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「ミシェル様、大丈夫ですか?」
階段でふらつくミシェルをイアンが慌てて支える。
「…体力がないのよ」
「俺のせい…なんですか?」
「そうよ」
ミシェルはイアンの腕をぎゅっと掴みながら言う。
「レイラを死なせる処だったんだもの。三階よ?助かったのは運が良かっただけ。なのにお父様もみんなも『あれは事故だ』って言うし…何であの時あんなにレイラを憎らしく思ったのか、誰も答えてくれないし…イアンは居ないし…食べられないし、眠れないし…」
「……」
涙を浮かべるミシェルをイアンは眉を寄せて見つめる。
「見かねたエマがイアンの行方を探してくれたの」
「俺の行方、知られてるんですか?」
「ううん。イアンが公爵家を出てからどこで何をしてるのかは知らないわ。ただ今日イアンがレイラの所へ来るって情報をエマが仕入れて来たのよ」
「どこから?」
「さあ?…ただ、私はサイラス殿下からの情報じゃないかと思ってるの」
「サイラス殿下?」
ピクリとイアンが反応する。
「お見舞いにも来て頂いたけど、どうしてもお会いできなくて…私がイアンに会いたがってるの、エマから聞いたんだと思うわ」
「ミシェル様…俺に会いたかったんですか?」
ミシェルは少し唇を尖らせて下からイアンを見上げる。
「そうよ」
「……」
イアンは少し黙った後、屈み込んでミシェルを抱き上げた。
「きゃっ」
「…どうしてそんな事言うんですか」
イアンは憮然として、ミシェルを抱いたまま階段を降りる。
「どうしてって」
廊下を抜けて、中庭に出ると、中庭に置かれたベンチにミシェルを座らせた。
ミシェルの前に立つイアンを見上げる。
「…イアン、私の事ずっと好きだったって、本当?」
「嘘です」
「え?」
イアンは視線をよそへ向けて言う。
「ウィルマは俺がミシェル様を好きだと誤解していたんです。それであんな事をした。だから俺のせいでレイラ様が怪我をし、ミシェル様が苦しんだのは本当です。ミシェル様、ウィルマも公爵家を解雇されたのはご存知ですよね?」
「…ええ」
「誤解で人生狂わされたなんて知ったらウィルマは今以上に苦しみます。だから俺は本当にミシェル様を好きだった事にしたんです」
ミシェルはイアンを見つめたまま、震えだす。
「…嘘なの?イアンは私を好きじゃない…?」
「好きじゃありません」
視線を逸らしたままイアンが言う。
「………そう」
ミシェルは俯いて小さく呟くと、スカートのポケットに手を入れた。
「だから、ミシェル様はサイラス殿下と幸せになってください」
「……」
イアンが黙ってしまったミシェルへ少し視線をやると、ミシェルは膝の上で何かを握りしめていた。
「……そっか。私、結局報われないのね」
下を向いたままミシェルが呟く。
「ミシェル様?」
「だったら、あのまま、助けないで欲しかったな。レイラと一緒に落ちてれば…」
「ミシェル様?」
イアンがミシェルの手に触る。ビクッとしたミシェルの手から見覚えのある小瓶が転がり出て、芝生に落ちた。
「…惚れ薬?」
ミシェルは立ち上がると、イアンに背を向けて小瓶の側にしゃがみ込む。
小瓶を手に取ると顔の前にかざす。
「まだ誰の髪の毛も入れてないの。レイラにあげようと思ってたんだけど、私が使った方が良さそうね」
「どうして…」
「私が、サイラス殿下を好きになれば、良いんでしょ?」
ふらりと立ち上がったミシェルは涙を浮かべた瞳でイアンを振り向く。
「…っ」
イアンは小瓶を持ったミシェルの手を掴むと、自分の方へ引き寄せた。
-----
「言ってる事とやってる事がバラバラだわ」
イアンに抱きしめられたミシェルはため息混じりに言う。
「…そうですね」
イアンはミシェルの髪に顔を埋めるようにして言う。両腕はミシェルの腕ごと抱き込んでミシェルの背中に回っていた。
「嘘なんじゃなかったの?」
「嘘なのが嘘です」
「…混乱するわね。『俺はお前を好きじゃないから殿下と幸せになれ作戦』は方向転換なの?」
「その作戦名は恥ずかしいです」
「じゃあ『俺は身を引くからお前は殿下と幸せになれ作戦』?」
「…意地悪ですね。ミシェル様」
「意地悪なのはイアンでしょ」
「そうですね。意地悪なのは俺です」
「…ねぇ、ちょっとだけ腕緩めて?」
「嫌です」
「だって…私もイアンの背中に手を回したいもん」
「……」
イアンは少しだけ腕を緩める。ミシェルはイアンの背中に手を回すと、ぎゅっと抱きついた。
「…ミシェル様、好きです」
イアンが撫でるように背中の手を動かしながら言う。
「あのね、イアン」
「はい」
「私とサイラス殿下の婚約…解消する事になったの」
「え!?」
イアンは驚いて髪に埋めていた顔を上げる。
「大好きよ。イアン」
驚いた表情のイアンを見つめ、ミシェルは涙目で笑いながら言うと、改めてイアンに抱きついた。
「ミシェル様、大丈夫ですか?」
