが悪いな」
 ステファンがほんの少し口角を上げて言う。
 え?ステファン殿下が「相変わらず」って言われる程お姉様とステファン殿下って話す機会があったの?
 そりゃ弟の婚約者なんだから挨拶したりはあるだろうけど…
 お姉様からもウォルター殿下からもステファン殿下の事は聞いてないから、お姉様とどの程度話したりする間柄なのかわからないし、迂闊な返答はできないわ。

「母親の企みに乗った結果、どうやら賭けには負けたようだな」
 ステファンはアイリスの方を見ずに小声で言った。
「!」
 …え?賭け!?
 思わずステファンの方を見るアイリス。
 ウォルターが少し離れた席からステファンを見るアイリスを見ている。
「そう睨むな。私はお前に同情しているのだからな」
「……」
 お、お前って…王子と伯爵令嬢って身分差があるにしても、王子が伯爵令嬢に「お前」って言うなんて、何だかすごく近しい関係みたいな感じがするけど…?

 いやいや、それより、同情しているって言われたわよね?ステファン殿下がお姉様に同情?
 そもそも賭けって何?ドリアーヌ様が言った「賭け」と同じ「賭け」?
 同じだとしたら、ドリアーヌ様とステファン殿下に何か繋がりがあるの?側妃様方の親戚とか?
 それに…母親の企みに乗った…?
 母親ってお義母様の事?
「企み…?」
 ぐるぐると考えていたアイリスが思わず小さく呟くと、ステファンが少し不思議そうな表情でアイリスを見た。
 あ、いけない。
 ここで私が「企みって何?」「賭けって何?」って顔をしたら、私が、当然話しが通じる筈のヴィクトリアじゃないと気付かれてしまう。
 でも何がなんだかわからないから「話しが通じてます」って顔もできないし…でも何か言わなくちゃ。

「何故…私が賭けに負けたと思われたのですか?」
 アイリスは意を決してステファンを見ながら言う。
「それはお前がにいるからだ」
 わかり切った事を、と言うような口調でステファンは言った。
 ここ?
 ここって晩餐会の事?

 アイリスがステファンの言葉の意味をどう聞こうかと考えていると、給仕が料理を持って来たので、そこで会話をする空気が切れてしまう。
 そしてそのままステファンと話す機会がないまま晩餐会はつつがなく終了した。









しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

【完結】失いかけた君にもう一度

暮田呉子
恋愛
偶然、振り払った手が婚約者の頬に当たってしまった。 叩くつもりはなかった。 しかし、謝ろうとした矢先、彼女は全てを捨てていなくなってしまった──。

とまどいの花嫁は、夫から逃げられない

椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ 初夜、夫は愛人の家へと行った。 戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。 「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」 と言い置いて。 やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に 彼女は強い違和感を感じる。 夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り 突然彼女を溺愛し始めたからだ ______________________ ✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定) ✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです ✴︎なろうさんにも投稿しています 私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。

松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。 そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。 しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。

私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜

月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。 だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。 「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。 私は心を捨てたのに。 あなたはいきなり許しを乞うてきた。 そして優しくしてくるようになった。 ーー私が想いを捨てた後で。 どうして今更なのですかーー。 *この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

【完結】新皇帝の後宮に献上された姫は、皇帝の寵愛を望まない

ユユ
恋愛
周辺諸国19国を統べるエテルネル帝国の皇帝が崩御し、若い皇子が即位した2年前から従属国が次々と姫や公女、もしくは美女を献上している。 既に帝国の令嬢数人と従属国から18人が後宮で住んでいる。 未だ献上していなかったプロプル王国では、王女である私が仕方なく献上されることになった。 後宮の余った人気のない部屋に押し込まれ、選択を迫られた。 欲の無い王女と、女達の醜い争いに辟易した新皇帝の噛み合わない新生活が始まった。 * 作り話です * そんなに長くしない予定です

【完結】あなたのいない世界、うふふ。

やまぐちこはる
恋愛
17歳のヨヌク子爵家令嬢アニエラは栗毛に栗色の瞳の穏やかな令嬢だった。近衛騎士で伯爵家三男、かつ騎士爵を賜るトーソルド・ロイリーと幼少から婚約しており、成人とともに政略的な結婚をした。 しかしトーソルドには恋人がおり、結婚式のあと、初夜を迎える前に出たまま戻ることもなく、一人ロイリー騎士爵家を切り盛りするはめになる。 とはいえ、アニエラにはさほどの不満はない。結婚前だって殆ど会うこともなかったのだから。 =========== 感想は一件づつ個別のお返事ができなくなっておりますが、有り難く拝読しております。 4万文字ほどの作品で、最終話まで予約投稿済です。お楽しみいただけましたら幸いでございます。

処理中です...