長身令嬢ですが、王太子妃の選考大会の招待状が届きました。

ねーさん

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 また、おでこにキキキキスされた!!
「…あうぅ」
 額に口付けられ、手で顔を隠したくてジタバタするシャーロット。しかしユリウスに抱きしめられているので、手を上げる事が出来ずに、ユリウスの上着を握りしめる。
 顔を真っ赤にしたシャーロットはユリウスの肩に顔を埋めた。
「抱きしめたら、自然に額にキスができる。少し顔を傾ければ、頬に、少し下を向けば唇にも」
 ユリウスは楽しそうに言う。
 く、くくく唇に、キス?
 それは心臓が保たない!
 シャーロットはますます赤くなってユリウスの肩に額を押し付けた。
「ロッテ…俺とキスするのは嫌?」
 ユリウスが少し拗ねたような声で言う。
 そんな声出すの、ズルい!
 嫌じゃない。嫌な訳ない。けど今は無理!
「い、やでは…ないですけど…」
「けど?」
「…心臓が破裂します」
 蚊の鳴くような声で言う。
「ロッテ、かわいいな」
 クスクスと笑いながらユリウスはシャーロットの髪を撫でた。

「おそらく俺の婚姻に関しては、スアレスが立太子し、俺の事業にある程度の道筋ができた後でないと具体的な話にはならないと思う。だからそれまでは婚約もできないままかも知れないが、俺はロッテが好きだから…待っていてくれないか?」
 シャーロットはこくんと頷くと、ユリウスの上着を握る手の力を緩めて、そろそろと背中へと手を回す。
 ユリウス殿下がこうして気持ちを伝えてくださってるんだもん。恥ずかしいけど、私だってちゃんと伝えなきゃ。
「…ユリウス殿下…好きです」
 シャーロットの手が背中に回ったのに気付く。ドキドキとした鼓動が伝わる。ユリウスは破顔してシャーロットを抱く手に力を入れた。

「好きだよ。俺のシャーロットかわいい女の子

-----

「ルーカス様はユリウス殿下と一緒に地震対策の事業をやられるんですよね?」
 休日のウェイン家で侍女のお仕着せでルーカスにお茶を出しながらマリアは言う。
「ああ。前世で建築関係だった記憶が活かせる。私はもしかするとこのために転生したのかもな」
 ソファに座るルーカスは満足気に言った。
「このために?」
「ああ。もちろん一番はロッテを守るためだが」

 紅茶のポットをワゴンに置く。
「ロッテと言えば、ユリウス殿下にプロポーズされたって言ってましたよ」
「ああ…まあ実際結婚できるのはロッテが学園を卒業してから数年後になるだろうけどな」
「真っ赤っ赤な顔して寮に戻って来たからどうしたのかと思って聞いてみたら、デコチューされて、初めて抱きしめられたらしいです。それであれだけ真っ赤になるなんて、ロッテってホントかわいいですよねぇ」
 ワゴンの上を片付けながら言う。
「マリアはその位じゃあ赤くならないのか?」
 ルーカスがそう言うと、マリアは横目でルーカスを見た。
「……」
「マリア?」
「…された事ないからわかりません」
 ワゴンへ視線を落として少し唇を尖らせて言う。
「マリア」
「だって、ルーカス様、私の事好きだって言ったの、あの地震の後のロッテの病室での一回だけですよ?あれからも特に何も言われてないし…」
 下を向いたままで言うマリア。
「…ああ、そうか」
 ルーカスはマリアの手を取るとグイッと引いて、自分の隣にポスンと座らせた。
「私、今仕事中…」
 ルーカスはマリアの頬に手を当てると、反対の頬にチュッと口付けた。
「!」
「私は言葉が足りないんだな」
「言葉も、行動も、です」
「そうだな」
 マリアをそっと抱き寄せる。
「私の中ではマリアが学園を卒業したら直ぐに結婚するともう決まっているんだ。マリアの家へ婚約を申し込む段取りもすでに考えてある」
「…言ってくれなきゃわかりません」
 マリアはルーカスの胸に顔を押しつけて、背中にしがみ付くように手を回した。
「そうだな。ごめん」
 マリアの背中を撫でる。
「私の気持ちは確認しなくて良いんですか?」
「マリアは私を好きだろ?」
 マリアはしがみ付いた手でルーカスの背中をバシンッと叩いた。
「自信過剰…」
 胸に顔を押し付けたまま言う。
 きっとロッテに負けないくらい真っ赤なんだろうな。
 ルーカスは微笑んでマリアの頭頂部に口付けを落とした。







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