34 / 98
33
しおりを挟む
33
「ルーカスは何故ロッテが学園を卒業するまでグリフに会わせないつもりだったんだ?」
ユリウスが言うと、ルーカスは隣のグリフをチラッと見た。
「もしもロッテが学園で誰かと恋をするなら、兄の紹介で知り合った男の存在は邪魔になりますから。私としては、ロッテが学園生の間に自分で恋人なりを見つけなかった場合にグリフを紹介しようと考えていまして。だから今の状況としては、私の思惑の外でグリフが勝手にロッテと知り合いになっただけです」
「だよな?だから偶然知り合えて幸運だった」
グリフは頷きながら言う。
「それじゃあ、もしもロッテが恋をして、その相手と上手くいけば、グリフには紹介しないつもりだったのか?」
「そうです。ロッテの気持ち優先です」
ユリウスに真顔で返すルーカス。
「そう。そこなんです。ルーカスはロッテには俺の事を何も言わない癖に、俺には『ロッテを娶るつもりでいろ』と言うんです。じゃあロッテに恋人ができて結婚する事になったら、ルーカスが他の令嬢を俺の結婚相手として紹介してくれるのか、と言えば『その時は自分で探せ』ですからね!酷い奴なんですよ、こいつは」
グリフはルーカスを指差しながらユリウスに訴える。
「グリフは辺境伯家の次男だ。その気になれば縁談などどうにでもなる」
しれっと言うルーカス。
「これですよ。だから俺としてはとにかくロッテと早く知り合いたかったんです。恋愛なら俺とすれば良いんだから」
ロッテとグリフが恋…か。
「グリフはロッテを好きなのか?」
ユリウスの言葉に、グリフはニヤリと笑った。
「ロッテとはまだ二度しか会っていませんが、勘が良いし、頭も良さそうで、かわいいと思いますよ。何より大きいのが良い」
「大きいのが?」
「俺が身体がデカいから、普通の女の子だと…何だか子供を相手にしている様な気がするんです」
「ああ、わかる」
ユリウスは頷く。
「それに小さくて細っこいと手を握れば骨が折れそうだし、抱きしめたら内蔵が出そうだし、寝返り打てば潰しそうだし」
「寝返りは話しが進み過ぎだろう?」
ルーカスがグリフを軽く睨むが、グリフは気にするでもなく続きを口にした。
「抱いたら壊しそうだし」
この場合の「抱く」は、さっきの「抱きしめる」とは違う意味…だな。
「下世話な…」
ルーカスが呟く様に言う。
「いやあ、結婚するとなると大切な事だろ?その点ロッテは」
グリフの言葉にユリウスとルーカスが同時にピクッと反応する。
「私の妹で不埒な想像をするなよ」
ルーカスがグリフを睨む。先程より目に力が入っていた。
「いやいやいや、違うって。庭でロッテと歩いている時、ロッテの髪がここに引っ掛かったんだ」
グリフはブンブンと手を振ると、自分の肩章を指す。
「取るのに、こう、頭を抱き込む様にして…俺の肩の位置に頭がある女の子って初めてでさ、ああ…いいなと思ったんだ」
腕と身体に隙間を作る様にして、反対の肩章を触る。
貴賓室から見た庭で、抱き合うようにしていたシャーロットとグリフを思い出す。
そうか、あの時は肩章に髪が引っ掛かっていたのか。
そう言えば、図書室でロッテと会った時、こんなに顔の位置が近い女性は初めてだと俺も思ったな。
すぐ側に額があって、思わず触ってしまって…ああ、いいなと俺も思った…様な…
「手足や身体つきも…やらしい意味じゃなく、女の子らしく細いけど、か細い訳じゃなくて、そういう処も含めていいな、かわいいな、と思ったんですよ。殿下、俺は今はまだロッテをものすごく好きとは言えませんが、かなり好ましく思っているので、ロッテに恋人ができない内に口説きたいんです。だから早くお妃候補から外してください」
ユリウスの方へ身を乗り出す様にして言うグリフ。
「……」
「殿下?」
グリフが不思議そうに首を傾げながら、黙っているユリウスを見る。
ロッテを候補から外す?…それは
「い…」
嫌だ。と言い掛けて、ユリウスは口を噤む。
?
嫌だ?
何故?
「ユリウス殿下?」
ルーカスも不思議そうにユリウスを見ている。
つまり、俺もロッテを好ましく思っている、のか?
