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明日はもうジムカーナ大会かあ。
最初の練習含めて五回王城へ行ったけど、ユリウス殿下が見に来られたの最初と三回目だけだったな。三回目はご挨拶だけで帰られたから、実質練習を見られたのは初回だけかも。
フェリさんと騎士様は練習しながらさり気なく色々話して随分仲良くなったみたい。
明日の大会が終わって、二日後には陛下が王都に戻られて、一週間後にはユリウス殿下の婚約が発表されるから、それからはもっと堂々と、交際だってできるわね。
「婚約発表…か」
シャーロットはグリフからの手紙を見ながら呟く。
今日、辺境伯領から出された手紙が、学園の寮にいるシャーロットの手元に届いた。
グリフ様のお手紙の内容よりも、ユリウス殿下の婚約発表の方が気にかかるなんて…
シャーロットはため息を吐きながら便箋を封筒に仕舞った。
翌日、クラス代表を応援するため制服を着てマリアと学園の馬場に出掛ける。
「ロッテ、何か元気ない?」
馬場の周りの、段になった観客席に腰掛け、競技を見ながらマリアがシャーロットの顔を覗き込む。
「マリアには隠せないわね」
苦笑いするシャーロット。
「…でもロッテ、肝心の事は話してくれないわ」
「え?」
シャーロットがマリアの方を見ると、マリアはニコリと笑う。
「好きな人の事とか」
「!」
目を泳がせるシャーロット。
「好き…とかじゃ…」
ない、とは言えないけど、好きとも言えない。
「まあ無理に話させるつもりはないの。私だってルーカス様の事、最近まで話してなかったんだしね。それで、今日元気がないのは昨日グリフ様から来たお手紙のせい?」
マリアが優しく笑う。
マリア。優しい。今は…話せなくてごめんね。
「…違う、とも言えないけど、違うかな」
苦笑いしながら言った。
-----
フェリシティの出番が終わってしばらく経つと
「ロッテ、ポニーがいるんだって。行ってみない?」
マリアが厩舎の方を指差して言った。
競技が行われている馬場とは別の馬場で体験乗馬をしていて、競技用の馬で障害を飛ぶ体験をしたり、普段は乗れない荷馬車を引く馬、ポニーなどに乗る事ができるのだ。
「乗るの?」
「見るだけ、見るだけ」
あ、体験乗馬の馬場行くのって生徒会役員のいるテントの側を通るんだ。
競技が行われている馬場の側に本部のテントがあり、生徒会役員たちがいるのが見える。そのテントの横の道を通って、テントの奥側にあるのが体験乗馬の行われている馬場だ。
テントの奥に置かれた椅子に座る紫色の髪の男性。
ユリウス殿下だ。下を向いて何か見ておられるから…気付かれないかな?
ユリウスのいるテントに近付くにつれ、シャーロットの心臓はドクドクと脈打つ。
気付かれたいような、気付かれたくないような…
ユリウスがふっと顔を上げ、もうすぐテントに差し掛かる処だったシャーロットと目が合った。
わ。目が合っちゃった。挨拶、挨拶しなきゃ。
ドクンドクンと大きく脈打つ心臓を手で押さえていると、ユリウスが「ロッテ」とシャーロットを呼んで、笑った。
思わず立ち止まると、ユリウスは立ち上がってシャーロットとマリアに近付いて来る。
「フェリシティ、練習の成果が良く出ていたな」
ユリウスが笑いながら言う。
「はい。タイムも早かったですし」
シャーロットはドキドキしながら言った。
「上位に入りそうですよね」
マリアがそう言うと、ユリウスとシャーロットが頷く。
「体験乗馬に行くのか?」
「あ、いえ、乗らないんですけど、ポニーを見に行こうかと思いまして」
「ああ…」
ユリウスが顎に手を当ててシャーロットを見る。
あ、これ遠駆けの時の私の乗馬の下手さを思い出しておられるんだわ。
「ロッテは…そうだな。乗らない方が良いな」
「ちょっ!殿下、酷いです」
「あはははは」
しみじみと言うユリウスに、大笑いするマリア。
和やかな空気が流れて、笑顔のユリウスに、シャーロットはホッと息を吐いた。
テントに戻るユリウスに軽く会釈をしてまたマリアと歩き出す。
何か普通に話せて、良かった。
「ねえロッテ、話せる時が来たら話してね」
マリアが歩きながらシャーロットの手を握る。
「…うん」
シャーロットもマリアの手を握り返した。
明日はもうジムカーナ大会かあ。
