35 / 42
34
しおりを挟む
34
「…地味」
リザは学園の窓に写る自分を見て思わず呟いた。
「リザ?」
隣に写るステラはハッキリとした顔立ちの美人だ。
「いや~私みたいな地味なのが王子妃になって良いのか、改めて疑問が、ね。ステラみたいな美人さんなら良かったんだけど…」
「私だと文字通り『国庫を食い潰す気か』って批判されるわよ」
ぶふっとステラの後ろでジェイクが吹き出す。
「…ジェイク?」
ステラがジトリとジェイクを睨む。
「…いや、俺としてはステラが王子妃になったら困るから、ね?」
「ああ、早くもっと頭が良くて性格も良くて私を愛してくれるお婿さん候補が現れてくれないかしら?」
「待って待って、頭と性格はともかく、俺ほどステラを愛してるお婿さん候補はいないからね!」
「とてもそうは思えないけど?」
「愛してるかあ…」
「リザ?」
ジェイクをじっとり睨んでいたステラは、リザの呟きを聞いてリザへ視線を移す。
「私、ロイド殿下に『好き』とか『愛してる』とか言われた事ないのよね」
「そうなの?」
「そうなの」
ロイドは「リザの側にいたい」「リザが幸せになるのが見たい」「俺がリザを幸せにしたい」とは言うが「好き」とは言った事がない。
レイモンドに嫉妬したりする様子を見ると、好かれてるのかな、とリザも思うが、確信はないのだ。
「リザは?」
「え?」
「リザはロイド殿下に『好き』って言った事ある?…あれ?そもそもリザってロイド殿下を好きなの?」
ステラにそう言われて、リザは考える。
「…好き?かな?」
「かな?」
「…考えた事なかった」
「殿下もリザも、どっちもどっちよ。これは」
ステラは呆れたように笑った。
-----
「よっしゃ!」
新学年になって初めての考察で、リザは狙い通り一位を取った。貼り出された順位の書かれた紙を見て、リザは小さくガッツポーズをする。
「さすがリザね。一生懸命勉強してたものね」
「不正行為がないか、先生に側で見ててもらったしね」
「ステラ~俺今回三位なんだよー褒めてよぉ」
リザとステラの後ろからジェイクが言う。
「自己最高位ね。ジェイク、すごいわ」
「リザありがとう」
「…努力は認めるわ」
ステラはそう言うと、ジェイクの顔の前に三本の指を出した手を突き出す。
「三位以内」
「え?」
「最後の考査までずっと三位以内だったら、卒業パーティーでジェイクと二曲踊るわ」
「…本当!?ステラ!俺頑張るよ!」
ジェイクは満面の笑みでそう言った。
食堂で二人になった所でリザはステラに問い掛けた。
「ステラはジェイクを好きになったの?」
「…最近、ジェイクの人気が鰻登りなの、リザは知らないでしょう?ほら見て」
ステラが示す方を見ると、飲み物を買いに行ったジェイクが下級生らしき女生徒に話し掛けられていた。
「…鰻登りなの?」
「元々容姿もそこそこの男爵家の三男だから婿が欲しい令嬢からは注目浴びてたのよ。そこに成績も良いって言うのが加わって、貴族ではない女子からの人気も上がってるの」
「そうなんだ」
「…それで、ちょっと惜しくなっちゃってね」
リザはステラの顔を見てから、肘でステラの腕をつつく。
「照れ隠し?耳が赤いわよ」
「…もっと頭が良くて性格も良いお婿さん候補は居るだろうけど、私にあんなに一途なお婿さん候補は他に居ないんじゃないかと思って、惜しくなったの」
ジェイクは女生徒に丁寧に謝ってからこちらに戻って来る。
「モテるのね、ジェイク」
リザが言うと、飲み物を置きながらジェイクは不思議そうな顔をする。
「誰が?」
「ジェイクが」
「俺が?…確かに、最近よく話し掛けられるな、とは思うけど、モテてるのとは違うんじゃない?それに俺はステラ以外にモテても嬉しくないし」
ジェイクがさらりとそう言うと、リザは頷いた。
「なるほど」
こういう所ね。
ステラがサンドイッチを一切れ、ジェイクの方へ差し出す。
「ステラ?くれるの?」
ジェイクが聞くと、ステラは明後日の方を見ながら頷いた。
ジェイクはサンドイッチを両手に持ち、感無量の表情だ。
「…ステラが食べ物を分けてくれるなんて!これはもう求愛行動!」
「なっ何言うの!?返して!」
「もう食べた!」
ステラがジェイクの手からサンドイッチを奪い返そうとすると、ジェイクは避けてからパクリとそれを咥えた。
求愛行動とは、まんざら間違ってないな。と二人の様子を見てリザは思った。
「…地味」
リザは学園の窓に写る自分を見て思わず呟いた。
「リザ?」
隣に写るステラはハッキリとした顔立ちの美人だ。
