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部屋の前で、握っていた手を離すアレン。
パトリシアは、温もりがなくなってひんやりとする自分の手をもう一方の手で押さえた。
…困ったな。アレン殿下の手の感触を何かにつけて思い出しそうだわ。
アレンの侍従ジェイが開けてくれた扉の向こうに、ソファに横たわる長い髪の付け毛のアランが居た。
扉が閉まるのを待って、パトリシアはアランの元に小走りで駆け寄る。
アレンはそんなパトリシアを黙って見つめながらパトリシアと繋いでいた自分の手をぐっと握りしめた。
「何で横になってるの?アラン」
「パティ」
アランは起き上がると付け毛を取った。
「いやあ、ジェイが何だか疑いの目で見てるから、疲れたから少し休むって言って部屋から出てもらってたんだよ」
「確かにジェイと一緒にいたらすぐに見抜かれそう」
「だろ?」
パトリシアと話しながらアランは上着を脱ぐと、アレンに差し出した。 アレンも同じ様に上着を脱いでアランの着ていた物と交換する。よく見ると、二人は上着以外のシャツなどは同じ物を身に付けていた。
「アランとアレン殿下はよく入れ替わったりしてるの?」
「いや、随分久しぶりだなあ」
アランはそう言いながらソファから立ち上がって上着を着る。アレンが鬘を取ると長い髪がサラリと背中に落ちた。
「子供の頃以来じゃないか?段々と互いに個性が出て来て、見た目は瓜二つでも行動や言動で周りにわかってしまうから」
アレンが苦笑いしながら言う。
そっか。今は二人を見分けられるのも私だけじゃないのね。
「パトリシア」
アレンはパトリシアを呼ぶ。
「はい」
…パティって呼ばれるのも、アランの振りをしていた間だけ。
「今日は悪かったな」
「え?」
「アランとのお茶会のつもりで来たんだろうに…」
「いえ…」
苦笑いのアレン。
私はアレン殿下と昔みたいな口調で話せて楽しかったし、手を繋げて嬉しかった。でもアレン殿下にとっては「アランとして」不自然にならないようにそうしただけだもの、私の告白も聞いてるから、私が変な誤解しないよう釘を刺されたんだわ。
「じゃあ行こうかパティ」
「あ、うん」
アランに促されてアレンの部屋を出る。
これからどうするのかな?アランの部屋でお喋り…とか?
でも今日は何だか色々と心が辛くて…早く家に帰りたい…
「アラン、私、今日は疲れたから帰るわ。アランは薬草畑が気になってるんでしょ?」
「…わかる?」
「わかるわよ。学園の薬草畑にもほぼ毎日行ってるんじゃないの?」
「学園の方はライネルとロードと順番だから三日に一回だな」
ロードの名前が出て来て、パトリシアはハイネックの洋服に隠れた首筋に手をやる。
「…ロード様が薬草畑の手入れをするの?」
「ああ。夏季休暇になってから手伝ってもらってるんだ」
アランは私がロード様に薬を飲まされたの、知らないのね。そう言えばあの薬、アランが調合したって言ってたわ。
「アラン、独自で薬の調合とか…してるの?」
パトリシアがアランを窺うように言うと、アランは足を止めた。
「…急に、何で?」
「その反応はしてるのね?」
「……」
アランはパトリシアから目を逸らし、上を向いて唇を引き締めた。
嘘の吐けないアラン。こういう処が憎めないのよね…
「薬剤師の資格がない人が薬の調合するのは違法よね?」
「……」
「…資格を取るまでは露見しないように気を付けてよ」
ため息を吐きながら言うと、アランはホッとした様に破顔した。
-----
「ねぇライネル、この種を仕入れてよ」
「んあ…ロード…今言わなくても…」
四つん這いのライネルに背中から覆い被さって、ロードはライネルの耳元で言う。
「イキそう?ライネル」
息を乱してコクコクと頷くライネルの平らな胸板の突起を指で刺激しながら、屹立を握った手と、腰の動きを早くする。
「うあ!…あ…同時は…」
「何で?これ好きでしょ?」
「はっ。あっ…すぐ…イクから…」
「イッて良いよ。でもこの種仕入れるのは忘れちゃ駄目だからね」
「あ…わ、わかった…」
「ライネルは素直でかわいいなぁ」
ライネルの部屋の外に、立ち尽くすビビアンの姿があった。
中の会話は聞こえないが、物音と雰囲気で行われている行為を察する。
「坊っちゃんのご友人がお見えのようですよ」
さっき私が訪れた時、この家の家政婦がそう言った。
彼女がライネルの恋人である私に、事もなげに「友人」と言ったのは、その人が男性だからよ。きっと男同士でこんな事…考えてもいないんだわ。
そして変装していない限り今ここに居るのはアラン殿下ではないわ。あの紫の髪と瞳は誰が見ても王子だとわかるもの。
と言う事は、ここに居るのは…ロード・フェアリ。
「…許さないわ。ライネルも、ロードも」
ビビアンはそう呟いてライネルの部屋の扉を睨み付けた。
部屋の前で、握っていた手を離すアレン。
