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舞踏会の翌日から夏期休暇なのでレイラはハミルトン家へ戻った。
「婚約解消を申し出るか?レイラ」
父ブライアンが隣に座るレイラの頬を撫でながら言う。
ブライアンはかなり良くなったとは言え、目が悪いので子供たちが小さい頃からこうして手で顔を確認している。
一番見えない頃には明るければ目の前の物や人の輪郭がぼんやりと判る位だったが、今は家具などの配置も判るし、かなり近付けば人の顔も判別がつく。
相当近付かないと判らないので、家族の顔しか見る機会はないらしいが。
「カイル殿下はお父様への手紙へ『いずれ婚約解消するつもり』って書いてたんだからこちらから申し出なくても良いんじゃないかしら?」
「しかしそれではレイラが捨てられた形になる。レイラの次の縁談にも差し支えるし…」
ああ、そう言えばミシェルが「王子に婚約破棄された令嬢を娶る人はいない」って言ってたっけ。
「サイラス殿下の言うように、王太子殿下や王太子妃殿下に事情を話せばレイラの…ハミルトン家の不利にはならないように出来るかも知れないし、父親としてはハミルトン家の不利になろうが何だろうが、かわいい娘を蔑ろにされて黙っていたくはないんだよ」
「お父様…」
「そうよ。レイラが辛い思いをする位なら伯爵位なんてオズバーン公爵家へ返しちゃって、平民になったって良いのよ」
スーザンが飲み物をブライアンとレイラの前に置きながら言う。
「お母様は極端ね」
「あら、その位の覚悟がないと、あわや国家反逆罪かって罪人の娘や孫なんてやってられないわ」
「伯爵家を返上したらライナス兄様が困るんじゃない?結婚したばかりなのに」
「レイラ、マリエルさんはハミルトン家に嫁いで来るだけあって、伯爵家のお嬢様育ちなのになかなか肝が座ってるわよ。多分旦那様が爵位を返上するって言っても『じゃあライナス様も私もお仕事を探さなきゃですね』ってケロっとして言うと思うわ」
普通の令嬢なら「貴族でなくなるなんて嫌!実家に帰らせていただきます」となる処なのに。
「私のマリエルの悪口はやめてください」
リビングにライナスが入って来る。後ろからライナスに着いて入って来るのがライナスの妻マリエルだ。
「あら、ライナス様、私は褒められたんだと思いましたけど」
きょとんとしてライナスを見つめるマリエル。
「例え平民になっても私はライナス様の妻ですって覚悟をお義母様は認めてくださってるんだなあ、と思いました」
「マリエル」
ライナスは破顔してマリエルの額に口付けを落とした。
-----
「ライアンは夏期休暇なのに戻らないのか?」
夕食の席でブライアンが言うと、レイラとライナスは顔を見合わせる。
「ライアンは今年四年生の担任でもあるし、初めて生徒会の顧問にもなったし、休暇と言えども忙しいんじゃないかな?」
ライナスがそう言うと、ブライアンは「そうか」と頷いた。
夕食後、レイラの部屋を訪れたライナスが言う。
「ライアンはレイラが領地にいる間は戻らないと言っていたな」
「え?ライアン兄様が帰って来ないの私のせい?」
「ライアンが言うには『何となくレイラに酷い事を言いそうな気がするから顔を合わせないようにしたい』んだそうだ」
攻略対象者の悪役令嬢への強制力ね…
一応妹を傷付けたくはないと言う気持ちはライアンにもあるらしい。
「まあライアンの事も、家の事も、レイラが気に病む事はない」
ライナスはレイラの頭をくしゃりと撫でて部屋を出て行った。
夏期休暇、ゲームではアリスは好感度の高い攻略対象者の領地でのバカンスに招かれてたわね。ここには悪役令嬢は登場せず、他の攻略対象者も遊びに来たりして閑話休題って感じで和やかに過ごせる一週間になるんだわ。
この攻略対象者ってやっぱりカイルなんだろうな…
王家の領地、山があって湖があってそこそこの大きさの街もあって、結構いい所よね。小さい頃にしか行った事はないけど。
秋期では攻略対象者とのデートイベントや、悪役令嬢からの嫌がらせの後で攻略対象者に慰められるイベントが何個かあった位かな。
冬期では、ヒロインが悪役令嬢から階段を突き落とされるのが大きな事件よね。それで怪我をしたヒロインに、攻略対象者が婚約者や恋人である悪役令嬢を排除しなくては、と決心して卒業パーティーでの断罪に繋がるんだから。
カイルルートだと私が階段を突き落とすんだけど…私はそんな事する気はないけど、強制力もあるし、どんな展開になるのか予測が付かないわね。
もしも悪役令嬢の方から婚約解消を申し出たらどんな展開になるのだろう?
