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結局、ミアが来てうやむやになったけど、グレイ殿下のあの行動は何だったんだろう?
腕を掴まれて、一緒に走って…泣いてる頬に触れられた。
それにエドモンド殿下が私の頬にキスをしたら気分が悪くなったって言われて…
イライザって名前呼び捨てにされたのも初めてだし、グレイでいいって…名前で呼ぶの禁止されてたの、解禁になったと思ってもいいのかな?
「イライザ」
グレイの声がイライザの脳内に再生された。
…ヤバい。思い出しただけで足の力が抜けそうだわ。
「イライザ?」
グレイの声とは違う声がイライザの耳に届く。
「あ!は、はい」
我に返ったイライザは、目の前のエドモンドを見上げた。
「心ここにあらずだね。俺とのダンス楽しくない?」
エドモンドは笑顔で言った。
「いえ!すみません。そんな事ありません。楽しいですわ」
「本当かなあ?」
今は春期末の舞踏会、イライザとエドモンドはダンスを踊っている最中なのだ。
「舞踏会のエスコートも、ファーストダンスも断られるし、こうしてダンスしてても上の空だし、俺少し寂しいよ?」
「申し訳ありません…」
ステップを踏みながらイライザが少し頭を下げると、エドモンドは苦笑いを浮かべる。
「まあ、卒業パーティーにはエスコートもファーストダンスも受けてもらえるように頑張るけどね」
「エドモンド殿下…」
ニコッと笑うエドモンド。
エドモンドの留学期間は来年の今日まで。イライザやエドモンドが四年生になった春期が終わった夏期休暇中に帰国する予定、つまり学園へ在籍するのは来年の舞踏会までだ。
あと一年。
ゲームの通りなら、今四年生のグレイ殿下の卒業パーティーで私は断罪され婚約破棄をされる。そしてグレイ殿下はミアと恋仲である事を公言され、その後婚約する…けど、現状グレイ殿下と私は婚約していないし、グレイ殿下へのストーカー行為を止めてミアを虐めなくなった私が断罪される理由もない、筈。
私、卒業パーティーまでにエスコートやファーストダンスを受ける程、エドモンド殿下を好きになれるのかな?
留学が終了する一年後には婚約するくらいエドモンド殿下を好きになるの?
赤い糸が繋がってるって事はそうなるって事よね?
…うん。そう、なれば良いな。
エドモンドとのダンスを終えて、壁際に移動したイライザは、他の女生徒と踊るエドモンドを眺めた。
手首から伸びる赤い糸。
リボン状のそれが伸びて…蝶々結びが見える。
「ゲームでの組み合わせと違う相手と繋がってる場合にあの結び目があるのかしら?」
蝶々結びを経て、自分の手首に繋がっている赤い糸を見ながら、イライザは小声で呟いた。
あの後確認してみたらジェフリー様とナタリア様の赤い糸には結び目はなかった。
でもロイ殿下とマリアンヌ様の赤い糸にはやっぱり蝶々結びがあった。
ゲームの描写では好感度を上げて攻略対象者と悪役令嬢との間の赤い糸を切ったら、ハンナの時のように糸は薄くなって消える。それから更に好感度を上げていけば攻略対象者とヒロインの間に細い赤い糸が薄っすら繋がって、更に更に好感度を上げていくと段々と糸が濃く、太くなって行って、最終的に元のリボンくらいの太さと濃さになる…だったよね?
赤い糸が蝶々結びにされてるような描写はなかったと思うけどなあ。
あの蝶々結び、もしかして、引っ張ったら解けちゃったりするのかな?
もし解けたとしたら、相手との関係はどうなるの?
曲が終わって、また違う女子生徒にダンスを申し込まれているらしいエドモンドをぼんやりと眺める。
…あれ?
イライザはふと、今日、グレイとミアがダンスをしていない事に気が付いた。
グレイ殿下と他の女生徒はダンスしてる。さっきも見たし。でもミアとは踊ってるのは見てないな。
じゃあミアは?いないのかな?
視線だけでミアの薄桃色の髪の毛を探す。
あ、いた。
ディアナ様とアレックス様と一緒なのね。
軽食や飲み物の置かれている場所に立って話しているディアナとアレックスとミア。
イライザのいる位置からはディアナとアレックスの背中が見え、二人の間から二人に正対しているミアの顔が見える。少し離れているのでミアの表情はハッキリとは見えなかったが、少なくとも笑っているようには見えなかった。
どうしたのかしら?
ミア、機嫌が悪いの?グレイ殿下と踊っていないから?
ミアがディアナとアレックスの間の何もない空間に手の平を上に向けて差し出すのが目に入る。
ミアが視線を上げ、イライザと視線がぶつかった。
何?ミアこっち見てる?
そして、イライザと視線を合わせたまま、ミアはその差し出した手を握る。
あ!
