長身令嬢ですが、王太子妃の選考大会の招待状が届きました。

ねーさん

文字の大きさ
上 下
88 / 98

87

しおりを挟む
87

 また、おでこにキキキキスされた!!
「…あうぅ」
 額に口付けられ、手で顔を隠したくてジタバタするシャーロット。しかしユリウスに抱きしめられているので、手を上げる事が出来ずに、ユリウスの上着を握りしめる。
 顔を真っ赤にしたシャーロットはユリウスの肩に顔を埋めた。
「抱きしめたら、自然に額にキスができる。少し顔を傾ければ、頬に、少し下を向けば唇にも」
 ユリウスは楽しそうに言う。
 く、くくく唇に、キス?
 それは心臓が保たない!
 シャーロットはますます赤くなってユリウスの肩に額を押し付けた。
「ロッテ…俺とキスするのは嫌?」
 ユリウスが少し拗ねたような声で言う。
 そんな声出すの、ズルい!
 嫌じゃない。嫌な訳ない。けど今は無理!
「い、やでは…ないですけど…」
「けど?」
「…心臓が破裂します」
 蚊の鳴くような声で言う。
「ロッテ、かわいいな」
 クスクスと笑いながらユリウスはシャーロットの髪を撫でた。

「おそらく俺の婚姻に関しては、スアレスが立太子し、俺の事業にある程度の道筋ができた後でないと具体的な話にはならないと思う。だからそれまでは婚約もできないままかも知れないが、俺はロッテが好きだから…待っていてくれないか?」
 シャーロットはこくんと頷くと、ユリウスの上着を握る手の力を緩めて、そろそろと背中へと手を回す。
 ユリウス殿下がこうして気持ちを伝えてくださってるんだもん。恥ずかしいけど、私だってちゃんと伝えなきゃ。
「…ユリウス殿下…好きです」
 シャーロットの手が背中に回ったのに気付く。ドキドキとした鼓動が伝わる。ユリウスは破顔してシャーロットを抱く手に力を入れた。

「好きだよ。俺のシャーロットかわいい女の子

-----

「ルーカス様はユリウス殿下と一緒に地震対策の事業をやられるんですよね?」
 休日のウェイン家で侍女のお仕着せでルーカスにお茶を出しながらマリアは言う。
「ああ。前世で建築関係だった記憶が活かせる。私はもしかするとこのために転生したのかもな」
 ソファに座るルーカスは満足気に言った。
「このために?」
「ああ。もちろん一番はロッテを守るためだが」

 紅茶のポットをワゴンに置く。
「ロッテと言えば、ユリウス殿下にプロポーズされたって言ってましたよ」
「ああ…まあ実際結婚できるのはロッテが学園を卒業してから数年後になるだろうけどな」
「真っ赤っ赤な顔して寮に戻って来たからどうしたのかと思って聞いてみたら、デコチューされて、初めて抱きしめられたらしいです。それであれだけ真っ赤になるなんて、ロッテってホントかわいいですよねぇ」
 ワゴンの上を片付けながら言う。
「マリアはその位じゃあ赤くならないのか?」
 ルーカスがそう言うと、マリアは横目でルーカスを見た。
「……」
「マリア?」
「…された事ないからわかりません」
 ワゴンへ視線を落として少し唇を尖らせて言う。
「マリア」
「だって、ルーカス様、私の事好きだって言ったの、あの地震の後のロッテの病室での一回だけですよ?あれからも特に何も言われてないし…」
 下を向いたままで言うマリア。
「…ああ、そうか」
 ルーカスはマリアの手を取るとグイッと引いて、自分の隣にポスンと座らせた。
「私、今仕事中…」
 ルーカスはマリアの頬に手を当てると、反対の頬にチュッと口付けた。
「!」
「私は言葉が足りないんだな」
「言葉も、行動も、です」
「そうだな」
 マリアをそっと抱き寄せる。
「私の中ではマリアが学園を卒業したら直ぐに結婚するともう決まっているんだ。マリアの家へ婚約を申し込む段取りもすでに考えてある」
「…言ってくれなきゃわかりません」
 マリアはルーカスの胸に顔を押しつけて、背中にしがみ付くように手を回した。
「そうだな。ごめん」
 マリアの背中を撫でる。
「私の気持ちは確認しなくて良いんですか?」
「マリアは私を好きだろ?」
 マリアはしがみ付いた手でルーカスの背中をバシンッと叩いた。
「自信過剰…」
 胸に顔を押し付けたまま言う。
 きっとロッテに負けないくらい真っ赤なんだろうな。
 ルーカスは微笑んでマリアの頭頂部に口付けを落とした。







しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

蔑ろにされた王妃と見限られた国王

奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています 国王陛下には愛する女性がいた。 彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。 私は、そんな陛下と結婚した。 国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。 でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。 そしてもう一つ。 私も陛下も知らないことがあった。 彼女のことを。彼女の正体を。

悪妃になんて、ならなきゃよかった

よつば猫
恋愛
表紙のめちゃくちゃ素敵なイラストは、二ノ前ト月先生からいただきました✨🙏✨ 恋人と引き裂かれたため、悪妃になって離婚を狙っていたヴィオラだったが、王太子の溺愛で徐々に……

【完結】消された第二王女は隣国の王妃に熱望される

風子
恋愛
ブルボマーナ国の第二王女アリアンは絶世の美女だった。 しかし側妃の娘だと嫌われて、正妃とその娘の第一王女から虐げられていた。 そんな時、隣国から王太子がやって来た。 王太子ヴィルドルフは、アリアンの美しさに一目惚れをしてしまう。 すぐに婚約を結び、結婚の準備を進める為に帰国したヴィルドルフに、突然の婚約解消の連絡が入る。 アリアンが王宮を追放され、修道院に送られたと知らされた。 そして、新しい婚約者に第一王女のローズが決まったと聞かされるのである。 アリアンを諦めきれないヴィルドルフは、お忍びでアリアンを探しにブルボマーナに乗り込んだ。 そしてある夜、2人は運命の再会を果たすのである。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

10年間の結婚生活を忘れました ~ドーラとレクス~

緑谷めい
恋愛
 ドーラは金で買われたも同然の妻だった――  レクスとの結婚が決まった際「ドーラ、すまない。本当にすまない。不甲斐ない父を許せとは言わん。だが、我が家を助けると思ってゼーマン伯爵家に嫁いでくれ。頼む。この通りだ」と自分に頭を下げた実父の姿を見て、ドーラは自分の人生を諦めた。齢17歳にしてだ。 ※ 全10話完結予定

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

お久しぶりです、元旦那様

mios
恋愛
「お久しぶりです。元旦那様。」

処理中です...