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「ユリウス殿下はその様な誤解をされる方ではないかと」
「そう…そうよね」
ルーカスの言葉に王妃はホッとした様に息を吐く。
「それに…ユーリ、本当に婚約するつもりなのかしら?」
「?」
オードリー・グッドウィン公爵令嬢との婚約についてはユリウス殿下自身が国王陛下と王妃殿下に報告されて、陛下とグッドウィン公爵の内諾をもって議会に掛けられている筈だが?
「もう議会の承認も間近だというのはわかってるの。ただ…」
王妃は少し言いにくそうにルーカスを見る。
「ユーリ、あの娘を庇って怪我をしたでしょう?」
「はい」
ロッテの事か。
「まず優先して護るべきなのは自分の身。そう、第一王子として生まれた時から叩き込まれている筈のユーリが、それでも思わず庇ってしまう程……」
王妃がそう言うと、ルーカスは眼を閉じた。
王妃はふっと息を吐くと
「もう言わない約束だったわね」
そう言って微笑む。
「……」
「これからますます孤独になっていくユーリの伴侶がせめて本当に思い合える相手なら良いなと、ただそう思っただけなの。でも、そうよね、選考までしてユーリがオードリーさんを選んだのだもの。これからオードリーさんとそういう関係を築いていけば良いのよね」
自分に言い聞かせる様に王妃は言った。
-----
寮のシャーロットの部屋にやって来たフェリシティは学園の行事のクラス代表に選ばれたと言う。
「ジムカーナ大会?」
「そうなの。クラスで一人づつ出場するのよ。ロッテさんのクラスは決まったの?」
ジムカーナとは馬術競技の一種で、低めの横木やスラロームを配された経路を軽早足で駆け、走行時間と馬を御する技術を競う初心者向けの競技だ。
学園では舞踏会や卒業パーティーなどの行事のない秋期には生徒会主催での行事が計画され、今年はジムカーナ競技大会を開催するのだ。
「私のクラスはまだ決まってないですね」
シャーロットはフェリシティの前に紅茶のカップを置きながら言う。
「ロッテさんかマリアさんが選ばれる可能性は?」
「いえ。間違っても私はないです。あの…苦手なので」
シャーロットは苦笑いしながら言った。
「乗馬が?」
「乗馬も。運動全般苦手で…」
「そうなの?」
「はい。この間の遠駆けに行くのにもかなり練習しました」
フェリシティの向かいに座る。
「ユリウス殿下との?」
ドキ。
…名前を聞くだけでドキドキするなんて、本当どうしたらいいんだろう。
シャーロットは中指の先で額に触った。
「はい。馬に乗るだけで緊張して、王立公園に着いた時にはもう疲れてぐったりしてました」
「そうなの?意外ね」
「体力はありますけど、運動神経がなくて」
額を指で触りながら言う。
マリアがやって来たので、シャーロットは紅茶を淹れてマリアの前に置く。
「ロッテにお茶を淹れてもらうのってまだ慣れないな」
「寮以外では私が淹れてもらう方だもんね」
フェリシティと自分のカップにも紅茶を注いでマリアの隣に座った。
「それにしてもクラスの代表ってすごいですね」
「男子は障害馬術や総合馬術をやる人はいたんだけど、ちょうど馬場馬術やジムカーナをやる人がいなかったのよ」
障害馬術とは文字通りの大きな障害を飛び越える際のミスの少なさと走行時間を競う競技。馬場馬術とはステップなどの演技の正確さと美しさを採点する競技。総合馬術とは障害と馬術の二つに、クロスカントリー走行を加えた競技だ。
「それじゃあ練習はどうされるんですか?」
シャーロットがフェリシティに言うと、フェリシティは急に赤くなって下を向く。
「あの…アール様が練習を…見てくださるって仰ってるの」
フェリシティは恥ずかしそうに上目遣いでシャーロットとマリアを見ながら言った。
うわあ~フェリさんかわいい!
「王城の馬場をお借りして練習するの。それでね、一応私もまだ王太子妃候補でしょう?だからアール様と二人だけで練習する訳にはいかないんですって」
「はい」
確かに。学園の馬場はジムカーナ大会に向けて練習する人で混むだろうし、騎士様が学園に来るよりはフェリさんが王城へ行く方が良いわね。
と、なると一応王太子妃候補だから王太子以外の男性と長時間二人きりになる訳にいかないのか。なるほど。
シャーロットとマリアが頷くとフェリシティは胸の前で両手を組み合わせて祈りのポーズをとって言った。
「だからね!練習の時、二人にも一緒に王城へ行って欲しいの!」
「ユリウス殿下はその様な誤解をされる方ではないかと」
「そう…そうよね」
ルーカスの言葉に王妃はホッとした様に息を吐く。
「それに…ユーリ、本当に婚約するつもりなのかしら?」
「?」
オードリー・グッドウィン公爵令嬢との婚約についてはユリウス殿下自身が国王陛下と王妃殿下に報告されて、陛下とグッドウィン公爵の内諾をもって議会に掛けられている筈だが?
