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「俺を除く攻略対象者全員と、パトリシア、エリザベス、エドワードか」
アレンがアランの振りをしてパトリシアとお茶を飲みながら言う。
「ロード様が手を、出し…手を出したはちょっと違うけど、そんな感じの方?」
パトリシアが難しそうに言うと、アレンは小さく吹き出した。
「ふっ。そうだな」
「…おかしかった?」
「うん。でもまあこの場合、適切な言葉がないな」
クスクスと笑うアレン。
…私の告白、気にしてないみたいで良かった。
「残るはミッチェル・カークランド、ビビアン・ミルトン、ダニエル・デリンジャー、それにフレデリック兄さんか」
「でもデリンジャー先生はノックス先生とお付き合いしてるから、ロード様には地味に嫌がらせなさってて…とてもそんな雰囲気にはなりそうにないわ」
「嫌がらせ?」
「挙手してないのに当てたり、授業に出てるのに欠席にされたり、試験範囲の通知文書がロード様のだけ間違ってたり、ロード様が居なかった去年や一昨年の話題を授業中に出されたり…」
「…地味だな」
アレンは少し呆れた様に言う。
「ね?」
でも派手な嫌がらせは学園で問題になるかも知れないから、先生としては敢えてそうしてるのかもだけど。
「ビビアン様は最近ライネルさんが冷たくなったと言っておられましたけど、原因はロード様じゃなくてアランじゃないかって…」
「アラン?」
「仲が良すぎると」
「…何をしてるんだアランは」
呆れたように額を押さえるアレン。
「ライネルさんとは学園の花壇に植えた薬草の世話を一緒にしてるって言ってたけど」
「薬草か…」
何となく「じゃあ仕方ないな」と言う空気になる。
「お兄様は学園生じゃないし、接点がないわよね?」
「ゲームではヒロインが婚約者に近付いた事に対してフレデリック兄さんが立腹し、ヒロインの義父親の領地の課税を厳しくしたり、色々と圧迫するんだ。つまりロードとの直接の接点はなかったが…パトリシアやエリザベス、エドワードに近付いた処を見ると、今後はわからんな」
「ええ!?」
そう言えばお兄様は王城の文官だけど、貴族の領地管理の統括みたいなお仕事されてるんだったわ。
「お兄様、そんな事をして…大丈夫なの?」
「いや、私情でそんな事をして許される筈なく、この事が原因でフレデリック兄さんは最後に断罪されるんだ」
「それはそうなるわよね…」
「しかし、フレデリック兄さんには、俺が転生者なのも、ゲームの事も、ヒロインが婚約者に近付く事も話してある。だからそんな展開にはならないから安心しろ」
「え?お兄様はその事知ってるの?」
「ああ。ロード・フェアリが兄上に会いに来た後、兄上にフレデリック兄さんにも話しておけと言われて、話したんだ」
「じゃあ…レスター殿下も知って…」
「そうだな」
「そう…」
そうよね。王太子殿下がヒロインに籠絡されたら大変だもの。
でも…そっか。私にだけ話してくれたんじゃなかったのね…
「パティ?」
「あ、じゃあお兄様やレスター殿下がロード様に取り込まれる心配はないですね」
にっこりと笑って言う。
何だか私、自分がアレン殿下にとって特別な存在なんだといつの間にか勘違いしてたみたい。アレン殿下にとっては、私が幼なじみで弟の婚約者だから、予備知識なくヒロインに引っ掛かっては困るから話してくれただけなのに。
…特別なんて、恥ずかしい…酷い自惚れだわ。
-----
お茶会を終えて、二人でアレンの部屋へと向かう。
アレンの部屋では、アレンに扮したアランが待っているのだ。
「パティ。どうした?」
パトリシアの隣を歩くアレンが言う。
「え?」
「先程から…静かだ」
「そうかしら?」
俯いたまま苦笑いを浮かべる。
アレン殿下と並んで歩く機会なんてそうないのに…自分が恥ずかしくて顔が上げられない。
「俺が、パティを落ち込ませる様な事を言ったのか?」
「ううん。そんな事ない」
首を横に振る。
「…パティ」
アレンの手が伸びてきて、パトリシアの手をぎゅっと握った。
「!」
思わず顔を上げてアレンの方を見る。
「パティ。席替えとクラス替え、どちらが良い?」
アレンは優しく笑って言う。
「え?」
「もう二度と、あの男をパティに近付けない」
そう言い切るアレンは、笑顔だが、目が真剣だった。
幼なじみを心配してくれているのね。
「…せ、席替えで」
クラス替えなんて大掛かり過ぎる。とりあえず席が離れれば話す機会もなくなるだろうし…
「わかった」
そのまま、アレンの部屋まで手を繋いだままで歩いた。
「俺を除く攻略対象者全員と、パトリシア、エリザベス、エドワードか」