この間「さっさと婚約破棄すれば良いじゃない」と言い捨てた日から二週間近く経つが、特にカイルの方の動きはないようだ。
まあでもこちらから婚約解消を申し出ても、議会とか教会とかそんなにすんなり通らないだろうから結果卒業パーティーの頃までは婚約解消できないのかもね…
舞踏会の翌日から夏期休暇なのでレイラはハミルトン家へ戻った。
「婚約解消を申し出るか?レイラ」
父ブライアンが隣に座るレイラの頬を撫でながら言う。
ブライアンはかなり良くなったとは言え、目が悪いので子供たちが小さい頃からこうして手で顔を確認している。
一番見えない頃には明るければ目の前の物や人の輪郭がぼんやりと判る位だったが、今は家具などの配置も判るし、かなり近付けば人の顔も判別がつく。
相当近付かないと判らないので、家族の顔しか見る機会はないらしいが。
「カイル殿下はお父様への手紙へ『いずれ婚約解消するつもり』って書いてたんだからこちらから申し出なくても良いんじゃないかしら?」
「しかしそれではレイラが捨てられた形になる。レイラの次の縁談にも差し支えるし…」
ああ、そう言えばミシェルが「王子に婚約破棄された令嬢を娶る人はいない」って言ってたっけ。
「サイラス殿下の言うように、王太子殿下や王太子妃殿下に事情を話せばレイラの…ハミルトン家の不利にはならないように出来るかも知れないし、父親としてはハミルトン家の不利になろうが何だろうが、かわいい娘を蔑ろにされて黙っていたくはないんだよ」
「お父様…」
「そうよ。レイラが辛い思いをする位なら伯爵位なんてオズバーン公爵家へ返しちゃって、平民になったって良いのよ」
スーザンが飲み物をブライアンとレイラの前に置きながら言う。
「お母様は極端ね」
「あら、その位の覚悟がないと、あわや国家反逆罪かって罪人の娘や孫なんてやってられないわ」
「伯爵家を返上したらライナス兄様が困るんじゃない?結婚したばかりなのに」
「レイラ、マリエルさんはハミルトン家に嫁いで来るだけあって、伯爵家のお嬢様育ちなのになかなか肝が座ってるわよ。多分旦那様が爵位を返上するって言っても『じゃあライナス様も私もお仕事を探さなきゃですね』ってケロっとして言うと思うわ」
普通の令嬢なら「貴族でなくなるなんて嫌!実家に帰らせていただきます」となる処なのに。
「私のマリエルの悪口はやめてください」
リビングにライナスが入って来る。後ろからライナスに着いて入って来るのがライナスの妻マリエルだ。
「あら、ライナス様、私は褒められたんだと思いましたけど」
きょとんとしてライナスを見つめるマリエル。
「例え平民になっても私はライナス様の妻ですって覚悟をお義母様は認めてくださってるんだなあ、と思いました」
「マリエル」
ライナスは破顔してマリエルの額に口付けを落とした。
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「ライアンは夏期休暇なのに戻らないのか?」
夕食の席でブライアンが言うと、レイラとライナスは顔を見合わせる。
「ライアンは今年四年生の担任でもあるし、初めて生徒会の顧問にもなったし、休暇と言えども忙しいんじゃないかな?」
ライナスがそう言うと、ブライアンは「そうか」と頷いた。
夕食後、レイラの部屋を訪れたライナスが言う。
「ライアンはレイラが領地にいる間は戻らないと言っていたな」
「え?ライアン兄様が帰って来ないの私のせい?」
「ライアンが言うには『何となくレイラに酷い事を言いそうな気がするから顔を合わせないようにしたい』んだそうだ」
攻略対象者の悪役令嬢への強制力ね…
一応妹を傷付けたくはないと言う気持ちはライアンにもあるらしい。
「まあライアンの事も、家の事も、レイラが気に病む事はない」
ライナスはレイラの頭をくしゃりと撫でて部屋を出て行った。
夏期休暇、ゲームではアリスは好感度の高い攻略対象者の領地でのバカンスに招かれてたわね。ここには悪役令嬢は登場せず、他の攻略対象者も遊びに来たりして閑話休題って感じで和やかに過ごせる一週間になるんだわ。
この攻略対象者ってやっぱりカイルなんだろうな…
王家の領地、山があって湖があってそこそこの大きさの街もあって、結構いい所よね。小さい頃にしか行った事はないけど。
秋期では攻略対象者とのデートイベントや、悪役令嬢からの嫌がらせの後で攻略対象者に慰められるイベントが何個かあった位かな。
冬期では、ヒロインが悪役令嬢から階段を突き落とされるのが大きな事件よね。それで怪我をしたヒロインに、攻略対象者が婚約者や恋人である悪役令嬢を排除しなくては、と決心して卒業パーティーでの断罪に繋がるんだから。
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もしも悪役令嬢の方から婚約解消を申し出たらどんな展開になるのだろう?
この間「さっさと婚約破棄すれば良いじゃない」と言い捨てた日から二週間近く経つが、特にカイルの方の動きはないようだ。
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