ユリウスは無言のまま首を傾げた。
「ルーカスは何故ロッテが学園を卒業するまでグリフに会わせないつもりだったんだ?」
ユリウスが言うと、ルーカスは隣のグリフをチラッと見た。
「もしもロッテが学園で誰かと恋をするなら、兄の紹介で知り合った男の存在は邪魔になりますから。私としては、ロッテが学園生の間に自分で恋人なりを見つけなかった場合にグリフを紹介しようと考えていまして。だから今の状況としては、私の思惑の外でグリフが勝手にロッテと知り合いになっただけです」
「だよな?だから偶然知り合えて幸運だった」
グリフは頷きながら言う。
「それじゃあ、もしもロッテが恋をして、その相手と上手くいけば、グリフには紹介しないつもりだったのか?」
「そうです。ロッテの気持ち優先です」
ユリウスに真顔で返すルーカス。
「そう。そこなんです。ルーカスはロッテには俺の事を何も言わない癖に、俺には『ロッテを娶るつもりでいろ』と言うんです。じゃあロッテに恋人ができて結婚する事になったら、ルーカスが他の令嬢を俺の結婚相手として紹介してくれるのか、と言えば『その時は自分で探せ』ですからね!酷い奴なんですよ、こいつは」
グリフはルーカスを指差しながらユリウスに訴える。
「グリフは辺境伯家の次男だ。その気になれば縁談などどうにでもなる」
しれっと言うルーカス。
「これですよ。だから俺としてはとにかくロッテと早く知り合いたかったんです。恋愛なら俺とすれば良いんだから」
ロッテとグリフが恋…か。
「グリフはロッテを好きなのか?」
ユリウスの言葉に、グリフはニヤリと笑った。
「ロッテとはまだ二度しか会っていませんが、勘が良いし、頭も良さそうで、かわいいと思いますよ。何より大きいのが良い」
「大きいのが?」
「俺が身体がデカいから、普通の女の子だと…何だか子供を相手にしている様な気がするんです」
「ああ、わかる」
ユリウスは頷く。
「それに小さくて細っこいと手を握れば骨が折れそうだし、抱きしめたら内蔵が出そうだし、寝返り打てば潰しそうだし」
「寝返りは話しが進み過ぎだろう?」
ルーカスがグリフを軽く睨むが、グリフは気にするでもなく続きを口にした。
「抱いたら壊しそうだし」
この場合の「抱く」は、さっきの「抱きしめる」とは違う意味…だな。
「下世話な…」
ルーカスが呟く様に言う。
「いやあ、結婚するとなると大切な事だろ?その点ロッテは」
グリフの言葉にユリウスとルーカスが同時にピクッと反応する。
「私の妹で不埒な想像をするなよ」
ルーカスがグリフを睨む。先程より目に力が入っていた。
「いやいやいや、違うって。庭でロッテと歩いている時、ロッテの髪がここに引っ掛かったんだ」
グリフはブンブンと手を振ると、自分の肩章を指す。
「取るのに、こう、頭を抱き込む様にして…俺の肩の位置に頭がある女の子って初めてでさ、ああ…いいなと思ったんだ」
腕と身体に隙間を作る様にして、反対の肩章を触る。
貴賓室から見た庭で、抱き合うようにしていたシャーロットとグリフを思い出す。
そうか、あの時は肩章に髪が引っ掛かっていたのか。
そう言えば、図書室でロッテと会った時、こんなに顔の位置が近い女性は初めてだと俺も思ったな。
すぐ側に額があって、思わず触ってしまって…ああ、いいなと俺も思った…様な…
「手足や身体つきも…やらしい意味じゃなく、女の子らしく細いけど、か細い訳じゃなくて、そういう処も含めていいな、かわいいな、と思ったんですよ。殿下、俺は今はまだロッテをものすごく好きとは言えませんが、かなり好ましく思っているので、ロッテに恋人ができない内に口説きたいんです。だから早くお妃候補から外してください」
ユリウスの方へ身を乗り出す様にして言うグリフ。
「……」
「殿下?」
グリフが不思議そうに首を傾げながら、黙っているユリウスを見る。
ロッテを候補から外す?…それは
「い…」
嫌だ。と言い掛けて、ユリウスは口を噤む。
?
嫌だ?
何故?
「ユリウス殿下?」
ルーカスも不思議そうにユリウスを見ている。
つまり、俺もロッテを好ましく思っている、のか?
