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 ゲームでは講堂の場所が分からず迷子になって入学式に遅れそうになったローゼに生徒会長であるランドールと副会長で第二王子のロイズが声を掛ける事でローゼと生徒会役員に接点ができるのよ。
 つまり、迷子にならない様に早く講堂へ入ってしまえば良いのよ!昨日、寮に荷物を運んだ時に下見もしたから大丈夫!
「と、思ったのに…ここどこ!?」
 ローゼは中庭の噴水の前で呟く。
 乙ゲーのヒロインは方向音痴が標準装備なの?中庭がたくさんあるのに全部似たような景色なのが悪いのよ。
 …このままじゃ講堂へ向かうランドールとロイズに見つかってしまう。入学式は諦めて隠れてた方が良いかも。
 そう思ったローゼが隠れる所を探して周りを見回した時、校舎から出てきたランドールと目が合った。

 しまった。
「新入生?」
 ランドールがにこやかに笑いながらローゼに近付いて来る。ランドールの後ろにはロイズが続く。
 うわあ。さすが攻略対象者!ランドールもロイズも画面で見るよりカッコいい!
 特にロイズの紫の髪と瞳!王族オーラ凄い!
「はひ」
 …王族オーラにやられて噛んだわ。
「早く行かないと入学式遅れるよ。こっち」
 ランドールが手招きをする。
「迷ったのか?」
 ロイズがローゼを見ながら言う。
「はい」
「校舎も庭も似ているからな」
「はい」
 ああ、できるだけ話したくないけど、話し掛けられたら答えない訳にもいかないし。
「…ピンクの髪とは珍しいな」
「はい」
 まあ、ヒロインの特徴だから…私も同じ髪色の人ってお母様しか見た事ないし。
「ロイズ殿下の紫の髪の方が珍しいですよ」
 少し先を歩くランドールが振り返りながら言う。
「それは比べる物でもないだろ?」
 紫の髪と瞳は王族の特徴だ。生まれた時には違う色でも成長するにつれて濃淡はあれど紫になっていく。DNA鑑定などのない世界で、一目で王族と判るのは物語的にも便利な設定なのかも知れないとローゼは思った。
「それもそうですね」
「ランドールの緑も少ないよな」
「そうですね。あまり居ませんね」
 このまま二人で喋っててくれると良いのにな。
 ローゼはそう思っていたが、ランドールがニコニコと話し掛けて来る。
「新入生さん、名前を聞いても良いかな?」
 うわ。来た。
「…ローゼ・エンジェルと申します」
 できるだけ、平坦にローゼは言う。
「エンジェル?」
 それでもロイズの眉がピクリと反応する。
「……」
「そうか」
 何か言われるかと身構えたローゼだが、ロイズはそう言うと、後は何も言わなかった。
「ローゼちゃんか。俺はランドール・リード。生徒会長です。こちらはロイズ・ルーセント第二王子殿下。生徒会の副会長。あ、あそこが講堂だよ。ローゼちゃんは向こうの入口から入ってね。俺たちは裏から入るから」
 ランドールが講堂を指差しながら言う。
「はい。ありがとうございました」
 ローゼはペコリと頭を下げると、小走りで講堂へと向かった。

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「リリー様!私生徒会のサポートメンバーになっちゃいましたぁ」
 寮のリリーの部屋へノックもそこそこにローゼが駆け込む。
「まあ、ローゼったら。それじゃノックの意味がないわよ?」
「ああ~申し訳ありません」
「学園だから良いけどね」
 リリーはふふっと笑う。
 ああ今日もリリー様は世界一かわいい。

 生徒会には役員の他に各学年から男女一名づつ指名されたサポートメンバーがおり、舞踏会や卒業パーティーなどの大きな行事の前には手伝いをすることになっている。一年生の女子サポートメンバーにローゼが教師から指名されたのだ。
「一年生のサポートメンバーは先生からの指名ね。どうしてローゼを指名したのかしら?」
「教壇の前の席だったから…ニューマン先生と目が合ったんです」
 ローゼは唇を尖らせて言う。イヴァン・ニューマンは生徒会の顧問で攻略対象者の一人だ。イヴァンが担任とわかった時点でローゼはこうなると思っていた。
「ニューマン先生が担任なの?先生はサイオン殿下のご学友で、今でもお二人は仲が良いのよ」
 少し頬を染めて嬉しそうにリリーが言う。

 ああ、リリー様、サイオン殿下の事本当にお好きなんだなあ。頬を染めるリリー様は超絶かわいいけど、こんなにかわいいリリー様が私のせいで悪役令嬢化するなんて許せない。どうにかサイオン殿下と出会わない方法はないかしら…



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