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パリヤの処遇を巡って議会が紛糾していた頃。

婚約破棄を言い渡されたショックで倒れたアリシアは、翌日目を覚まし、パリヤの様子を聞いて落ち込んでいたが、その三日後に父公爵の執務室を訪れ、父の眼前で高らかに宣言した。
「わたくしも『真実の愛』を貫きますわ!」

同じ頃、王宮では、セルダが頭を抱えていた。
「兄上…自分だけ『真実の愛』に目覚めるなんて…狡い…」

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結果、パリヤは王位継承権剥奪、王家から廃籍、将来的な王位継承への影響を避けるため、子供を作れないよう処置をされた上、少しの領地を与えられ爵位のない領主として僻地へ送られる事となった。
マリーナは男爵家から勘当され、修道院へ入る事に。
この修道院は一定の期間まじめに勤め、更に寄付金を収めれば出る事が出来るので、パリヤが領地で寄付金を貯め、数年~十年後くらいにはマリーナを娶ることができるだろう。

「王家の醜聞にしては軽い処分よね」
リリアがため息混じりに言えば、リネットは苦笑いするしかない。
実際、同じようなスキャンダルが起こった他国では、王太子は幽閉、相手の令嬢は処刑、などとなった事もあったのだから、何年か後には二人が結ばれる未来があるなど、ずいぶんと寛大な処分と言わざるを得ないだろう。

リリアとセルダ殿下との婚約はまだ解消されていないのよね。

夏季休暇が半分になった頃、リネットはリリアと共にゴルディ家の別荘にやって来た。
ゴルディ家の別荘へは夏季休暇にリリアは一カ月程度滞在し、リネットはその間の一週間くらい遊びに来るのが毎年の恒例行事だったが、今年は巷で噂話渦巻く王家の醜聞の当事者であるリリアを気遣い、ずっと一緒にいる事にしたのだ。

兄からの情報によると、セルダは王太子になる事を強硬に拒んでいるらしい。
王弟であるセルダの叔父ハリジュを王太子とし、アリシアと婚約を、と主張しているそうだ。

ハリジュ王弟殿下って確か30代半ばくらいだったわよね。アリシア様が18歳…貴族社会では歳の差のある結婚も珍しくはないとは言え、ちょっと離れすぎかしら。
それにハリジュ殿下は王位継承争いが起こらないように、そもそもご結婚する気がないって噂だし。

それにしてもセルダ殿下は何故そんなに王太子になりたくないのかしら?
リリアと婚約解消するのが嫌なのかしら?
…だとしたらリリアは愛されてて羨ましいかも。
セドリックも、私よりリリアの方が好きだものね…。

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「セドリック、何をそんなに苛立ってるんだ?」
「チャールズ兄さん」
王宮に勤める文官の使う食堂に昼食を摂りに来たチャールズは、手付かずの昼食のトレイを置いたまま目を瞑り、腕組みし苛々と指を動かすセドリックを見つけ、声を掛けながら向かいの席に座る。
セドリックは目を開け、兄と慕う幼なじみを認め息を吐いた。
「クソ王子を手を汚さずに抹殺する方法を考えていたんです」
小声で言うセドリックに思わず苦笑いするチャールズ。
「パリヤ殿下の事かい?…いやもう殿下じゃないか」
「そっちもですが、セルダ殿下もです」
「セルダ殿下も?」
「リリアと婚約している事がそもそも気に食わないのに、リリアとの婚約が解消されるかどうか曖昧な状態が続いているのも腹立たしい」
チャールズはふっと笑った。
「結局、セドリックはリリアと誰が婚約してもしなくても気に入らないんだろう?妹ってのはそんなにかわいいもんかねぇ」
クスクス笑いながら言うチャールズにセドリックは驚いた声を上げる。
「チャールズ兄さんはリネットがかわいくないのですか!?」
「うーん、かわいいと言えば、そりゃ妹だからかわいい。けど、誰と婚約しても結婚しても気に食わないって事はないなあ。現に私がセドリックに敵意を向けた事はないだろう?」
「…そうですね」
セドリックは納得いかない様子だがチャールズは面白そうに笑った。
「そもそもセドリックはリリアを結婚させず手元に置いて置きたいの?」
「うっ」
答えに詰まったセドリックは水を飲みながら視線を彷徨わせる。
「いずれは…それはしかるべき人と結婚して…でもまだ早い…」
ぶつぶつ言うセドリックに、チャールズは「これは重症だな。リネットも大変だ…」と小さく呟き、自身の妹の前途に思いを馳せた。
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