イライザは弾かれたように走り出した。
結局、ミアが来てうやむやになったけど、グレイ殿下のあの行動は何だったんだろう?
腕を掴まれて、一緒に走って…泣いてる頬に触れられた。
それにエドモンド殿下が私の頬にキスをしたら気分が悪くなったって言われて…
イライザって名前呼び捨てにされたのも初めてだし、グレイでいいって…名前で呼ぶの禁止されてたの、解禁になったと思ってもいいのかな?
「イライザ」
グレイの声がイライザの脳内に再生された。
…ヤバい。思い出しただけで足の力が抜けそうだわ。
「イライザ?」
グレイの声とは違う声がイライザの耳に届く。
「あ!は、はい」
我に返ったイライザは、目の前のエドモンドを見上げた。
「心ここにあらずだね。俺とのダンス楽しくない?」
エドモンドは笑顔で言った。
「いえ!すみません。そんな事ありません。楽しいですわ」
「本当かなあ?」
今は春期末の舞踏会、イライザとエドモンドはダンスを踊っている最中なのだ。
「舞踏会のエスコートも、ファーストダンスも断られるし、こうしてダンスしてても上の空だし、俺少し寂しいよ?」
「申し訳ありません…」
ステップを踏みながらイライザが少し頭を下げると、エドモンドは苦笑いを浮かべる。
「まあ、卒業パーティーにはエスコートもファーストダンスも受けてもらえるように頑張るけどね」
「エドモンド殿下…」
ニコッと笑うエドモンド。
エドモンドの留学期間は来年の今日まで。イライザやエドモンドが四年生になった春期が終わった夏期休暇中に帰国する予定、つまり学園へ在籍するのは来年の舞踏会までだ。
あと一年。
ゲームの通りなら、今四年生のグレイ殿下の卒業パーティーで私は断罪され婚約破棄をされる。そしてグレイ殿下はミアと恋仲である事を公言され、その後婚約する…けど、現状グレイ殿下と私は婚約していないし、グレイ殿下へのストーカー行為を止めてミアを虐めなくなった私が断罪される理由もない、筈。
私、卒業パーティーまでにエスコートやファーストダンスを受ける程、エドモンド殿下を好きになれるのかな?
留学が終了する一年後には婚約するくらいエドモンド殿下を好きになるの?
赤い糸が繋がってるって事はそうなるって事よね?
…うん。そう、なれば良いな。
エドモンドとのダンスを終えて、壁際に移動したイライザは、他の女生徒と踊るエドモンドを眺めた。
手首から伸びる赤い糸。
リボン状のそれが伸びて…蝶々結びが見える。
「ゲームでの組み合わせと違う相手と繋がってる場合にあの結び目があるのかしら?」
蝶々結びを経て、自分の手首に繋がっている赤い糸を見ながら、イライザは小声で呟いた。
あの後確認してみたらジェフリー様とナタリア様の赤い糸には結び目はなかった。
でもロイ殿下とマリアンヌ様の赤い糸にはやっぱり蝶々結びがあった。
ゲームの描写では好感度を上げて攻略対象者と悪役令嬢との間の赤い糸を切ったら、ハンナの時のように糸は薄くなって消える。それから更に好感度を上げていけば攻略対象者とヒロインの間に細い赤い糸が薄っすら繋がって、更に更に好感度を上げていくと段々と糸が濃く、太くなって行って、最終的に元のリボンくらいの太さと濃さになる…だったよね?
赤い糸が蝶々結びにされてるような描写はなかったと思うけどなあ。
あの蝶々結び、もしかして、引っ張ったら解けちゃったりするのかな?
もし解けたとしたら、相手との関係はどうなるの?
曲が終わって、また違う女子生徒にダンスを申し込まれているらしいエドモンドをぼんやりと眺める。
…あれ?
イライザはふと、今日、グレイとミアがダンスをしていない事に気が付いた。
グレイ殿下と他の女生徒はダンスしてる。さっきも見たし。でもミアとは踊ってるのは見てないな。
じゃあミアは?いないのかな?
視線だけでミアの薄桃色の髪の毛を探す。
あ、いた。
ディアナ様とアレックス様と一緒なのね。
軽食や飲み物の置かれている場所に立って話しているディアナとアレックスとミア。
イライザのいる位置からはディアナとアレックスの背中が見え、二人の間から二人に正対しているミアの顔が見える。少し離れているのでミアの表情はハッキリとは見えなかったが、少なくとも笑っているようには見えなかった。
どうしたのかしら?
ミア、機嫌が悪いの?グレイ殿下と踊っていないから?
ミアがディアナとアレックスの間の何もない空間に手の平を上に向けて差し出すのが目に入る。
ミアが視線を上げ、イライザと視線がぶつかった。
何?ミアこっち見てる?
そして、イライザと視線を合わせたまま、ミアはその差し出した手を握る。
あ!
イライザは弾かれたように走り出した。
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