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エピローグ
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ふと横に向くと、ユリウスと目が合った。
「ロッテ?」
…どうしよう。泣きそう。
「泣いてるのか?…かわいいな」
ユリウスの手がシャーロットの頬に触れる。
キャーッ!
歓声が上がる。
シャーロットとユリウスは婚儀を終えて、王城のバルコニーに立っていた。
「あの王太子妃選定から六年か。ようやくこの日を迎えられたな」
ユリウスはシャーロットの頬を撫でながら言う。
「はい」
シャーロットは涙を湛えた瞳でユリウスを見た。
生まれ変わるなら、小さくてかわいい女の子になりたかった。
でも、ユリウス殿下がこんな私を好きだと言ってくれた。だから私は今の私に生まれ変われて良かった。
スアレスが立太子し、直ぐにユリウスとルーカスは準備をしていた防災研究所を立ち上げた。
あれから大きな地震は起きていないが、小さな地震は何度かあり、建築物の耐震化を進めつつ、火災、豪雨、暴風、豪雪などの自然災害にも備えるべく、精力的に活動をしている。
「これで本当にルーカスが俺の兄になるんだな…」
感慨深げにユリウスは言う。
「お兄様も嬉しそうでした」
ルーカスとマリアは、マリアが学園を卒業した時に結婚した。
侍女から伯爵家の嫡男夫人となったマリアに、屋敷の使用人はやりにくいのではないかと心配していたが、屋敷中の人間が「いずれそうなるだろう」と思っていたようで、想像していたような軋轢などは何もなく過ごしている。
シャーロットとマリアはレース編み小物の販路を徐々に拡大して行き、もうすぐ王都の通りに路面店をオープンする予定だ。
「こうして不自然なく会話できるのも、ロッテの背が高いおかげだな」
ユリウスはニコリと笑った。
確かにバルコニーの下には国民たちが集まり、ユリウスとシャーロットの一挙手一投足に歓声が上がる今の状況で、ユリウスと身長差があれば会話さえもままならないだろう。
私が背が高い事にコンプレックスがあるから、ユリウス殿下が背が高い事のメリットをいつも口にしてくださる。そのお心がとても嬉しい。
う~、幸せすぎて、また涙が出そう。
涙ぐんだシャーロットに気付くと、ユリウスは目元に口付けた。
「幸せな涙の味だ」
キャーッ!と、歓声。
「…恥ずかしいです」
シャーロットは頬を染めて言う。
五年経って、二人きりの時に抱きしめられる事、甘える事、甘えられる事、キスも、それが時々深くなるのにも、随分慣れて来た。それでもまだ人前でのスキンシップは恥ずかしい。
「恥ずかしがるロッテがかわいい」
ユリウスはにっこりと笑うと、頬に、反対の頬に、額に、顎にと、軽く唇で次々に触れた。
「ひゃあ。ユリウス殿下、あの、ひゃ」
歓声がキャアキャアと上がる。
「ロッテ」
チュッと額にもう一度キスをするとシャーロットの額にコツンと額を合わせた。
「二人の時に敬称はいらない」
「でもまだ二人きりじゃありませんよ?」
バルコニーの下には数千の民衆がいるし、バルコニーから部屋に戻れば宰相や侍従、騎士たちもいる。ルーカスやグリフも直ぐそこにいるのだ。
「俺たちの会話は他の誰にも聞こえないんだから二人きりみたいな物だ」
「いえいえいえいえ」
「大丈夫。聞こえないから、呼んで?」
額をグリグリと押し付けるユリウス。
か、顔が近い。
「後で…」
「今」
至近距離で紫の瞳がシャーロットを見ていた。
我儘。かわいい。ずるい。好き。
「…ユリウス」
目を瞑って呟くように言う。
ユリウスは嬉しそうに笑うと、シャーロットの唇にキスをした。
「!」
「好きだよ。俺のシャーロット」
キャーッ!!