アレンがアランの振りをしてパトリシアとお茶を飲みながら言う。
「ロード様が手を、出し…手を出したはちょっと違うけど、そんな感じの方?」
パトリシアが難しそうに言うと、アレンは小さく吹き出した。
「ふっ。そうだな」
「…おかしかった?」
「うん。でもまあこの場合、適切な言葉がないな」
クスクスと笑うアレン。
…私の告白、気にしてないみたいで良かった。
「残るはミッチェル・カークランド、ビビアン・ミルトン、ダニエル・デリンジャー、それにフレデリック兄さんか」
「でもデリンジャー先生はノックス先生とお付き合いしてるから、ロード様には地味に嫌がらせなさってて…とてもそんな雰囲気にはなりそうにないわ」
「嫌がらせ?」
「挙手してないのに当てたり、授業に出てるのに欠席にされたり、試験範囲の通知文書がロード様のだけ間違ってたり、ロード様が居なかった去年や一昨年の話題を授業中に出されたり…」
「…地味だな」
アレンは少し呆れた様に言う。
「ね?」
でも派手な嫌がらせは学園で問題になるかも知れないから、先生としては敢えてそうしてるのかもだけど。
「ビビアン様は最近ライネルさんが冷たくなったと言っておられましたけど、原因はロード様じゃなくてアランじゃないかって…」
「アラン?」
「仲が良すぎると」
「…何をしてるんだアランは」
呆れたように額を押さえるアレン。
「ライネルさんとは学園の花壇に植えた薬草の世話を一緒にしてるって言ってたけど」
「薬草か…」
何となく「じゃあ仕方ないな」と言う空気になる。
「お兄様は学園生じゃないし、接点がないわよね?」
「ゲームではヒロインが婚約者に近付いた事に対してフレデリック兄さんが立腹し、ヒロインの義父親の領地の課税を厳しくしたり、色々と圧迫するんだ。つまりロードとの直接の接点はなかったが…パトリシアやエリザベス、エドワードに近付いた処を見ると、今後はわからんな」
「ええ!?」
そう言えばお兄様は王城の文官だけど、貴族の領地管理の統括みたいなお仕事されてるんだったわ。
「お兄様、そんな事をして…大丈夫なの?」
「いや、私情でそんな事をして許される筈なく、この事が原因でフレデリック兄さんは最後に断罪されるんだ」
「それはそうなるわよね…」
「しかし、フレデリック兄さんには、俺が転生者なのも、ゲームの事も、ヒロインが婚約者に近付く事も話してある。だからそんな展開にはならないから安心しろ」
「え?お兄様はその事知ってるの?」
「ああ。ロード・フェアリが兄上に会いに来た後、兄上にフレデリック兄さんにも話しておけと言われて、話したんだ」
「じゃあ…レスター殿下も知って…」
「そうだな」
「そう…」
そうよね。王太子殿下がヒロインに籠絡されたら大変だもの。
でも…そっか。私にだけ話してくれたんじゃなかったのね…
「パティ?」
「あ、じゃあお兄様やレスター殿下がロード様に取り込まれる心配はないですね」
にっこりと笑って言う。
何だか私、自分がアレン殿下にとって特別な存在なんだといつの間にか勘違いしてたみたい。アレン殿下にとっては、私が幼なじみで弟の婚約者だから、予備知識なくヒロインに引っ掛かっては困るから話してくれただけなのに。
…特別なんて、恥ずかしい…酷い自惚れだわ。
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お茶会を終えて、二人でアレンの部屋へと向かう。
アレンの部屋では、アレンに扮したアランが待っているのだ。
「パティ。どうした?」
パトリシアの隣を歩くアレンが言う。
「え?」
「先程から…静かだ」
「そうかしら?」
俯いたまま苦笑いを浮かべる。
アレン殿下と並んで歩く機会なんてそうないのに…自分が恥ずかしくて顔が上げられない。
「俺が、パティを落ち込ませる様な事を言ったのか?」
「ううん。そんな事ない」
首を横に振る。
「…パティ」
アレンの手が伸びてきて、パトリシアの手をぎゅっと握った。
「!」
思わず顔を上げてアレンの方を見る。
「パティ。席替えとクラス替え、どちらが良い?」
アレンは優しく笑って言う。
「え?」
「もう二度と、あの男をパティに近付けない」
そう言い切るアレンは、笑顔だが、目が真剣だった。
幼なじみを心配してくれているのね。
「…せ、席替えで」
クラス替えなんて大掛かり過ぎる。とりあえず席が離れれば話す機会もなくなるだろうし…
「わかった」
そのまま、アレンの部屋まで手を繋いだままで歩いた。
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