階段でふらつくミシェルをイアンが慌てて支える。
「…体力がないのよ」
「俺のせい…なんですか?」
「そうよ」
ミシェルはイアンの腕をぎゅっと掴みながら言う。
「レイラを死なせる処だったんだもの。三階よ?助かったのは運が良かっただけ。なのにお父様もみんなも『あれは事故だ』って言うし…何であの時あんなにレイラを憎らしく思ったのか、誰も答えてくれないし…イアンは居ないし…食べられないし、眠れないし…」
「……」
涙を浮かべるミシェルをイアンは眉を寄せて見つめる。
「見かねたエマがイアンの行方を探してくれたの」
「俺の行方、知られてるんですか?」
「ううん。イアンが公爵家を出てからどこで何をしてるのかは知らないわ。ただ今日イアンがレイラの所へ来るって情報をエマが仕入れて来たのよ」
「どこから?」
「さあ?…ただ、私はサイラス殿下からの情報じゃないかと思ってるの」
「サイラス殿下?」
ピクリとイアンが反応する。
「お見舞いにも来て頂いたけど、どうしてもお会いできなくて…私がイアンに会いたがってるの、エマから聞いたんだと思うわ」
「ミシェル様…俺に会いたかったんですか?」
ミシェルは少し唇を尖らせて下からイアンを見上げる。
「そうよ」
「……」
イアンは少し黙った後、屈み込んでミシェルを抱き上げた。
「きゃっ」
「…どうしてそんな事言うんですか」
イアンは憮然として、ミシェルを抱いたまま階段を降りる。
「どうしてって」
廊下を抜けて、中庭に出ると、中庭に置かれたベンチにミシェルを座らせた。
ミシェルの前に立つイアンを見上げる。
「…イアン、私の事ずっと好きだったって、本当?」
「嘘です」
「え?」
イアンは視線をよそへ向けて言う。
「ウィルマは俺がミシェル様を好きだと誤解していたんです。それであんな事をした。だから俺のせいでレイラ様が怪我をし、ミシェル様が苦しんだのは本当です。ミシェル様、ウィルマも公爵家を解雇されたのはご存知ですよね?」
「…ええ」
「誤解で人生狂わされたなんて知ったらウィルマは今以上に苦しみます。だから俺は本当にミシェル様を好きだった事にしたんです」
ミシェルはイアンを見つめたまま、震えだす。
「…嘘なの?イアンは私を好きじゃない…?」
「好きじゃありません」
視線を逸らしたままイアンが言う。
「………そう」
ミシェルは俯いて小さく呟くと、スカートのポケットに手を入れた。
「だから、ミシェル様はサイラス殿下と幸せになってください」
「……」
イアンが黙ってしまったミシェルへ少し視線をやると、ミシェルは膝の上で何かを握りしめていた。
「……そっか。私、結局報われないのね」
下を向いたままミシェルが呟く。
「ミシェル様?」
「だったら、あのまま、助けないで欲しかったな。レイラと一緒に落ちてれば…」
「ミシェル様?」
イアンがミシェルの手に触る。ビクッとしたミシェルの手から見覚えのある小瓶が転がり出て、芝生に落ちた。
「…惚れ薬?」
ミシェルは立ち上がると、イアンに背を向けて小瓶の側にしゃがみ込む。
小瓶を手に取ると顔の前にかざす。
「まだ誰の髪の毛も入れてないの。レイラにあげようと思ってたんだけど、私が使った方が良さそうね」
「どうして…」
「私が、サイラス殿下を好きになれば、良いんでしょ?」
ふらりと立ち上がったミシェルは涙を浮かべた瞳でイアンを振り向く。
「…っ」
イアンは小瓶を持ったミシェルの手を掴むと、自分の方へ引き寄せた。
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「言ってる事とやってる事がバラバラだわ」
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「…そうですね」
イアンはミシェルの髪に顔を埋めるようにして言う。両腕はミシェルの腕ごと抱き込んでミシェルの背中に回っていた。
「嘘なんじゃなかったの?」
「嘘なのが嘘です」
「…混乱するわね。『俺はお前を好きじゃないから殿下と幸せになれ作戦』は方向転換なの?」
「その作戦名は恥ずかしいです」
「じゃあ『俺は身を引くからお前は殿下と幸せになれ作戦』?」
「…意地悪ですね。ミシェル様」
「意地悪なのはイアンでしょ」
「そうですね。意地悪なのは俺です」
「…ねぇ、ちょっとだけ腕緩めて?」
「嫌です」
「だって…私もイアンの背中に手を回したいもん」
「……」
イアンは少しだけ腕を緩める。ミシェルはイアンの背中に手を回すと、ぎゅっと抱きついた。
「…ミシェル様、好きです」
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「あのね、イアン」
「はい」
「私とサイラス殿下の婚約…解消する事になったの」
「え!?」
イアンは驚いて髪に埋めていた顔を上げる。
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