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リンジーが目が覚ますと、そこはオルディス家の王都屋敷の自分の部屋だった。
「リンジー」
ユーニスがリンジーが目を覚ました事に気付いて顔を覗き込む。
「ユー…」
ユーニスと呼ぼうとして、唇が上手く動かせない事に気付く。
「喋らない方が良いわ。腫れてるの」
心配そうにユーニスが言う。
腫れてる…?
ああ、そうか、あの男に噛まれた唇が腫れてるって事か。
リンジーはもそもそと起き上がると、自分の唇へ手をやる。下唇の上に貼ってあるガーゼが指に触れた。
痛くはない…けど、あれだけ摘んだり噛んだりしたらそりゃ腫れるわよね。
「ヒューイ様も待機されてるの。呼ぶ?」
ヒューイが?
リンジーは首を横に振る。
ただでも美人から遠いのに、唇が腫れた不細工な顔なんか誰にも見られたくない。特にヒューイには。
「わかるわ。でも多分ヒューイ様は待てないんじゃないかしら?」
「?」
「ヒューイ様、リンジーの部屋の前の廊下、行ったり来たりされてるの。二日間」
二日!?
私、そんなに眠ってたの?
ううん。それよりヒューイが私の部屋の前を行ったり来たりしてるの?二日間?
「寝ずに」
「!?」
今リンジーが唇を動かせたら、あんぐりと口を開けるだろう。
「だから我慢して。せめて隠してあげるから」
ユーニスはそう言うと、ストールをリンジーの首にマフラーのように巻き付け、どうにか口元が見えないようにしてくれた。
「あとこれ」
ユーニスはリンジーの手に、何枚かの白い紙とペンを持たせる。喋れないので筆談をしろと言う事だろう。
リンジーは渡された紙にペンを走らせた。
【ありがとう】
そう書いた紙をユーニスに見せると、ユーニスは微笑む。
「私は何も。リンジーが無事で良かったわ」
-----
「リン!」
ユーニスが部屋を出ると直ぐにヒューイが飛び込むように入って来た。
「良かった…なかなか目覚めないから心配で…」
ベッドの上に座るリンジーを見て、ヒューイは安堵の表情を浮かべる。
【二日?】
リンジーが紙に書くと、ヒューイは頷いた。
「そう。丸二日眠っていたんだ」
ベッドサイドに置かれた椅子に座るヒューイを見る。
髭も伸びて目の下に隈があっても格好いいんだもんなあ…ヒューイは。
【助けてくれてありがとう】
「いや。もっと早く行けなくてすまなかった」
頭を下げるヒューイ。
そんな事ない。来てくれただけで嬉しかった…って、恥ずかしくて書けないけど。
【あそこはどこ?】
「学園の図書室だ。生徒は知らない屋根裏部屋」
学園の図書室かあ。図書室に屋根裏部屋があるなんて知らなかったけど、なるほどね。
今冬期休暇で生徒はいないし、確かに大声出したとしても気付かれない場所だわ。
「リンジー」
呼ばれて、リンジーが紙に落としていた視線を上げると、ヒューイは真剣な表情でリンジーを見ていた。
何…?
リンジーが返事の代わりに首を少し傾げると、ヒューイはペンを持っているリンジーの手を両手で包む。
…何でヒューイが私の手を握ってるの?
手、大きい。あったかい。と言うより熱い?
し、心臓がドキドキしてきた…
「リンジー、何から話せば良いのか…いや、先ずは謝罪させてくれ」
謝罪?
ヒューイ、何だか苦しそうな顔してるけど…
「申し訳ない。契約結婚などと…俺は本当に馬鹿な事を言った」
あ、そういえば、ヒューイが契約結婚とか言い出して、よりによって私を相手に選んだりするからって、一言文句言ってやらなきゃってあの時思ってたなあ。
でも逆恨みの八つ当たりだし、今のヒューイの表情が本当に申し訳なさそうで、ちょっと言えない…な。
リンジーが首を横に振ると、ヒューイは両手で握っているリンジーの手に額を付けた。
「婚約破棄はしない。いや、頼むからしないでくれ」
…ん?
何でヒューイが婚約破棄しないでくれなんて言うの?
婚約破棄するのがヒューイで、されるのが私でしょう?
「?」
これ以上傾けられないと言う程、首を傾げるリンジー。
「リンジー…」
ヒューイは少し顔を上げて上目遣いにリンジーを見る。
な、何!?ヒューイなのにかわいいんですけど!?
「色々、釈明とか弁解とか申し開きをさせて欲しい気持ちはあるが、それは後々として」
釈明、弁解、申し開きって、要するに「言い訳したい」って事かな?
「…好きだ」
え!?
…そう言えば、あまり覚えてないけどあの時にもそんな事言われた…?ような…?
