推しがシンデレラの王子様になっていた件。

プロローグ

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「莉音りおんだ…！」

　壇上に立つ紫の髪の男性。

　彼を見た途端、私の前世の記憶が蘇った───





－－－－－

「やったー！」
　ボスン。
　スマホの画面を見て叫ぶと、ベッドへダイブする。
　隣の部屋から兄の「うるさい！」と怒鳴り声。
　ひと叫びくらい許してよ！すごーく久しぶりにライブのチケットの当選通知が来たんだから！

「はあ～何度見てもちゃんと『当選』って書いてあるぅ。地元こっちでライブあってもずっと外れてたもん。でも莉音『転売チケットは売る方にも買う方にも厳しい処置を取る』って言ってたし、そこは莉音の言う通り品行方正なイルミでいなくちゃだし」
　ああ～でもせっかく地元でライブがあるのに行けないのが続いてて辛かったぁ。もう何のためにバイトに明け暮れてるんだか…って感じ。
　もちろんグッズ買うし、雑誌買うし、DVD買うし、有料配信だって全部見る。ファンクラブの会費だって安くない。
　でもでも、やっと生莉音に会える。ますますバイトがんばって参戦衣装とか応援グッズも用意しなくちゃ！
「莉音～やっと会えるよ～」
　私はスマホの待ち受け画面を撫でた。
　そこには紫の髪の男性の写真。

　四人組男性アイドルグループ「B-rightブライト」
　輝かしいという意味のbrightがグループ名の由来だが、Bが独立しているのは、四人のメンバー全員が血液型がB型だからだ。
　品行方正系リーダーはコバルトブルー、天真爛漫系弟キャラはクロムイエロー、ホスト系王子キャラはローズピンク、クール系貴族キャラはバイオレットとテーマカラーが決まっている。
　B-rightのファンはイルミネーターと呼ばれる。B-rightからの光を受ける人、B-rightへ光を届ける人という両面の意味があり、普段は略して「イルミ」と呼ばれているのだ。

「そうだ！前のツアーのDVD観てイメトレしよう！」
　ベッドからガバリと起き上がると、電源を入れっぱなしのノートパソコンでDVDを再生する。
　中世の騎士のような衣装で四人の男性が歌い、踊っている画像が流れた。
　紫の衣装に、紫のメッシュが入った髪の男性がアップになる。
「莉音！カッコいい！眩しい～！！」
　思わず叫ぶと
「新菜にいなうるさい！」
　と、隣の部屋から兄の怒声が飛んできた。