最初の練習含めて五回王城へ行ったけど、ユリウス殿下が見に来られたの最初と三回目だけだったな。三回目はご挨拶だけで帰られたから、実質練習を見られたのは初回だけかも。
フェリさんと騎士様は練習しながらさり気なく色々話して随分仲良くなったみたい。
明日の大会が終わって、二日後には陛下が王都に戻られて、一週間後にはユリウス殿下の婚約が発表されるから、それからはもっと堂々と、交際だってできるわね。
「婚約発表…か」
シャーロットはグリフからの手紙を見ながら呟く。
今日、辺境伯領から出された手紙が、学園の寮にいるシャーロットの手元に届いた。
グリフ様のお手紙の内容よりも、ユリウス殿下の婚約発表の方が気にかかるなんて…
シャーロットはため息を吐きながら便箋を封筒に仕舞った。
翌日、クラス代表を応援するため制服を着てマリアと学園の馬場に出掛ける。
「ロッテ、何か元気ない?」
馬場の周りの、段になった観客席に腰掛け、競技を見ながらマリアがシャーロットの顔を覗き込む。
「マリアには隠せないわね」
苦笑いするシャーロット。
「…でもロッテ、肝心の事は話してくれないわ」
「え?」
シャーロットがマリアの方を見ると、マリアはニコリと笑う。
「好きな人の事とか」
「!」
目を泳がせるシャーロット。
「好き…とかじゃ…」
ない、とは言えないけど、好きとも言えない。
「まあ無理に話させるつもりはないの。私だってルーカス様の事、最近まで話してなかったんだしね。それで、今日元気がないのは昨日グリフ様から来たお手紙のせい?」
マリアが優しく笑う。
マリア。優しい。今は…話せなくてごめんね。
「…違う、とも言えないけど、違うかな」
苦笑いしながら言った。
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フェリシティの出番が終わってしばらく経つと
「ロッテ、ポニーがいるんだって。行ってみない?」
マリアが厩舎の方を指差して言った。
競技が行われている馬場とは別の馬場で体験乗馬をしていて、競技用の馬で障害を飛ぶ体験をしたり、普段は乗れない荷馬車を引く馬、ポニーなどに乗る事ができるのだ。
「乗るの?」
「見るだけ、見るだけ」
あ、体験乗馬の馬場行くのって生徒会役員のいるテントの側を通るんだ。
競技が行われている馬場の側に本部のテントがあり、生徒会役員たちがいるのが見える。そのテントの横の道を通って、テントの奥側にあるのが体験乗馬の行われている馬場だ。
テントの奥に置かれた椅子に座る紫色の髪の男性。
ユリウス殿下だ。下を向いて何か見ておられるから…気付かれないかな?
ユリウスのいるテントに近付くにつれ、シャーロットの心臓はドクドクと脈打つ。
気付かれたいような、気付かれたくないような…
ユリウスがふっと顔を上げ、もうすぐテントに差し掛かる処だったシャーロットと目が合った。
わ。目が合っちゃった。挨拶、挨拶しなきゃ。
ドクンドクンと大きく脈打つ心臓を手で押さえていると、ユリウスが「ロッテ」とシャーロットを呼んで、笑った。
思わず立ち止まると、ユリウスは立ち上がってシャーロットとマリアに近付いて来る。
「フェリシティ、練習の成果が良く出ていたな」
ユリウスが笑いながら言う。
「はい。タイムも早かったですし」
シャーロットはドキドキしながら言った。
「上位に入りそうですよね」
マリアがそう言うと、ユリウスとシャーロットが頷く。
「体験乗馬に行くのか?」
「あ、いえ、乗らないんですけど、ポニーを見に行こうかと思いまして」
「ああ…」
ユリウスが顎に手を当ててシャーロットを見る。
あ、これ遠駆けの時の私の乗馬の下手さを思い出しておられるんだわ。
「ロッテは…そうだな。乗らない方が良いな」
「ちょっ!殿下、酷いです」
「あはははは」
しみじみと言うユリウスに、大笑いするマリア。
和やかな空気が流れて、笑顔のユリウスに、シャーロットはホッと息を吐いた。
テントに戻るユリウスに軽く会釈をしてまたマリアと歩き出す。
何か普通に話せて、良かった。
「ねえロッテ、話せる時が来たら話してね」
マリアが歩きながらシャーロットの手を握る。
「…うん」
シャーロットもマリアの手を握り返した。
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