「俺はリンジーが好きなんだ」
そうそう。こんな風に…
…って、今、ヒューイの口から出たわよね?この言葉。
「おそらく、信じられないと思うが…」
唖然としてヒューイを見るリンジーに、上目遣いでヒューイは言う。
こくこくこくこく、とリンジーは高速で頷く。
しっ信じられる訳がないわ。
「そうだよな。でも本当なんだ」
ヒューイはまたリンジーの手に額を付けた。
リンジーが目が覚ますと、そこはオルディス家の王都屋敷の自分の部屋だった。
「リンジー」
ユーニスがリンジーが目を覚ました事に気付いて顔を覗き込む。
「ユー…」
ユーニスと呼ぼうとして、唇が上手く動かせない事に気付く。
「喋らない方が良いわ。腫れてるの」
心配そうにユーニスが言う。
腫れてる…?
ああ、そうか、あの男に噛まれた唇が腫れてるって事か。
リンジーはもそもそと起き上がると、自分の唇へ手をやる。下唇の上に貼ってあるガーゼが指に触れた。
痛くはない…けど、あれだけ摘んだり噛んだりしたらそりゃ腫れるわよね。
「ヒューイ様も待機されてるの。呼ぶ?」
ヒューイが?
リンジーは首を横に振る。
ただでも美人から遠いのに、唇が腫れた不細工な顔なんか誰にも見られたくない。特にヒューイには。
「わかるわ。でも多分ヒューイ様は待てないんじゃないかしら?」
「?」
「ヒューイ様、リンジーの部屋の前の廊下、行ったり来たりされてるの。二日間」
二日!?
私、そんなに眠ってたの?
ううん。それよりヒューイが私の部屋の前を行ったり来たりしてるの?二日間?
「寝ずに」
「!?」
今リンジーが唇を動かせたら、あんぐりと口を開けるだろう。
「だから我慢して。せめて隠してあげるから」
ユーニスはそう言うと、ストールをリンジーの首にマフラーのように巻き付け、どうにか口元が見えないようにしてくれた。
「あとこれ」
ユーニスはリンジーの手に、何枚かの白い紙とペンを持たせる。喋れないので筆談をしろと言う事だろう。
リンジーは渡された紙にペンを走らせた。
【ありがとう】
そう書いた紙をユーニスに見せると、ユーニスは微笑む。
「私は何も。リンジーが無事で良かったわ」
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「リン!」
ユーニスが部屋を出ると直ぐにヒューイが飛び込むように入って来た。
「良かった…なかなか目覚めないから心配で…」
ベッドの上に座るリンジーを見て、ヒューイは安堵の表情を浮かべる。
【二日?】
リンジーが紙に書くと、ヒューイは頷いた。
「そう。丸二日眠っていたんだ」
ベッドサイドに置かれた椅子に座るヒューイを見る。
髭も伸びて目の下に隈があっても格好いいんだもんなあ…ヒューイは。
【助けてくれてありがとう】
「いや。もっと早く行けなくてすまなかった」
頭を下げるヒューイ。
そんな事ない。来てくれただけで嬉しかった…って、恥ずかしくて書けないけど。
【あそこはどこ?】
「学園の図書室だ。生徒は知らない屋根裏部屋」
学園の図書室かあ。図書室に屋根裏部屋があるなんて知らなかったけど、なるほどね。
今冬期休暇で生徒はいないし、確かに大声出したとしても気付かれない場所だわ。
「リンジー」
呼ばれて、リンジーが紙に落としていた視線を上げると、ヒューイは真剣な表情でリンジーを見ていた。
何…?
リンジーが返事の代わりに首を少し傾げると、ヒューイはペンを持っているリンジーの手を両手で包む。
…何でヒューイが私の手を握ってるの?
手、大きい。あったかい。と言うより熱い?
し、心臓がドキドキしてきた…
「リンジー、何から話せば良いのか…いや、先ずは謝罪させてくれ」
謝罪?
ヒューイ、何だか苦しそうな顔してるけど…
「申し訳ない。契約結婚などと…俺は本当に馬鹿な事を言った」
あ、そういえば、ヒューイが契約結婚とか言い出して、よりによって私を相手に選んだりするからって、一言文句言ってやらなきゃってあの時思ってたなあ。
でも逆恨みの八つ当たりだし、今のヒューイの表情が本当に申し訳なさそうで、ちょっと言えない…な。
リンジーが首を横に振ると、ヒューイは両手で握っているリンジーの手に額を付けた。
「婚約破棄はしない。いや、頼むからしないでくれ」
…ん?
何でヒューイが婚約破棄しないでくれなんて言うの?
婚約破棄するのがヒューイで、されるのが私でしょう?
「?」
これ以上傾けられないと言う程、首を傾げるリンジー。
「リンジー…」
ヒューイは少し顔を上げて上目遣いにリンジーを見る。
な、何!?ヒューイなのにかわいいんですけど!?
「色々、釈明とか弁解とか申し開きをさせて欲しい気持ちはあるが、それは後々として」
釈明、弁解、申し開きって、要するに「言い訳したい」って事かな?
「…好きだ」
え!?
…そう言えば、あまり覚えてないけどあの時にもそんな事言われた…?ような…?
「俺はリンジーが好きなんだ」
そうそう。こんな風に…
…って、今、ヒューイの口から出たわよね?この言葉。
「おそらく、信じられないと思うが…」
唖然としてヒューイを見るリンジーに、上目遣いでヒューイは言う。
こくこくこくこく、とリンジーは高速で頷く。
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