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エピローグ

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支度を終えたリネットの部屋へチャールズとエルが入って来る。
「まあ~リネットさん綺麗~!」
エルが歓声を上げる。
「うん。よく似合ってる」
チャールズもうんうんと頷く。
「そういえば、あの本、お兄様がセディに渡したんですって?」
リネットが言えば、チャールズは「あの本?」と呟き、すこし考えた後「ああ」と思い至ったようだ。
「そうそう。セドリックがリネットと婚約したいと言った時に渡したな。あの本、今はお前が持っているらしいな」
「何で知ってるの!?」

セドリックの部屋から本がなくなり、それを持ち去ったのがリネットだと気付いた時、セドリックはチャールズに恨み事を言いに行ったらしい。
「この世の終わりみたいな顔をして『最悪だ』って呟いてたぞ。『絶対誤解されてる』『リネットに嫌われた』って」
チャールズは面白そうに笑った。
「笑い事じゃないわよ」
「兄として、かわいい妹のためを思ってセドリックへ確認しただけじゃないか」
「かわいい妹とかわざとらしい」
リネットがチャールズを軽く睨むと
「セドリック程シスコンじゃないが、人並みに妹はかわいいと思ってるさ」
とチャールズはリネットの肩をポンと叩く。

またリネットの部屋のドアが開く。
「リネちゃんすごくかわいい!」
ミリアムがリネットの父と母と一緒に部屋へ入って来る。
「ミリアムもかわいい!」
ミリアムはフリルの付いた白いドレスに花冠姿だ。
「今日はベルガール、よろしくね」
「まっかせて!」
6歳になったミリアムは自分の胸を叩いた。

-----

「リリア大丈夫?」
リネットは部屋の隅のソファでぐったりするリリアに声を掛ける。
「うう、気持ち悪い…」
「顔色悪いわよ。無理しない方が良いんじゃない?」
ドレスの裾に気をつけながらリリアの反対側のソファへ座る。
「嫌だ~リネットの結婚式に私が出席できないなんて、絶対嫌だ~」
「悪阻なんだから仕方ないじゃない」
「仕方なくない~。大体兄様がさっさと結婚しないからいけないのよ!何で私の方が先に結婚してるの!?…うう」
リリアはガバリと身を起こして言うと、またへなへなとソファに横になる。
「地方に学校を造る事業が重なっちゃって忙しかったから…これこそ仕方ないわ。リリアは卒業してすぐ結婚したし。ハリジュ殿下も今日来て下さるんでしょ?」
「後で来られるわ。一緒に行くって朝も言われたけれど、殿下がおられるとリネットとゆっくり話せないんだもの」
リリアが唇を尖らせる。
「若くてかわいい奥さんが心配なのね」
リネットはクスクス笑う。リリアは照れながらぶつぶつ言っている。ハリジュは年下妻に過保護な夫らしい。

コンコンとノックの音がして、セドリックが入って来た。

リネットが立ち上がってセドリックを迎えると、セドリックはリネットのウェディングドレス姿を見て息を飲む。
「兄様フライングよ」
リリアが横になったまま言う。
花婿が花嫁の姿を見るのは、式場に花嫁が入場して来た時なのが慣例なのだ。
「うるさい」
セドリックはばつが悪そうに言うと、リネットの前に跪いた。
「セディ?」
「ちゃんとプロポーズしてなかったから」

そういえば「仕事がひと段落したから日取りを決めよう」って言われただけだったわ。
確かにあれはプロポーズではない、わね。

セドリックはリネットに手を差し伸べる。
「リネット、俺は小さい頃からずっと、この先もずっとリネットが好きだ。…だから俺とずっと一緒にいてください」
「はい」
セドリックらしいプロポーズに、リネットは微笑んでセドリックの手に自分の手を重ねた。


ーーFin
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