ヒロインに転生しましたけど、私、王太子より悪役令嬢が好きなんです。

ねーさん

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「デップマン様、顔を上げてください。デップマン様がわざと噂を広めようとした訳ではありませんから…謝意は素直に受け入れます」
 ローゼがそう言うと、サフィはホッとした表情で顔を上げた。
 リリーが二人に座るよう促したので、ローゼとサフィはソファに座り直す。
「…私、本当に、誰も誘惑なんてしていないし、好かれたいと思っている訳ではないんです。信じていただけないかも知れませんけど…」
 ローゼがそう言うと、デボラが口を挟む。
「私は、ローゼは今『モテ期』なんだと考えているんですよね」
 モ、モテ期!?前世でも聞いた言葉がここで出て来るなんて!?
「誰でも一生に一度は異性にモテモテになる期間があると、何処か遠くの国の本で読んだ事があって」
 デボラがそう言うと、リリーが首を傾げてデボラに聞く。
「それで『モテ期』?」
 そんな日本で出版されたみたいな本がこの世界にもあるんだ!?
「はい。思えば私のモテ期は五歳頃でした。教会で同じ年頃の子供が遊んでいる時、私の周りには『デビィと一緒に遊びたい』と男の子が列を成していまして」
「あら、じゃあ私は王太子殿下と婚約する前かしら。あちこちから縁談があったと聞いたし。では、デビィはローゼは今がその時期だと?」
「はい。だから、この時期を過ぎれば、色々落ち着くんではないかと私は思ってるんですよ」
 デボラとリリーはゲームの力と期間とをローゼのモテ期と言う事で、悪役令嬢たちに溜まったフラストレーションをローゼから逸らそうとしているのだ。

「…わかりましたわ」
 エリカサンドラが低い声で言う。
「そんな、モテ期だなんて無理矢理感満載のこじつけをしてまで、ローゼ・エンジェルを護りたいと、リリー様とデボラさんが考えているのがよくわかりました」
 少し呆れた表情でエリカサンドラが言うと、リリーは苦笑いを浮かべる。
「無理矢理感満載だったかしら?」
「満載です。でもその話に乗りますわ」
「え?」
「リリー様に免じて、ローゼ・エンジェルに嫌がらせをするのは…我慢します」
 エリカサンドラが嫌そうに言う。悪役令嬢にとってヒロインへの嫌がらせを封じると言うのは困難な事なのだろう。
「…お友達にはなれませんけどね」
「ありがとう。エリカ様」
 リリーは破顔し、両手でエリカサンドラの手を取る。
「もちろん、ローゼには生徒会のサポートメンバーを辞めてもらうし、出来るだけロイズ殿下たちに近付かないよう努力してもらうわ。ね、ローゼ」
「はい!もちろん!」
「エレノアはどう?ローゼはマーシャル公爵家での行儀見習いを終えて家に戻っているから、クリスと顔を合わせる機会はほぼなくなったわよ?」
「そっそれなら…私も…我慢します」
 エレノアは渋々、と言う感じでそう言った。

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 サフィとドロワも渋々ながらローゼへの嫌がらせをしないようにすると言ってくれ、エリカサンドラとエレノアと共に部屋を出る。
「さて、これで後はローゼがいかに攻略対象者との接触を避けるか、ね」
 リリーとデボラがソファで向かい合って話している。ローゼはミニキッチンで紅茶のカップを洗っていた。
「サポートメンバーを辞めればかなり接触は減るでしょうけど…向こうから会いに来るのはどうやって防ぎます?」
「向こうから来るのは難しいわねぇ。せめて二人きりにならないよう気を付けるくらいしか出来ないかしら?」
「そうですね…私がローゼと同じクラスなら一緒に居られて良かったんですけど、隣のクラスだし。でもなるべくお昼とか放課後とか一緒に居るようにします」
「あの、リリー様…デビィも、私のために本当にありがとうございます」
 カップを洗い終えて戻ってきたローゼが二人にペコリと頭を下げる。
「あら。お友達のためだもの。お礼なんていらないわ」
 リリーが笑う。
「そうよ。友達のためになるなら、何でも協力したいものよ」
 デボラが笑う。
 ローゼは熱くなる胸を押さえるように胸元の服をぎゅっと握った。


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