ユリウスは無言のまま首を傾げた。
10
お気に入りに追加
61
あなたにおすすめの小説
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
旦那の真実の愛の相手がやってきた。今まで邪魔をしてしまっていた妻はお祝いにリボンもおつけします
暖夢 由
恋愛
「キュリール様、私カダール様と心から愛し合っておりますの。
いつ子を身ごもってもおかしくはありません。いえ、お腹には既に育っているかもしれません。
子を身ごもってからでは遅いのです。
あんな素晴らしい男性、キュリール様が手放せないのも頷けますが、カダール様のことを想うならどうか潔く身を引いてカダール様の幸せを願ってあげてください」
伯爵家にいきなりやってきた女(ナリッタ)はそういった。
女は小説を読むかのように旦那とのなれそめから今までの話を話した。
妻であるキュリールは彼女の存在を今日まで知らなかった。
だから恥じた。
「こんなにもあの人のことを愛してくださる方がいるのにそれを阻んでいたなんて私はなんて野暮なのかしら。
本当に恥ずかしい…
私は潔く身を引くことにしますわ………」
そう言って女がサインした書類を神殿にもっていくことにする。
「私もあなたたちの真実の愛の前には敵いそうもないもの。
私は急ぎ神殿にこの書類を持っていくわ。
手続きが終わり次第、あの人にあなたの元へ向かうように伝えるわ。
そうだわ、私からお祝いとしていくつか宝石をプレゼントさせて頂きたいの。リボンもお付けしていいかしら。可愛らしいあなたととてもよく合うと思うの」
こうして一つの夫婦の姿が形を変えていく。
---------------------------------------------
※架空のお話です。
※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。
※現実世界とは異なりますのでご理解ください。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
身代わり婚~暴君と呼ばれる辺境伯に拒絶された仮初の花嫁
結城芙由奈
恋愛
【決してご迷惑はお掛けしません。どうか私をここに置いて頂けませんか?】
妾腹の娘として厄介者扱いを受けていたアリアドネは姉の身代わりとして暴君として名高い辺境伯に嫁がされる。結婚すれば幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱いていたのも束の間。望まぬ花嫁を押し付けられたとして夫となるべく辺境伯に初対面で冷たい言葉を投げつけらた。さらに城から追い出されそうになるものの、ある人物に救われて下働きとして置いてもらえる事になるのだった―。
【コミカライズ決定】地味令嬢は冤罪で処刑されて逆行転生したので、華麗な悪女を目指します!~目隠れ美形の天才王子に溺愛されまして~
胡蝶乃夢
恋愛
婚約者である王太子の望む通り『理想の淑女』として尽くしてきたにも関わらず、婚約破棄された挙句に冤罪で処刑されてしまった公爵令嬢ガーネット。
時間が遡り目覚めたガーネットは、二度と自分を犠牲にして尽くしたりしないと怒り、今度は自分勝手に生きる『華麗な悪女』になると決意する。
王太子の弟であるルベリウス王子にガーネットは留学をやめて傍にいて欲しいと願う。
処刑された時、留学中でいなかった彼がガーネットの傍にいることで運命は大きく変わっていく。
これは、不憫な地味令嬢が華麗な悪女へと変貌して周囲を魅了し、幼馴染の天才王子にも溺愛され、ざまぁして幸せになる物語です。
転生巫女は『厄除け』スキルを持っているようです ~神様がくれたのはとんでもないものでした!?〜
鶯埜 餡
恋愛
私、ミコはかつて日本でひたすら巫女として他人のための幸せを祈ってきた。
だから、今世ではひっそりと暮らしたかった。なのに、こちらの世界に生をくれた神様はなぜか『とんでもないもの』をプレゼントしてくれたようだった。
でも、あれれ? 周りには発覚してない?
それじゃあ、ゆっくり生きましょうか……――って、なんか早速イケメンさんにバレそうになってるんですけど!?
母と妹が出来て婚約者が義理の家族になった伯爵令嬢は・・
結城芙由奈
恋愛
全てを失った伯爵令嬢の再生と逆転劇の物語
母を早くに亡くした19歳の美しく、心優しい伯爵令嬢スカーレットには2歳年上の婚約者がいた。2人は間もなく結婚するはずだったが、ある日突然単身赴任中だった父から再婚の知らせが届いた。やがて屋敷にやって来たのは義理の母と2歳年下の義理の妹。肝心の父は旅の途中で不慮の死を遂げていた。そして始まるスカーレットの受難の日々。持っているものを全て奪われ、ついには婚約者と屋敷まで奪われ、住む場所を失ったスカーレットの行く末は・・・?
※ カクヨム、小説家になろうにも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる