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「それで別室に行ったら、アイリーン殿下付きの侍女と、殿下を運んで行った侍従たちが待っていて、部屋に入った途端に私たちを連れて行った騎士様共々、一斉に頭を下げられたの」
 クスクスと笑いながらフェリシティが言う。
「私たちの時と同じ!」
 クラリスが言うと、シャーロットとマリアは頷いた。
「あ、やっぱり朝の騒ぎもだったんですね」
 オードリーが納得した様子で頷く。

 夜、シャーロットとクラリスの部屋に集まったのは、部屋の主の二人と、マリア、フェリシティ、オードリーの五人だ。
「クラリスさんは夜会に出ていなかったけど、どうしてたの?」
 フェリシティがクラリスに聞く。
「それが、朝の事を夜会で誰かに聞かれても困るので欠席した方が良いだろうとイザベラ様に言われたのでそうしたんです。それでイザベラ様とお食事ご一緒させて頂いて、お喋りしてました」
 イザベラととても仲良くなったのだと嬉しそうにニコニコして言うクラリス。
 後から聞いた話しでは、イザベラも「クラリスかわいいわ~。お父様がクラリスのお母様をお好きだったのも納得よ!さすが父娘、好みが似てるわ」と何度も興奮気味に言っていたそうだ。

「何となくなんだけど、私、最終候補の五人に、この五人が選ばれる気がするわ…」
 オードリーが呟く様に言う。
「ええ?」
 マリアが眉を顰めて言うと、フェリシティは面白そうに
「私は王太子妃になりたいとは思わないけど、最終候補に残れたら王太子殿下や王妃殿下、宰相や、もしかしてもしかすると陛下にも顔を名前を覚えて頂けるかもと思えば大歓迎よ」
 と言う。
「フェリさんはお父様に『顔を売って来い』って言われてたのよね?」
「そうなの。うちは侯爵家とはいえ地方貴族だから…お父様の希望も叶って、更に私にも王城の要職に就かれてる方とか、そのご子息方とのご縁があれば最高ね」
 シャーロットの言葉にフェリシティは大きく頷く。
「私は…王太子妃なんて畏れ多くて、候補になるのも困ります。男爵家の娘では釣り合わなくて苦労しそうですし…」
 クラリスは苦笑いしながら言う。
 
 クラリスがもし「ヒロイン」なら、その苦労も全て物語のエピソードで、最後はハッピーエンドだろうけどな。
 ユリウス殿下と並び立つクラリス…身長差があってクラリスの可憐さが際立つわ。うん。似合う。
 クラリスでなくても、フェリさんは平均身長より少し高いくらい、オードリーさんは平均くらい、マリアは平均より少し低くて、クラリスはマリアより少し低いくらいだから、誰がユリウス殿下と並んでもお似合いだわ。
「私も最終候補になりたくないな。早く家に帰りたいわ」
 マリアが言う。
 マリアが、私の思った通りお兄様を好きなら…そりゃ王太子妃候補にはなりたくないわよね。
 そういえばマリアがもし転生者なら、がゲームか漫画か小説の世界なのか、知ってるのかな?
「私は最終候補に選ばれたなら、頑張って王太子妃になりたいです」
 オードリーが胸を張って言う。
「オードリーは公爵令嬢だものね」
「そうね。私みたいに男爵家の生まれだと『王太子妃』なんて雲の上過ぎて現実として考えにくいけど、公爵家だと普通に結婚相手の選択肢に王族も入るのね」
 マリアが感心した様に言った。
「そうですね。ただ、年回りの合う公爵家や侯爵家の娘との婚約は、ユリウス殿下へ一度は打診されているので、つまり私もフェリさんも一度はユリウス殿下からお断りされている立場ではあるのです」
 苦笑いしながら言うオードリー。
「そうね。でもユリウス殿下はこれまで『相手は誰であれ婚約話は断る』という姿勢でしたから、断られたとは言え、嫌われている訳ではないわ」
 フェリシティは人差し指を立てて言う。
「ロッテさんは?」
 クラリスがシャーロットを見る。
「え?」
「ロッテさんは王太子妃になりたいですか?」
「王太子妃…」
 って事は、ユリウス殿下のお嫁さん…
 額に触れたユリウスの指の感触を思い出す。
 と、頬がカアッと熱くなった。
「…無理」
「ロッテ?」
 マリアがシャーロットの顔を覗き込む。
「私に王太子妃は無理だわ。現実的じゃないし」
 シャーロットは頬を押さえて笑った。



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