「いや~私みたいな地味なのが王子妃になって良いのか、改めて疑問が、ね。ステラみたいな美人さんなら良かったんだけど…」
「私だと文字通り『国庫を食い潰す気か』って批判されるわよ」
ぶふっとステラの後ろでジェイクが吹き出す。
「…ジェイク?」
ステラがジトリとジェイクを睨む。
「…いや、俺としてはステラが王子妃になったら困るから、ね?」
「ああ、早くもっと頭が良くて性格も良くて私を愛してくれるお婿さん候補が現れてくれないかしら?」
「待って待って、頭と性格はともかく、俺ほどステラを愛してるお婿さん候補はいないからね!」
「とてもそうは思えないけど?」
「愛してるかあ…」
「リザ?」
ジェイクをじっとり睨んでいたステラは、リザの呟きを聞いてリザへ視線を移す。
「私、ロイド殿下に『好き』とか『愛してる』とか言われた事ないのよね」
「そうなの?」
「そうなの」
ロイドは「リザの側にいたい」「リザが幸せになるのが見たい」「俺がリザを幸せにしたい」とは言うが「好き」とは言った事がない。
レイモンドに嫉妬したりする様子を見ると、好かれてるのかな、とリザも思うが、確信はないのだ。
「リザは?」
「え?」
「リザはロイド殿下に『好き』って言った事ある?…あれ?そもそもリザってロイド殿下を好きなの?」
ステラにそう言われて、リザは考える。
「…好き?かな?」
「かな?」
「…考えた事なかった」
「殿下もリザも、どっちもどっちよ。これは」
ステラは呆れたように笑った。
-----
「よっしゃ!」
新学年になって初めての考察で、リザは狙い通り一位を取った。貼り出された順位の書かれた紙を見て、リザは小さくガッツポーズをする。
「さすがリザね。一生懸命勉強してたものね」
「不正行為がないか、先生に側で見ててもらったしね」
「ステラ~俺今回三位なんだよー褒めてよぉ」
リザとステラの後ろからジェイクが言う。
「自己最高位ね。ジェイク、すごいわ」
「リザありがとう」
「…努力は認めるわ」
ステラはそう言うと、ジェイクの顔の前に三本の指を出した手を突き出す。
「三位以内」
「え?」
「最後の考査までずっと三位以内だったら、卒業パーティーでジェイクと二曲踊るわ」
「…本当!?ステラ!俺頑張るよ!」
ジェイクは満面の笑みでそう言った。
食堂で二人になった所でリザはステラに問い掛けた。
「ステラはジェイクを好きになったの?」
「…最近、ジェイクの人気が鰻登りなの、リザは知らないでしょう?ほら見て」
ステラが示す方を見ると、飲み物を買いに行ったジェイクが下級生らしき女生徒に話し掛けられていた。
「…鰻登りなの?」
「元々容姿もそこそこの男爵家の三男だから婿が欲しい令嬢からは注目浴びてたのよ。そこに成績も良いって言うのが加わって、貴族ではない女子からの人気も上がってるの」
「そうなんだ」
「…それで、ちょっと惜しくなっちゃってね」
リザはステラの顔を見てから、肘でステラの腕をつつく。
「照れ隠し?耳が赤いわよ」
「…もっと頭が良くて性格も良いお婿さん候補は居るだろうけど、私にあんなに一途なお婿さん候補は他に居ないんじゃないかと思って、惜しくなったの」
ジェイクは女生徒に丁寧に謝ってからこちらに戻って来る。
「モテるのね、ジェイク」
リザが言うと、飲み物を置きながらジェイクは不思議そうな顔をする。
「誰が?」
「ジェイクが」
「俺が?…確かに、最近よく話し掛けられるな、とは思うけど、モテてるのとは違うんじゃない?それに俺はステラ以外にモテても嬉しくないし」
ジェイクがさらりとそう言うと、リザは頷いた。
「なるほど」
こういう所ね。
ステラがサンドイッチを一切れ、ジェイクの方へ差し出す。
「ステラ?くれるの?」
ジェイクが聞くと、ステラは明後日の方を見ながら頷いた。
ジェイクはサンドイッチを両手に持ち、感無量の表情だ。
「…ステラが食べ物を分けてくれるなんて!これはもう求愛行動!」
「なっ何言うの!?返して!」
「もう食べた!」
ステラがジェイクの手からサンドイッチを奪い返そうとすると、ジェイクは避けてからパクリとそれを咥えた。
求愛行動とは、まんざら間違ってないな。と二人の様子を見てリザは思った。
0
お気に入りに追加
80
あなたにおすすめの小説
実在しないのかもしれない
真朱
恋愛
実家の小さい商会を仕切っているロゼリエに、お見合いの話が舞い込んだ。相手は大きな商会を営む伯爵家のご嫡男。が、お見合いの席に相手はいなかった。「極度の人見知りのため、直接顔を見せることが難しい」なんて無茶な理由でいつまでも逃げ回る伯爵家。お見合い相手とやら、もしかして実在しない・・・?
