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舞踏会に関する後作業が全て終了するの日には生徒会役員が全員集まるらしく、ニーナと会計の女子生徒しかいなかった生徒会室にリオンとジェラルド、少し遅れて書記の女子生徒がやって来た。
ドキドキと鳴る胸を手で押さえるニーナ。
会計さんが変な事言うから過剰反応してるわ。私。
「舞踏会ぶりだな」
リオンがソファに座りながら言う。
「はい。あの、テオバルト様が支払いに行ってくださっているので暫く戻られないかと…役員さんたちが集まられるの、知らなくて。部外者の私が支払いに行けば良かったですね」
「ニーナは部外者ではないだろう?こんなに早く全てを終えられたのは、会計や精算など最後まで気を使う細かくて面倒な仕事を二人で請け負ってくれたおかげではないか」
リオンが立ったままのニーナに手で自分の正面に座れと示した。
「ありがとうございます」
頭を下げてからニーナはソファに座る。
「ニーナさんと、テオバルト様も手伝ってくださったので本当に仕事が捗りました」
ニーナの隣の会計の女子生徒が嬉しそうに言った。
リオンがニーナの方を見る。
「テオは、毎日来ていたのか?」
「はい」
頷くニーナ。
リオンは表情を変えずに「そうか」と言った。
…何となく、だけど。
何となくリオン殿下、不機嫌?に見える。
「それはギブソンさんがテオバルトと交際しているからですか?」
リオンの隣に座ったジェラルドがさらりと言う。
「え!?何で知って……いえ!交際していませんけど」
慌ててニーナが言うと、リオンは眉を顰め、ジェラルドは少し眉を上げた。
「舞踏会の翌日、テオバルトが王宮に来て、ギブソンさんに恋人になって欲しいと言ったとリオン殿下へ言ったんです。その場に私もいたので」
「はあ…何でわざわざそんな事…」
他の用でリオン殿下に会ったからついでに話したのかな?わざわざそれを言うために王宮まで行かないだろうし…
「さあ?ギブソンさんは殿下の『友人』だからではないですか?」
「……」
この少し皮肉が混じってて、少し突き放したような言い方。ジェラルド様、リオン殿下が私を「友人」扱いしてるの本当は気に入らないんだろうなあ。
リオンがジェラルドの方に視線を向ける。
「…何か?」
視線に気付いたジェラルドがほんの少しだけ不満そうな表情を浮かべてリオンの方へ向いた。
リオンは黙ったままスッと視線を外す。
程なくして、支払いに行ったお菓子屋さんで人数分のケーキを買ったテオバルトが戻って来て、ケーキとお茶で舞踏会の後作業を締めくくった。
-----
ガシャンッ!
ティーカップが高い音を立てて割れ、淹れたばかりの紅茶が飛び散る。
ゴールドバーグ家のサロンで、イレブンジズティーのカップを床に叩き付けたのはエラの上の義姉マーゴット。丸いテーブルの反対側に座っている下の義姉カトリーヌがニヤニヤと笑いながら傍に立つメイド服姿のエラを見ていた。
「ドレスを裂いたのは『舞踏会には出るな』という忠告よ!それを無視して!昔のドレスを直して着るなんて、公爵家の人間が恥ずかし気もなく良くも出席したものだわ!」
マーゴットが怒鳴る。
「……」
黙って俯くエラ。
ニーナが直してくれたドレス。あれが恥ずかしいなんて私は思わない。むしろ誇らしいくらいだわ。
「しかもこの灰かぶりのエラ、元庶民の男爵家の男とかなり親しくしていましたわ」
ニヤニヤしながらカトリーヌが言うと、マーゴットが面白そうに手を叩いた。
「『シンデレラ』!?卑しいこの女にピッタリの渾名ね。ところでその元庶民の男爵家の男って『シンデレラ』のドレスを直したという男爵家の養女と関係あるの?」
「ええ。公爵令嬢である私に向かって怒鳴り散らした礼儀知らずなニーナ・ギブソンの義理の兄です」
「まああ。そんな礼儀知らずの兄妹と親しくしていてはゴールドバーグ公爵家の品位に関わるわ!」
「……」
エラはしゃがんで割れたカップを片付けてるために右手を差し出す。
「エラ!聞いているの!?」
マーゴットが怒鳴りながら椅子から立ち上がった。
「……」
黙々とカップの大きな欠片に小さな欠片を重ねるエラの前にマーゴットが立ち、腕を組んでエラを見下ろす。
「シンデレラのくせに舞踏会では目立っていたそうね。卑しい庶民兄妹と親しくしたり。カトリーヌや私までが周りから『あんな女と義理の姉妹か』と蔑んで見られてしまうじゃないの。お前のせいで王子妃に選ばれなかったらどう責任を取るつもり?」
エラを見下して言うマーゴットに、カップの欠片を重ねていたエラの手が止まった。
私の事は何を言われてもかまわないけれど、ニーナやレジスさんを「卑しい」何て言われるのは我慢ならない。
「……」
反論した処で良い事は何もないと知りつつもエラは思わず顔を上げてマーゴットを見る。
「!」
エラと目が合ったマーゴットは反抗されたと感じ、足を上げ、思い切り下ろした。
カップの欠片を持つ、エラの、手に向けて。