パトリシアは、温もりがなくなってひんやりとする自分の手をもう一方の手で押さえた。
…困ったな。アレン殿下の手の感触を何かにつけて思い出しそうだわ。
アレンの侍従ジェイが開けてくれた扉の向こうに、ソファに横たわる長い髪の付け毛のアランが居た。
扉が閉まるのを待って、パトリシアはアランの元に小走りで駆け寄る。
アレンはそんなパトリシアを黙って見つめながらパトリシアと繋いでいた自分の手をぐっと握りしめた。
「何で横になってるの?アラン」
「パティ」
アランは起き上がると付け毛を取った。
「いやあ、ジェイが何だか疑いの目で見てるから、疲れたから少し休むって言って部屋から出てもらってたんだよ」
「確かにジェイと一緒にいたらすぐに見抜かれそう」
「だろ?」
パトリシアと話しながらアランは上着を脱ぐと、アレンに差し出した。 アレンも同じ様に上着を脱いでアランの着ていた物と交換する。よく見ると、二人は上着以外のシャツなどは同じ物を身に付けていた。
「アランとアレン殿下はよく入れ替わったりしてるの?」
「いや、随分久しぶりだなあ」
アランはそう言いながらソファから立ち上がって上着を着る。アレンが鬘を取ると長い髪がサラリと背中に落ちた。
「子供の頃以来じゃないか?段々と互いに個性が出て来て、見た目は瓜二つでも行動や言動で周りにわかってしまうから」
アレンが苦笑いしながら言う。
そっか。今は二人を見分けられるのも私だけじゃないのね。
「パトリシア」
アレンはパトリシアを呼ぶ。
「はい」
…パティって呼ばれるのも、アランの振りをしていた間だけ。
「今日は悪かったな」
「え?」
「アランとのお茶会のつもりで来たんだろうに…」
「いえ…」
苦笑いのアレン。
私はアレン殿下と昔みたいな口調で話せて楽しかったし、手を繋げて嬉しかった。でもアレン殿下にとっては「アランとして」不自然にならないようにそうしただけだもの、私の告白も聞いてるから、私が変な誤解しないよう釘を刺されたんだわ。
「じゃあ行こうかパティ」
「あ、うん」
アランに促されてアレンの部屋を出る。
これからどうするのかな?アランの部屋でお喋り…とか?
でも今日は何だか色々と心が辛くて…早く家に帰りたい…
「アラン、私、今日は疲れたから帰るわ。アランは薬草畑が気になってるんでしょ?」
「…わかる?」
「わかるわよ。学園の薬草畑にもほぼ毎日行ってるんじゃないの?」
「学園の方はライネルとロードと順番だから三日に一回だな」
ロードの名前が出て来て、パトリシアはハイネックの洋服に隠れた首筋に手をやる。
「…ロード様が薬草畑の手入れをするの?」
「ああ。夏季休暇になってから手伝ってもらってるんだ」
アランは私がロード様に薬を飲まされたの、知らないのね。そう言えばあの薬、アランが調合したって言ってたわ。
「アラン、独自で薬の調合とか…してるの?」
パトリシアがアランを窺うように言うと、アランは足を止めた。
「…急に、何で?」
「その反応はしてるのね?」
「……」
アランはパトリシアから目を逸らし、上を向いて唇を引き締めた。
嘘の吐けないアラン。こういう処が憎めないのよね…
「薬剤師の資格がない人が薬の調合するのは違法よね?」
「……」
「…資格を取るまでは露見しないように気を付けてよ」
ため息を吐きながら言うと、アランはホッとした様に破顔した。
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「ねぇライネル、この種を仕入れてよ」
「んあ…ロード…今言わなくても…」
四つん這いのライネルに背中から覆い被さって、ロードはライネルの耳元で言う。
「イキそう?ライネル」
息を乱してコクコクと頷くライネルの平らな胸板の突起を指で刺激しながら、屹立を握った手と、腰の動きを早くする。
「うあ!…あ…同時は…」
「何で?これ好きでしょ?」
「はっ。あっ…すぐ…イクから…」
「イッて良いよ。でもこの種仕入れるのは忘れちゃ駄目だからね」
「あ…わ、わかった…」
「ライネルは素直でかわいいなぁ」
ライネルの部屋の外に、立ち尽くすビビアンの姿があった。
中の会話は聞こえないが、物音と雰囲気で行われている行為を察する。
「坊っちゃんのご友人がお見えのようですよ」
さっき私が訪れた時、この家の家政婦がそう言った。
彼女がライネルの恋人である私に、事もなげに「友人」と言ったのは、その人が男性だからよ。きっと男同士でこんな事…考えてもいないんだわ。
そして変装していない限り今ここに居るのはアラン殿下ではないわ。あの紫の髪と瞳は誰が見ても王子だとわかるもの。
と言う事は、ここに居るのは…ロード・フェアリ。
「…許さないわ。ライネルも、ロードも」
ビビアンはそう呟いてライネルの部屋の扉を睨み付けた。
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