今までで一番大きな歓声が響いた。
ー了ー
ふと横に向くと、ユリウスと目が合った。
「ロッテ?」
…どうしよう。泣きそう。
「泣いてるのか?…かわいいな」
ユリウスの手がシャーロットの頬に触れる。
キャーッ!
歓声が上がる。
シャーロットとユリウスは婚儀を終えて、王城のバルコニーに立っていた。
「あの王太子妃選定から六年か。ようやくこの日を迎えられたな」
ユリウスはシャーロットの頬を撫でながら言う。
「はい」
シャーロットは涙を湛えた瞳でユリウスを見た。
生まれ変わるなら、小さくてかわいい女の子になりたかった。
でも、ユリウス殿下がこんな私を好きだと言ってくれた。だから私は今の私に生まれ変われて良かった。
スアレスが立太子し、直ぐにユリウスとルーカスは準備をしていた防災研究所を立ち上げた。
あれから大きな地震は起きていないが、小さな地震は何度かあり、建築物の耐震化を進めつつ、火災、豪雨、暴風、豪雪などの自然災害にも備えるべく、精力的に活動をしている。
「これで本当にルーカスが俺の兄になるんだな…」
感慨深げにユリウスは言う。
「お兄様も嬉しそうでした」
ルーカスとマリアは、マリアが学園を卒業した時に結婚した。
侍女から伯爵家の嫡男夫人となったマリアに、屋敷の使用人はやりにくいのではないかと心配していたが、屋敷中の人間が「いずれそうなるだろう」と思っていたようで、想像していたような軋轢などは何もなく過ごしている。
シャーロットとマリアはレース編み小物の販路を徐々に拡大して行き、もうすぐ王都の通りに路面店をオープンする予定だ。
「こうして不自然なく会話できるのも、ロッテの背が高いおかげだな」
ユリウスはニコリと笑った。
確かにバルコニーの下には国民たちが集まり、ユリウスとシャーロットの一挙手一投足に歓声が上がる今の状況で、ユリウスと身長差があれば会話さえもままならないだろう。
私が背が高い事にコンプレックスがあるから、ユリウス殿下が背が高い事のメリットをいつも口にしてくださる。そのお心がとても嬉しい。
う~、幸せすぎて、また涙が出そう。
涙ぐんだシャーロットに気付くと、ユリウスは目元に口付けた。
「幸せな涙の味だ」
キャーッ!と、歓声。
「…恥ずかしいです」
シャーロットは頬を染めて言う。
五年経って、二人きりの時に抱きしめられる事、甘える事、甘えられる事、キスも、それが時々深くなるのにも、随分慣れて来た。それでもまだ人前でのスキンシップは恥ずかしい。
「恥ずかしがるロッテがかわいい」
ユリウスはにっこりと笑うと、頬に、反対の頬に、額に、顎にと、軽く唇で次々に触れた。
「ひゃあ。ユリウス殿下、あの、ひゃ」
歓声がキャアキャアと上がる。
「ロッテ」
チュッと額にもう一度キスをするとシャーロットの額にコツンと額を合わせた。
「二人の時に敬称はいらない」
「でもまだ二人きりじゃありませんよ?」
バルコニーの下には数千の民衆がいるし、バルコニーから部屋に戻れば宰相や侍従、騎士たちもいる。ルーカスやグリフも直ぐそこにいるのだ。
「俺たちの会話は他の誰にも聞こえないんだから二人きりみたいな物だ」
「いえいえいえいえ」
「大丈夫。聞こえないから、呼んで?」
額をグリグリと押し付けるユリウス。
か、顔が近い。
「後で…」
「今」
至近距離で紫の瞳がシャーロットを見ていた。
我儘。かわいい。ずるい。好き。
「…ユリウス」
目を瞑って呟くように言う。
ユリウスは嬉しそうに笑うと、シャーロットの唇にキスをした。
「!」
「好きだよ。俺のシャーロット」
キャーッ!!
今までで一番大きな歓声が響いた。
ー了ー
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