※異世界か不明ですが、中世ヨーロッパ風の架空の国のお話です。
※細かく設定しておりませんので、何でもあり・ご都合主義をご容赦ください。
※内輪でドタバタしてるだけの、高い山も深い谷もない平和なお話です。何かすみません。
踏み台令嬢はへこたれない
三屋城衣智子
恋愛
「婚約破棄してくれ!」
公爵令嬢のメルティアーラは婚約者からの何度目かの申し出を受けていたーー。
春、学院に入学しいつしかついたあだ名は踏み台令嬢。……幸せを運んでいますのに、その名付けはあんまりでは……。
そう思いつつも学院生活を満喫していたら、噂を聞きつけた第三王子がチラチラこっちを見ている。しかもうっかり婚約者になってしまったわ……?!?
これは無自覚に他人の踏み台になって引っ張り上げる主人公が、たまにしょげては踏ん張りながらやっぱり周りを幸せにしたりやっと自分も幸せになったりするかもしれない物語。
「わたくし、甘い砂を吐くのには慣れておりますの」
ーー踏み台令嬢は今日も誰かを幸せにする。
なろうでも投稿しています。
行き遅れ、行き遅れってそんなに言うならあなたが私をもらってくれればいいじゃないですか。 『新婚生活編』
R.K.
恋愛
『行き遅れ、行き遅れってそんなに言うならあなたが私をもらってくれればいいじゃないですか。』
の、続編です。ついに、二人は結婚し、新婚生活編へ!
王子、侍女となって妃を選ぶ
夏笆(なつは)
恋愛
ジャンル変更しました。
ラングゥエ王国唯一の王子であるシリルは、働くことが大嫌いで、王子として課される仕事は側近任せ、やがて迎える妃も働けと言わない女がいいと思っている体たらくぶり。
そんなシリルに、ある日母である王妃は、候補のなかから自分自身で妃を選んでいい、という信じられない提案をしてくる。
一生怠けていたい王子は、自分と同じ意識を持つ伯爵令嬢アリス ハッカーを選ぼうとするも、母王妃に条件を出される。
それは、母王妃の魔法によって侍女と化し、それぞれの妃候補の元へ行き、彼女らの本質を見極める、というものだった。
問答無用で美少女化させられる王子シリル。
更に、母王妃は、彼女らがシリルを騙している、と言うのだが、その真相とは一体。
本編完結済。
小説家になろうにも掲載しています。
王妃 ジョア~日本人水島朔が王妃と呼ばれるまでの物語 ~
ぺんぎん
恋愛
彼を、絞め殺そうと思う。というか、今だったら絞め殺せる。
わたしは、広場の中央にいる国王をにらみつけた。
彼が国王だって?そんなの誰にも聞いていない。
早くに両親を亡くした水島朔は、病気がちな弟、満と、叔母の家で暮らしていた。
ある日、育ててくれた叔母が亡くなり、姉弟が離れ離れに暮らすことになってしまう。
必要なのは保護者と仕事と住むところ。
努力と美貌と背の高さ。使えるものは全部使って、必死で働いていたら、ヨーロッパの小国の王妃になることになりました。
日本人 水島朔が王妃と呼ばれるまでの物語です。
自滅王子はやり直しでも自滅するようです(完)
みかん畑
恋愛
侯爵令嬢リリナ・カフテルには、道具のようにリリナを利用しながら身体ばかり求めてくる婚約者がいた。
貞操を守りつつ常々別れたいと思っていたリリナだが、両親の反対もあり、婚約破棄のチャンスもなく卒業記念パーティの日を迎える。
しかし、運命の日、パーティの場で突然リリナへの不満をぶちまけた婚約者の王子は、あろうことか一方的な婚約破棄を告げてきた。
王子の予想に反してあっさりと婚約破棄を了承したリリナは、自分を庇ってくれた辺境伯と共に、新天地で領地の運営に関わっていく。
そうして辺境の開発が進み、リリナの名声が高まって幸福な暮らしが続いていた矢先、今度は別れたはずの王子がリリナを求めて実力行使に訴えてきた。
けれど、それは彼にとって破滅の序曲に過ぎず――
※8/11完結しました。
読んでくださった方に感謝。
ありがとうございます。
【完結】寵姫と氷の陛下の秘め事。
秋月一花
恋愛
旅芸人のひとりとして踊り子をしながら各地を巡っていたアナベルは、十五年前に一度だけ会ったことのあるレアルテキ王国の国王、エルヴィスに偶然出会う。
「君の力を借りたい」
あまりにも真剣なその表情に、アナベルは詳しい話を聞くことにした。
そして、その内容を聞いて彼女はエルヴィスに協力することを約束する。
こうして踊り子のアナベルは、エルヴィスの寵姫として王宮へ入ることになった。
目的はたったひとつ。
――王妃イレインから、すべてを奪うこと。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる