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「それで卒業までがリンジーがヒューイ様の気持ちを信じられるかどうかを見極める期間になったのね?」
冬期が始まった寮の部屋で、ユーニスが言うと、部屋の主のリンジーが困った顔をして頷いた。
「そうなの。それで、私がヒューイを信じられたら婚約は継続、やっぱり信じられないなら婚約は解消。当然卒業まではオルディス家への援助も継続。もし婚約解消になってもそれまでの支援金は返さなくて良い…って、これ、我が家にとって都合が良すぎない?」
「そうねぇ」
さすがにお父様も「婚約解消になれば支援金は返済する」って言ったけど、ヒューイが「それだと家に借金を背負わせるのが嫌でリンジーが婚約解消したいと言えなくなる」と拒否したのよね…「俺は、リンジーが我慢や無理をして俺と結婚するような真似はさせたくない」なんて言って。
でも信じられるも信じられないも…ヒューイの十二歳の誕生日に「リンジー様、ヒューイ様を大好きですものね」そう言ったあの侍女に「あれは刷り込みだろ」と言ったのはヒューイだし。
「刷り込みなのか、植え付けられているのか…いっそ洗脳なのかも知れないが、俺の結婚する相手はリンジーしか考えられない」
この間そう言ったのもヒューイ。
…だったら、私たち二人とも、刷り込みで「好き」だと思い込んでいるだけなんじゃないの?
「俺はリンジーの気が強い処が好きじゃない。それにピンクとかフリルとか好きだけど、見た目地味だから似合ってないしさ。ザインの方が…断然綺麗だろう?」
今も一字一句間違いなく覚えているヒューイの言葉。
私のいない所で言ったその言葉こそがヒューイの本音だと思えてならない。
「リンジー?」
黙り込んだリンジーの顔を覗き込むユーニス。
「あ…何だかヒューイの態度が急変したから、胡散臭いなあ~と思っちゃって」
「そうね。わからなくもないけど…そういえば、ヒューイ様とザイン様は…その…完全にお別れしたの?」
「少なくとも休みに会ったりはしてないみたい。寮ではどうなのかわからないけど」
「そう」
もしも、リンジーが結局、婚約解消を選択したら、ケント殿下はどうなさるんだろう?
あんなにリンジーを好きなんだもの、やっぱりそうなったらリンジーにまた求婚されるのかしら?
「今年の卒業パーティーはどうするの?ヒューイ様にエスコートしてもらうの?」
ユーニスが言うと、リンジーは眉を顰めた。
「…出たくないって言ったら、駄目だって言うの」
「ヒューイ様が?」
「うん。自分たちが卒業するのは来年なんだから、今年は出なくても構わないと思うんだけど…」
またドレスに宝飾品を贈るってヒューイは言ってたけど、着飾るのは苦手なのに、憂鬱だわ。
「もしかして、また女避けに?」
「それもあると思う。少なくとも学園生の間の婚約解消はない訳だし」
「ヒューイ様がリンジー以外と踊らないなら、ザイン様に女生徒が殺到するのかしら?」
「そうなるかも。そういえば、ユーニスとザインの縁談はその後どうなってるの?」
「そういえば、そんな話しもあったわね。と言う感じだからどうにもなってないわ。進んでもないし、無くなってもないし」
口元に手を当ててユーニスが言う。
「そう…ザインもあの側近兼司書の人との関係を聴取されたり、色々あったから…考える暇もなかったわね。きっと」
「そうね。まあでも私も同性しか好きになれない人と結婚する気はないから、ザイン様が落ち着かれたらこちらからお断りすることになるわ」
「そうよね」
「…でも」
ユーニスはテーブルに肘をついて、両手で頬杖をつく。
「ザイン様も…自分の一番好きな相手とは絶対に結婚できないのだもの…何だかいたわしいわね…」
そうか。ザインは男性でも女性でも恋愛対象になる訳じゃなく、好きになるのは常に男性なのよね。
同性婚が認められてないこの国だと、結婚って形で好きな人と結ばれる事はないのか…
「そうね…」
リンジーもテーブルに両手で頬杖をつくと、リンジーとユーニスは同時に深くため息を吐いた。
「それで卒業までがリンジーがヒューイ様の気持ちを信じられるかどうかを見極める期間になったのね?」
冬期が始まった寮の部屋で、ユーニスが言うと、部屋の主のリンジーが困った顔をして頷いた。
「そうなの。それで、私がヒューイを信じられたら婚約は継続、やっぱり信じられないなら婚約は解消。当然卒業まではオルディス家への援助も継続。もし婚約解消になってもそれまでの支援金は返さなくて良い…って、これ、我が家にとって都合が良すぎない?」
「そうねぇ」
さすがにお父様も「婚約解消になれば支援金は返済する」って言ったけど、ヒューイが「それだと家に借金を背負わせるのが嫌でリンジーが婚約解消したいと言えなくなる」と拒否したのよね…「俺は、リンジーが我慢や無理をして俺と結婚するような真似はさせたくない」なんて言って。
でも信じられるも信じられないも…ヒューイの十二歳の誕生日に「リンジー様、ヒューイ様を大好きですものね」そう言ったあの侍女に「あれは刷り込みだろ」と言ったのはヒューイだし。
「刷り込みなのか、植え付けられているのか…いっそ洗脳なのかも知れないが、俺の結婚する相手はリンジーしか考えられない」
この間そう言ったのもヒューイ。
…だったら、私たち二人とも、刷り込みで「好き」だと思い込んでいるだけなんじゃないの?
「俺はリンジーの気が強い処が好きじゃない。それにピンクとかフリルとか好きだけど、見た目地味だから似合ってないしさ。ザインの方が…断然綺麗だろう?」
今も一字一句間違いなく覚えているヒューイの言葉。
私のいない所で言ったその言葉こそがヒューイの本音だと思えてならない。
「リンジー?」
黙り込んだリンジーの顔を覗き込むユーニス。
「あ…何だかヒューイの態度が急変したから、胡散臭いなあ~と思っちゃって」
「そうね。わからなくもないけど…そういえば、ヒューイ様とザイン様は…その…完全にお別れしたの?」
「少なくとも休みに会ったりはしてないみたい。寮ではどうなのかわからないけど」
「そう」
もしも、リンジーが結局、婚約解消を選択したら、ケント殿下はどうなさるんだろう?
あんなにリンジーを好きなんだもの、やっぱりそうなったらリンジーにまた求婚されるのかしら?
「今年の卒業パーティーはどうするの?ヒューイ様にエスコートしてもらうの?」
ユーニスが言うと、リンジーは眉を顰めた。
「…出たくないって言ったら、駄目だって言うの」
「ヒューイ様が?」
「うん。自分たちが卒業するのは来年なんだから、今年は出なくても構わないと思うんだけど…」
またドレスに宝飾品を贈るってヒューイは言ってたけど、着飾るのは苦手なのに、憂鬱だわ。
「もしかして、また女避けに?」
「それもあると思う。少なくとも学園生の間の婚約解消はない訳だし」
「ヒューイ様がリンジー以外と踊らないなら、ザイン様に女生徒が殺到するのかしら?」
「そうなるかも。そういえば、ユーニスとザインの縁談はその後どうなってるの?」
「そういえば、そんな話しもあったわね。と言う感じだからどうにもなってないわ。進んでもないし、無くなってもないし」
口元に手を当ててユーニスが言う。
「そう…ザインもあの側近兼司書の人との関係を聴取されたり、色々あったから…考える暇もなかったわね。きっと」
「そうね。まあでも私も同性しか好きになれない人と結婚する気はないから、ザイン様が落ち着かれたらこちらからお断りすることになるわ」
「そうよね」
「…でも」
ユーニスはテーブルに肘をついて、両手で頬杖をつく。
「ザイン様も…自分の一番好きな相手とは絶対に結婚できないのだもの…何だかいたわしいわね…」
そうか。ザインは男性でも女性でも恋愛対象になる訳じゃなく、好きになるのは常に男性なのよね。
同性婚が認められてないこの国だと、結婚って形で好きな人と結ばれる事はないのか…
「そうね…」
リンジーもテーブルに両手で頬杖をつくと、リンジーとユーニスは同時に深くため息を吐いた。
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