「もう議会の承認も間近だというのはわかってるの。ただ…」
王妃は少し言いにくそうにルーカスを見る。
「ユーリ、あの娘を庇って怪我をしたでしょう?」
「はい」
ロッテの事か。
「まず優先して護るべきなのは自分の身。そう、第一王子として生まれた時から叩き込まれている筈のユーリが、それでも思わず庇ってしまう程……」
王妃がそう言うと、ルーカスは眼を閉じた。
王妃はふっと息を吐くと
「もう言わない約束だったわね」
そう言って微笑む。
「……」
「これからますます孤独になっていくユーリの伴侶がせめて本当に思い合える相手なら良いなと、ただそう思っただけなの。でも、そうよね、選考までしてユーリがオードリーさんを選んだのだもの。これからオードリーさんとそういう関係を築いていけば良いのよね」
自分に言い聞かせる様に王妃は言った。
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寮のシャーロットの部屋にやって来たフェリシティは学園の行事のクラス代表に選ばれたと言う。
「ジムカーナ大会?」
「そうなの。クラスで一人づつ出場するのよ。ロッテさんのクラスは決まったの?」
ジムカーナとは馬術競技の一種で、低めの横木やスラロームを配された経路を軽早足で駆け、走行時間と馬を御する技術を競う初心者向けの競技だ。
学園では舞踏会や卒業パーティーなどの行事のない秋期には生徒会主催での行事が計画され、今年はジムカーナ競技大会を開催するのだ。
「私のクラスはまだ決まってないですね」
シャーロットはフェリシティの前に紅茶のカップを置きながら言う。
「ロッテさんかマリアさんが選ばれる可能性は?」
「いえ。間違っても私はないです。あの…苦手なので」
シャーロットは苦笑いしながら言った。
「乗馬が?」
「乗馬も。運動全般苦手で…」
「そうなの?」
「はい。この間の遠駆けに行くのにもかなり練習しました」
フェリシティの向かいに座る。
「ユリウス殿下との?」
ドキ。
…名前を聞くだけでドキドキするなんて、本当どうしたらいいんだろう。
シャーロットは中指の先で額に触った。
「はい。馬に乗るだけで緊張して、王立公園に着いた時にはもう疲れてぐったりしてました」
「そうなの?意外ね」
「体力はありますけど、運動神経がなくて」
額を指で触りながら言う。
マリアがやって来たので、シャーロットは紅茶を淹れてマリアの前に置く。
「ロッテにお茶を淹れてもらうのってまだ慣れないな」
「寮以外では私が淹れてもらう方だもんね」
フェリシティと自分のカップにも紅茶を注いでマリアの隣に座った。
「それにしてもクラスの代表ってすごいですね」
「男子は障害馬術や総合馬術をやる人はいたんだけど、ちょうど馬場馬術やジムカーナをやる人がいなかったのよ」
障害馬術とは文字通りの大きな障害を飛び越える際のミスの少なさと走行時間を競う競技。馬場馬術とはステップなどの演技の正確さと美しさを採点する競技。総合馬術とは障害と馬術の二つに、クロスカントリー走行を加えた競技だ。
「それじゃあ練習はどうされるんですか?」
シャーロットがフェリシティに言うと、フェリシティは急に赤くなって下を向く。
「あの…アール様が練習を…見てくださるって仰ってるの」
フェリシティは恥ずかしそうに上目遣いでシャーロットとマリアを見ながら言った。
うわあ~フェリさんかわいい!
「王城の馬場をお借りして練習するの。それでね、一応私もまだ王太子妃候補でしょう?だからアール様と二人だけで練習する訳にはいかないんですって」
「はい」
確かに。学園の馬場はジムカーナ大会に向けて練習する人で混むだろうし、騎士様が学園に来るよりはフェリさんが王城へ行く方が良いわね。
と、なると一応王太子妃候補だから王太子以外の男性と長時間二人きりになる訳にいかないのか。なるほど。
シャーロットとマリアが頷くとフェリシティは胸の前で両手を組み合わせて祈りのポーズをとって言った。
「だからね!練習の時、二人にも一緒に王城へ行って欲しいの!」
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