舞踏会に関する後作業が全て終了するの日には生徒会役員が全員集まるらしく、ニーナと会計の女子生徒しかいなかった生徒会室にリオンとジェラルド、少し遅れて書記の女子生徒がやって来た。
ドキドキと鳴る胸を手で押さえるニーナ。
会計さんが変な事言うから過剰反応してるわ。私。
「舞踏会ぶりだな」
リオンがソファに座りながら言う。
「はい。あの、テオバルト様が支払いに行ってくださっているので暫く戻られないかと…役員さんたちが集まられるの、知らなくて。部外者の私が支払いに行けば良かったですね」
「ニーナは部外者ではないだろう?こんなに早く全てを終えられたのは、会計や精算など最後まで気を使う細かくて面倒な仕事を二人で請け負ってくれたおかげではないか」
リオンが立ったままのニーナに手で自分の正面に座れと示した。
「ありがとうございます」
頭を下げてからニーナはソファに座る。
「ニーナさんと、テオバルト様も手伝ってくださったので本当に仕事が捗りました」
ニーナの隣の会計の女子生徒が嬉しそうに言った。
リオンがニーナの方を見る。
「テオは、毎日来ていたのか?」
「はい」
頷くニーナ。
リオンは表情を変えずに「そうか」と言った。
…何となく、だけど。
何となくリオン殿下、不機嫌?に見える。
「それはギブソンさんがテオバルトと交際しているからですか?」
リオンの隣に座ったジェラルドがさらりと言う。
「え!?何で知って……いえ!交際していませんけど」
慌ててニーナが言うと、リオンは眉を顰め、ジェラルドは少し眉を上げた。
「舞踏会の翌日、テオバルトが王宮に来て、ギブソンさんに恋人になって欲しいと言ったとリオン殿下へ言ったんです。その場に私もいたので」
「はあ…何でわざわざそんな事…」
他の用でリオン殿下に会ったからついでに話したのかな?わざわざそれを言うために王宮まで行かないだろうし…
「さあ?ギブソンさんは殿下の『友人』だからではないですか?」
「……」
この少し皮肉が混じってて、少し突き放したような言い方。ジェラルド様、リオン殿下が私を「友人」扱いしてるの本当は気に入らないんだろうなあ。
リオンがジェラルドの方に視線を向ける。
「…何か?」
視線に気付いたジェラルドがほんの少しだけ不満そうな表情を浮かべてリオンの方へ向いた。
リオンは黙ったままスッと視線を外す。
程なくして、支払いに行ったお菓子屋さんで人数分のケーキを買ったテオバルトが戻って来て、ケーキとお茶で舞踏会の後作業を締めくくった。
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ガシャンッ!
ティーカップが高い音を立てて割れ、淹れたばかりの紅茶が飛び散る。
ゴールドバーグ家のサロンで、イレブンジズティーのカップを床に叩き付けたのはエラの上の義姉マーゴット。丸いテーブルの反対側に座っている下の義姉カトリーヌがニヤニヤと笑いながら傍に立つメイド服姿のエラを見ていた。
「ドレスを裂いたのは『舞踏会には出るな』という忠告よ!それを無視して!昔のドレスを直して着るなんて、公爵家の人間が恥ずかし気もなく良くも出席したものだわ!」
マーゴットが怒鳴る。
「……」
黙って俯くエラ。
ニーナが直してくれたドレス。あれが恥ずかしいなんて私は思わない。むしろ誇らしいくらいだわ。
「しかもこの灰かぶりのエラ、元庶民の男爵家の男とかなり親しくしていましたわ」
ニヤニヤしながらカトリーヌが言うと、マーゴットが面白そうに手を叩いた。
「『シンデレラ』!?卑しいこの女にピッタリの渾名ね。ところでその元庶民の男爵家の男って『シンデレラ』のドレスを直したという男爵家の養女と関係あるの?」
「ええ。公爵令嬢である私に向かって怒鳴り散らした礼儀知らずなニーナ・ギブソンの義理の兄です」
「まああ。そんな礼儀知らずの兄妹と親しくしていてはゴールドバーグ公爵家の品位に関わるわ!」
「……」
エラはしゃがんで割れたカップを片付けてるために右手を差し出す。
「エラ!聞いているの!?」
マーゴットが怒鳴りながら椅子から立ち上がった。
「……」
黙々とカップの大きな欠片に小さな欠片を重ねるエラの前にマーゴットが立ち、腕を組んでエラを見下ろす。
「シンデレラのくせに舞踏会では目立っていたそうね。卑しい庶民兄妹と親しくしたり。カトリーヌや私までが周りから『あんな女と義理の姉妹か』と蔑んで見られてしまうじゃないの。お前のせいで王子妃に選ばれなかったらどう責任を取るつもり?」
エラを見下して言うマーゴットに、カップの欠片を重ねていたエラの手が止まった。
私の事は何を言われてもかまわないけれど、ニーナやレジスさんを「卑しい」何て言われるのは我慢ならない。
「……」
反論した処で良い事は何もないと知りつつもエラは思わず顔を上げてマーゴットを見る。
「!」
エラと目が合ったマーゴットは反抗されたと感じ、足を上げ、思い切り下ろした。
カップの欠片を持つ、エラの、手に向けて。
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