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「…オリビア、動いても大丈夫か?」
 眉間に皺を寄せてダグラスが問う。オリビアが頷くと、ゆるゆると腰を動かす。
「は…オリビアの中、熱くて…限界…」
「ん…」
 圧迫感に息が漏れる。
 もっと痛いかと思った。は身体を引き裂かれたと思ったから。
 ダグラスが…大切に大切にしてくれたから…。
 オリビアは眉間に皺を寄せて息を乱すダグラスを愛おしいと思った。
 こんなダグラス…もう他の誰にも見せたくない。
「は…オリビア…」
 最初は小さくゆっくりしていた動きが段々早く大きくなる。ヒリヒリした痛みが遠のき、ぞくぞくとした感覚が背中を上ってくる。
「あ…あ…」
 何も考えられなくなり、ダグラスの作る揺れにただ揺さぶられる。
 ダグラスの手が胸の膨らみを揉むと、先端に口付けた。
「あっ。ん」
「かわいい…はあ…オリビア…」
 先端を大きく舐めると口に含む。
「あ、あ…」
 思わず背を反らすと反対の先端を指で摘まれた。
「あっ…ん…んっ」
「オリビア…」
 抽送がますます早くなる。
 ダグラスはオリビアの唇にキスをすると、ギュッと抱きしめた。
「オリビア……っ!」
 オリビアを一層強く抱きしめながら吐精した。

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「オリビア様、申し訳ありません」
 ダグラスの部屋に入って来るなり、ジルはオリビアの前で跪いた。右腕を三角巾で吊っている。
「ジル。怪我は大丈夫なの?」
 ソファに座っていたオリビアは、跪いたジルの前にペタリと座り込んだ。
「…オリビア様、謝罪は謝罪として受け付けてくださいよ」
 ジルが恨めしそうに見るので、思わずオリビアは吹き出した。
「謝罪は受けるわ。でもダグラスを呼んでくれて私は助かったんだし、ジルが無事なら良いの」
 オリビアがソファに座るダグラスを見ると、ダグラスは頷く。
「オリビア様…」
「怪我は?酷いの?」
「…あんな金で何でもするような奴に不覚を取るとは…あいつ本当に不意打ちだけは天下一品…」
 オリビアをこの屋敷から拐ってガイアの元へ連れて行った男を思い出しているらしい。ジルが悔しそうにギリギリと歯軋りをする。
「ジル」
 ジルの後ろに立ったルイが無表情で言うと、ジルは真顔になって俯く。
「…神経が切れていると言われました。このまま『影』は廃業する事になるかと」
「え!?」
 驚くオリビアに、ジルは眉を寄せて笑顔を作る。
「まあ『裏』には身体を使わなくても良い仕事も沢山ありますから、大丈夫ですよ」
 ジルは左手でオリビアの手を取って、ソファに座るように促した。
「ジル、もしジルさえ良ければ私の侍女…メイド…何でも良いから私の側にいてくれないかしら?」
 ジルは立ち上がると、
「ありがたいお話ですが『裏』から抜けるのはそう簡単ではないですし、今の依頼人の仕事もまだ残っていますので」
 と言う。
「ジル、他の人の依頼中なのに私の所へ来てくれてたの?」
「うーん…と、言うか、これも仕事の範疇と言うか…」
 ジルは顎に手をやり、困ったように言う。
「ジル。依頼人の事を話して良いのか?」
 ダグラスが言うと、ジルは頷く。
「普通はもちろんご法度ですが、この依頼に限っては良いかと」
「そうか」
「…どういう事?」
 訝し気にジルを見上げるオリビアに言った。
「私の依頼人は元エバンス侯爵、ヒューゴ様です」

 オリビアの父ヒューゴは、家族から離れる際、ジルへ家族の様子を自分に知らせる事、家族に不審な者が近付いた時はそれを廃する事を依頼した。
 ジルは王都とセヴァリー家を行き来し、情報を仕入れ、オリビア達の様子を見、ヒューゴへ知らせていたのだ。

「じゃあ、ジルはお父様の居場所を知っているの?」
「はい。しかしそれは言えません」
「そう…一つだけ聞いても良い?」
「答えられるか分かりませんが、どうぞ」
「…お父様は…帰って来るつもりはあるの?」
 オリビアが上目遣いでジルを見ながら聞くと、ジルは片眉を上げた。
「オリビア様が、幸せになれば」
「…え?」
「ヒューゴ様は三年前の事件は自分のせいとお考えですから。自分のせいで傷付いたオリビア様が幸せになるまでは帰ることはできない、と」
「私が…幸せに…」
「オリビア様がご結婚でもされて、分かりやすく幸せな様子を見せたら帰る気になられるのでは?」
「…結婚」
 オリビアは視線を彷徨わせて、俯く。

 ダグラスに「結婚してくれ」と言われて、確かに「はい」と言ったけど…でも。

「…私、まだ結婚は、しないわ」
 オリビアは膝の上でぎゅっと拳を握った。


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